f と長い s と短い s と ß
先日、以下の note を書きました。
で、誰からも質問がないので(笑)誰も気にしてないのだと思いますが、日本人にはあまり馴染みのない字が結構書かれているので、それをちょっと解説したいと思います。
長い s (long s)
作品をよくよく見ると、f のような f でないような文字がいくつかあるのが判るかと思います。
この f によく似ている文字、実は s の別字体です。現在「長い s (long s)」と呼ばれており、実は19世紀初頭まではこれこそがデフォルトで、現在用いられている s は語尾にのみ使用するルールでした。
19世紀も半ばを過ぎるとこの長い s はだんだん使用されなくなっていき、ほぼ現在の s に置き換えられています。おそらくは単純に読み間違いが多かったせいだと思います(笑)。手書きだと一応 s が伸びた形をしていますが、アップライトの活字になるとディセンダーが切れて s っぽさが全然なくなってしまうのも一因だと思われます。
現在は Unicode でもコードが割り振られ(U+017F)、字種の多いフォントによってはグリフがあり、表示が可能です。クラシカルな雰囲気を演出したい時に使用してみるのもいいですが、校正でハネられる可能性は大です(笑)。ほとんどの人が知らないので…。
ß (eszett)
ちなみになんですが、ドイツ語でのみ用いられるこの文字はエスツェットといい、長い s と短い s の2つがくっついて(合字・ligature)できています。
音としては無理やりカタカナで書くと「ス」で、もしこの字が打てない場合は「ss」と書いて代用します。昔は大文字がなく SS としか書きませんでしたが、2016年に大文字の ẞ が制定されました。けど、字形としてはあんまり違いが判りません(笑)。
たまにこのエスツェットをラテン文字の B やギリシャ文字の β で代用している、またはその逆の例を見かけますが、まったく違う文字なのでこういう事は絶対にやめましょう。カタカナの「カ」を漢字の「力(ちから)」で代用するようなもので、見ていて大変見苦しいです。
私の地元の某洋菓子店で以下のように表記しているところがあるのですが、非常に残念に思っています。やめて欲しいなぁ…。
オマケ
▲ ß だらけの本。
カフェラテおごってください。