見出し画像

藤沢労基署長(大工)事件


概要

作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が労基法及び労災害保険法の労働者に当たらないとされた事例。

要旨

上告人は、Bからの求めに応じて上記工事に従事していたものであるが、仕事の内容について、仕上がりの画一性、均質性が求められることから、Bから寸法、仕様等につきある程度細かな指示を受けていたものの、具体的な工法や作業手順の指定を受けることはなく、自分の判断で工法や作業手順を選択することができた。

上告人は、作業の安全確保や近隣住民に対する騒音、振動等への配慮から所定の作業時間に従って作業することを求められていたものの、事前にBの現場監督に連絡すれば、工期に遅れない限り、仕事を休んだり、所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった。

上告人は、当時、B以外の仕事をしていなかったが、これは、Bが、上告人を引きとどめておくために、優先的に実入りの良い仕事を回し、仕事がとぎれないようにするなど配慮し、上告人自身も、Bの下で長期にわたり仕事をすることを希望して、内容に多少不満があってもその仕事を受けるようにしていたことによるものであって、Bは、上告人に対し、他の工務店等の仕事をすることを禁じていたわけではなかった。

上告人は、一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し、これらを現場に持ち込んで使用しており、上告人がBの所有する工具を借りて使用していたのは、当該工事においてのみ使用する特殊な工具が必要な場合に限られていた。

以上によれば、上告人は、前記工事に従事するに当たり、Bの指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできず、Bから上告人に支払われた報酬は、仕事の完成に対して支払われたものであって、労務の提供の対価として支払われたものとみることは困難であり、上告人の自己使用の道具の持込み使用状況、Bに対する専属性の程度等に照らしても、上告人は労基法の労働者に該当せず、労災保険法の労働者にも該当しない。

参考

この判例を詳しく知りたいという方は、以下のページをチェックしてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?