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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2019年4月の記事一覧

あっちの数字よりも、こっちの数字を。

あっちの数字よりも、こっちの数字を。

連休前だから、というわけでもないと思うのだけれど。

今週はどうも、ずっとドタバタしていた。会社にいる時間が少なく、あっちに行ったり、こっちに行ったり、また会社に戻ったり、やたら移動が多かった。会社でパソコンに向かうことを基本とするぼくにとって、わりとめずらしい週だったような気がする。

ひとつびとつを思い出してみれば、むずかしい打ち合わせが立て込んでいたわけではない。もっと深刻な事態を想定してい

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変化したもの、変化しなかったもの。

変化したもの、変化しなかったもの。

先日、たまたま前オフィスの近くまで出かける用事があった。

渋谷の宮下公園近く、「美竹通り」という通り沿いの古いビルに、昨年までオフィスを構えていた。ひさしぶりに見た宮下公園は、なんだかよくわからない姿に変貌を遂げようとしていた。

ここから、渋谷の再開発を嘆いてみせたり、異議申し立てをするほどの思い入れは、ぼくにはない。渋谷の街がどうなると知ったこっちゃないし、日本の都市計画にあれこれ苦言を呈す

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言わせてやりたい、あのことば。

言わせてやりたい、あのことば。

あれは何年前の出来事だろう、近所の病院に行ったときのお話である。

風邪だったのかなんだったのか、ぼくは朝から病院に出かけた。きっとそういう季節だったのだろう、病院はやたらと混雑していた。そしてスマホ片手の待合室で1時間ほどが経過したとき、ひとりのおじいさんがやってきた。窓口でおじいさんは、なにやら騒いでいる。聞けば、「①朝からすごい熱が出ている。②健康だけが取り柄の自分にとって、こんな高熱が出る

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犬の話から遠く離れて。

犬の話から遠く離れて。

キーボードに手をのせたまま、じっと固まっている。

やるべき仕事のひとつに片をつけ、さあ note を書いて原稿の続きをやろうと編集画面を立ち上げたところで、手が止まっている。犬の話を書こうかなと思ったものの、きのうも犬について書いた。銀行振込の手続き中に気がついた「あと一週間で平成がおわる!」の話も、いろんなところで大勢の人が語っていそうだ。ああ、だったらなんの話にしようと思い、とりあえず指を動

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こんな毎日を、こんなふうに。

こんな毎日を、こんなふうに。

だいたいそれは、金曜日の晩にやってくる。

ぼくは毎週月曜日から金曜日まで、ウィークデーにここの note を更新している。土曜日と日曜日、それから祝日は更新しないことにしている。もしもこのルールを設けていなかったら、ぼくにとって note はものすごく気の重い、大嫌いな場所になっていただろう。そして——現在、週日更新をはじめてから5年目になるのだけど——ここまで長く続かなかっただろう。実際、金曜

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くやしかったのだ、きっと。

くやしかったのだ、きっと。



圧巻だった、と言っていいと思う。

エリック・クラプトン@武道館、4日目の公演である。いまだから言うけれど、先週末に観た初日の公演は「らしくない」ミスの連続だった。バンドメンバー(とくにギターのドイル・ブラムホールII)との連携がちぐはぐで、PAのリレーションもうまくいっていなかったのだろう、入るべきはずのエフェクターが入っていなかったり、フィードバックがコントロールできていなかったり、挙

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こんなことを考えながら書いている。

こんなことを考えながら書いている。

ああ、どっちの話を書こうかな。

前提としてきょうは、あまり時間がない。それもあって今日は、いま書き進めている「ライターの教科書」についての、自分なりに定めた「書いていくうえでのルール」を備忘を兼ねてメモしておこうかと思っていた。けれども昨日、ほぼ日の学校・万葉集講座(永田和宏先生の回)で「歌仙」というものに触れて、がんがんばんばん、わんこそばのように歌を詠んで、「ああ、おれは自分のことを、詩を書

