見出し画像

『オッペンハイマー』映画評

 3月29日(金)公開の『オッペンハイマー』を試写し、キリスト新聞に映画評を寄稿した。下記リンクから全文読めるので紹介したい。

 残念ながら本作にも原爆軽視の傾向がある。広島と長崎の被害を描写しなかったのもそれだ(詳しくは記事を読んでいただきたい)。PRの段階で、同時期に公開された『バービー』とのコラボ(「バーベンハイマー」)がミーム化したのも恐るべき事態だった。欧米の人々に少なからず原爆軽視の風潮があると思われるからだ。

 アメリカに住んだ経験のある人に聞いたら、ドッジボールのゲーム中に赤いボールが投入されて、「これに一人でも当たったらチーム全滅。無条件敗北」と説明されたという。その名も「アトミック・ボム」。ただの子どもの遊びとはいえ、いやむしろだからこそ、原爆の名前やイメージがここまで安易に使われてしまうことに恐怖を覚えたという。

 日本にも本作を擁護して称揚する人が少なくないようだ。もちろん安易に否定してこき下ろしていいものではない。けれど唯一の被爆国の人間としてこれだけは言わねばならない。原爆を作った側の葛藤は十分伝わりましたけど、原爆を落とされた側の葛藤はどうでもいいのですか? と。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?