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「融けるデザイン」で振り返るRCA-ユーザーインターフェースって何?

僕は、Royal College of Art(以下RCA)という大学院でサービスデザインを学んでいる。履修科目に、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を学ぶ科目は存在しない。入学前の前提知識ということで、知っている態で履修が計画されている。

デザインバックグラウンドではない僕は、言葉の意味こそ知ってはいたものの、それ以上は我流の解釈でしかなかった。今回は渡邊恵太さんの「融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」を読み、RCAでのプロジェクトを実例に、サービスデザインに於けるUIをまとめた。

渡邊さんはインターフェースを次のように定義している。

ものづくりにおいて、インターフェイスとは、モノと人との境界面のこと を指す。

また、良いインターフェースには、道具そのものを意識しないで利用できるような「透明性」とあたかも自分の身体の一部であるかのような「自己帰属感」が大切と述べられている。

サービスデザイナーとしてこの「透明性」と「自己帰属感」を再解釈すると、良いサービスのインターフェースとは空気のようであり、日常の延長線上にあるものではないかと考えた。

僕の卒業制作は、町の個人経営のクリーニング屋や床屋さん、カフェに絵を飾るというサービス。サービス名はMicroGalleryと名付けた。RCAのFine artコースの友達のアトリエに行くと、本当に素敵な絵が積まれっぱなしになっている。僕はこの絵にどうにか日の目を見てほしかったし、普段忙しくて絵を見る機会がない町の人たちにも絵を届けたかった。

photo by Fumito Kawai 

South London の Batterseaにある The little Bakery というお店が僕のサービスMicroGalleryを初めて導入してくれた。常連のお客さんが、注文した珈琲を待っている間、MicroGalleryとして展示された絵をスマホで熱心に撮影してくれていた。

肝になったのは、いつものカフェ、レジ横、ただ目を移すだけという透明感あるインターフェース。

絵を見る手段はギャラリー、美術館、インターネットと様々だが、僕のMicroGalleryによって、少なくともこのお客さんの日常の中に非日常を自然に導入できた気がする。珈琲を待つ時間をスマホ時間から、アート鑑賞時間に変換できたのである。

渡邊さんのインターフェースの定義から外れかけてはいるが、サービスデザインというレンズを通して、インターフェースを改めて考えると、この「日常の延長線上」、「自然」、渡邊さんの「融けるデザイン」という言葉を今後も大切にデザインしていきたい。

「あなたのサービスはユーザーの生活のごく一部でしかない」ことを肝に 銘じながら設計することが重要だ。ライバルは他のサービスやアプリケーションだけではない。人々の朝食時間や入浴時間、睡眠時間ですらあなたの サービスのライバルであり、同時にうまく共生していかなければならない 巨大なプラットフォームなのだ。だから、「融けるデザイン」が必要なので ある。

photo by Fumito Kawai

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