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はじまりもなく、おわりもなく。

はじまりもなく、おわりもなく。

はじめもおわりもないことを、つらつらと書く。

■ あと1か月でバカンス。
大型連休の終了後、およそ1か月先の平日に、3泊4日でバカンスの計画を立てている。バカンスといっても近県の犬が泊まれる宿に行くだけなのだけど、これがもうたのしみでならない。ここ数日、天気予報のニュースで「本日の東京は晴天に恵まれ、5月中旬並みの陽気でした」なんてアナウンスされると、それだけで「へええ。おれらが旅行に行くときっ

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天文学的な確率の、その出会い。

天文学的な確率の、その出会い。

出会いは億千万の胸騒ぎ、である。

ポップソングの歌詞、またはドラマやマンガなどの台詞で、出会いの偶然性や運命性について語られることがある。地球上には70億もの人間がいて、そのうちのたったふたり、きみとぼくとがここで出会ったのは運命的なことだよね、といった言説だ。たしかに確率だけでいえば天文学的な数字によって成り立つ確率だろうし、だからこそこれらの台詞は満天の星空を見上げながら語られたりするのだろ

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あのひとと同じ空気を吸って。

あのひとと同じ空気を吸って。

先週の土曜日、クラプトンの武道館公演に行った。

今回の来日公演は武道館5デイズ。ぼくは今週にももう一度、観に行く予定でいる。

クラプトンが最初にワールドツアーからの引退・撤退を発表したのは、2001年「Reptile ワールドツアー」の最中のことだった。事実、その翌年には同ツアーの模様を収録した、集大成と呼ぶにふさわしい傑作ライブアルバム、「One more Car, One more Rid

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力作を信じるな。

力作を信じるな。

ちょうど10年ほど前の話である。

いまの自分からすると信じられない話だけど、その年のぼくは合計14冊の本を書いていた。力を入れて書いた本もあったし、力を抜いた本もあったし、力の入れようがない本もあった。

そのうち一冊は、わりと渾身の力作で、発売前から「もしもこれが10万部に届かなかったらライターを辞めよう」と思っていた。「自分はこういう本にこそ、価値があると思っている。それが最高のかたちで実現

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シャッフル再生のことば。

シャッフル再生のことば。

いま、タイトルについて考えている。

ひとまず『ライターの教科書』と呼び合っている、進行中の新刊のタイトルを考えている。「ライターの教科書」ということばはタイトルというよりもコンセプトに近く、できれば別のタイトルを思いつく自分がいてほしいと、前から思っていた。そして昨夜、ひとつの案が浮かんだ。いまは自分のなかで揉みながら、馴染むか馴染まないか様子を見ているところだ。

* * *

たとえば毎日書

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本屋大賞によせて。

本屋大賞によせて。

きのう、「2019年本屋大賞」受賞作が発表された。

大賞を受賞したのは、瀬尾まいこさんの家族小説『そして、バトンは渡された』。去年に読んだなかで、いちばん気持ちのいい小説だったので、なんだかうれしくなってしまった。あれは何月号だっけ。昨年、この小説の書評を書いた「小説現代」を引っぱり出す。読み返して、OMG。暗澹たる気持ちに襲われる。やっぱり書評は、短い文量でなにを評するのは、おれは苦手なんだな

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男子一生の夢、それは。

男子一生の夢、それは。

こんなことでもなかったら、思い出しもしなかったよ。

本日、政府からあたらしい日本銀行券のデザインが発表されました。一万円札には渋沢栄一が、五千円札には津田梅子が、そして千円札には北里柴三郎の肖像が、それぞれ採用されるのだそうです。ラインナップもなるほど悪くないし、新紙幣では漢数字の「壱万円」よりアラビア数字の「10000」がおおきく記載されるようだし、外国人にもわかりやすい、いいデザインではない

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