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古賀史健

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古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。
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2019年3月の記事一覧

プレーンピザと塩むすびの理由。

プレーンピザと塩むすびの理由。

ぼくはイチローさんに取材をしたことがない。

けれども、「イチローさんに取材をした人」に取材をしたことはある。早いものだなあ、もう10年以上も前、ぼくはその人の本をつくった。もちろんイチローさんをテーマにした本ではなく、あえていえば池波正太郎さんの『男の作法』の現代版、みたいな本だった。

雑談のなかでその人は、イチローさんの食事について語ってくれた。有名な「イチローは毎日カレーライスを食っている

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書きはじめたことを書いてみる。

書きはじめたことを書いてみる。

いろいろあってようやく、書きはじめた。

きょうの note ではなく、仮タイトルを『ライターの教科書』としている本の原稿である。書いていて、素直にたのしいなあ、と思う。いや、たのしいというよりも、うれしいのほうが近いかもしれない。おなかの空いた人がごはんを食べるように、眠くなった人があたたかい布団にもぐり込むように、なんの迷いもなく一直線に書いている実感がある。

どなたかにインタビューした内容

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お茶をにごすつもりが、こんなことに。

お茶をにごすつもりが、こんなことに。

さて、きょうはやることの多い日。

困ったときの得意技、非常にどうでもいい雑感をつらつら列挙して、お茶をにごしますよ。そういう男ですよ、きょうのわたしは。

そもそもお茶をにごすってなんだ。いや、いま書いてて思ったんですけどね。お茶をにごすって、どういう由来のことばなんでしょう。だって、どれだか忘れたけれど、ペットボトルのお茶、そこでの売り文句として「このにごりが本物の証です」みたいなことを言って

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あの映画の、あの食べものを。

あの映画の、あの食べものを。

おれはこれを、どれくらいの頻度で使うのだろうか。

オフィスの引越を終えた昨年12月、最寄駅に隣接するビル、その地下にある飲食店街でぼくは、緑色の看板が輝くチェーン店を眺めながらおのれに問いかけていた。お店の名前は「サブウェイ」。あれはなんと言うのだろう、その場で具を挟んでいくスタイルを採る、サンドイッチ専門店である。

ほんとうはここで、サブウェイに関する個人的な思い出話をしたいのだけれども、そ

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あんな夢は、もう見ない。

あんな夢は、もう見ない。

いつのころからか、あの夢を見なくなった。

おそらくは大学4年生と思われるじぶんが、どういう理由からか単位の取得に失敗し、卒業できなくなるという夢である。もう少していねいに言うと、卒業できないことに気づいた瞬間の、ジェットコースターが急降下するときのような、足もとが抜けてしまって胃袋が浮き上がったような瞬間の、夢である。20代のころは割と頻繁に見ていたこの夢、さすがにこの数年はまったく見ることもな

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あの人は、引退しない。

あの人は、引退しない。

こういう日は、当然のようにやってくる。

きのう、イチローさんが現役引退を発表した。同じ1973年生まれの人間として、ぼくのなかでのイチローさんはあこがれでもあり、目標でもあり、支えでもあり、戒めでもあり、いろんな思いが詰まった野球選手だった。契約を切られるより先にご自身でこの決断をされたこと、こころからの感謝とおつかれさまの拍手を送りたい。

それにしてもイチローさんが引退する日がくるなんて、い

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あこがれのプリーチャー。

あこがれのプリーチャー。

年齢でいえば中年、キャリアでいえば中堅からベテランである。

なのでこんな話をすると「老害」扱いされることはわかりきっているのだけれども、そして世のなかの流れから逆行しまくっていることも重々承知なのだけれども、だからこそあこがれに似た気持ちで思うことがある。

なんの遠慮もないままに、ほんとうの説教をしてみたい、と。

怒りや不満の捌け口として説教するのではなく、冷静に、淡々と、ただただ「あなたが

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ちいさな合宿を終えて。

ちいさな合宿を終えて。

きのうの note に書いていた合宿が終了した。

今週ひとつ(正確にはふたつ)仕上げなきゃいけない原稿があるので実際に動くのは来週からになるけれど、とりあえず「あとは書くだけ。余地が残された部分は書きながら考えるだけ」と思えるところまで練り上げることができた。編集者の柿内芳文氏とふたり、チェックインした午後2時から深夜の3時まで、あいだに各々の作業や沈思黙考の時間をはさみながら、たっぷりと話し合

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春のトレーニングキャンプ。

春のトレーニングキャンプ。

たったの一泊二日ではあるけれど。

本日これから、ひさかたぶりの合宿へと向かう。おおきな締切が迫るたびに会社に宿泊しながら徹夜で原稿を書くこと。これは合宿ではなくただの徹夜であり、もっといえば残業だ。合宿とは読んで字のごとく誰かと宿をともにしながら共通の目的に向かって訓練・鍛錬に励むことを指す。

〔合宿〕 一つのグループが、スポーツの練習や共同研究などの目的で、同じ宿舎に泊まり、起居を共にしては

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ブルー・ジーンズ・ブルース。

ブルー・ジーンズ・ブルース。

普段、ぼくはジーンズを履いている。

たまにがんばってチノパンを履いてみたり、なんと呼ぶのかわからない薄手のチノパン的なパンツを履いたりすることはあっても、基本的にジーンズを履いて暮らしている。ライターという、それで許される職業についているのだからまあ、悪いことじゃないだろう。

そのためわが家には、けっこうたくさんのジーンズがあふれている。大掃除のたびに処分したりはするけれど、捨てる数より購入す

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ついにおれにも超人がやってきた。

ついにおれにも超人がやってきた。

目が疲れてるのかな、と思う。

ぼくは普段、寝るときに iPhone の Kindle アプリで本を読みながら眠るのだけれど、読もうとする文字がにじみ、目がしばしばする。なんの気なしに画面を少し、ほんの10cmほど遠ざけると、ばっちりピントが合う。ぼくが英語話者であったならば書くだろう。「OMG!」と。なんてこったい、どうやらぼくにも超人ハルク・ホーガンが、いや、軽く老眼が襲ってきたのである。

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やりたいことがやりたくないことに変わる理由。

やりたいことがやりたくないことに変わる理由。

やりたいことがあるとき、毎日はたのしい。

ああ、はやくやりたいな。どんなふうにやろうかな。こんなことをやったらあいつ、びっくりするだろうな。届きそうで手の届かない、ふわふわ中空に浮かんだそれを眺めているあいだが、いちばんたのしい。

なぜたのしいのかといえば、手元に「やらなきゃいけないこと」があるからだ。もっといえば手元のそれを、やりたくないからだ。面倒くさくてたまらないからだ。その逃避の先にあ

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風邪薬とカレーライス。

風邪薬とカレーライス。

もう1000回以上も書いているのだ、「またか」と言わず聞いてほしい。

風邪を引いた。熱が出た。一昨日の晩に鼻が止まらなくなり、昨日の朝から咳が止まらなくなった。総合感冒薬のパッケージに記載されている風邪の諸症状、すべてが発現した。今朝になって熱は引いたものの、まだ咳は出ているし、隙あらば復活してやろう、もうひと暴れしてやろう、という風邪の敗残兵が肺の奥で身構えているような感覚が確実にある。

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そういえば、の関係を。

そういえば、の関係を。

きょうは3月11日だ。

震災が起きた2011年の3月、ぼくは加藤貞顕さんと一緒に、本をつくっていた。取材のため一緒に中国へ渡ったのが、たしか2月。いちばん寒い時期の北京だった。早朝にホテルを抜け出して、塩からい牛の佃煮が載ったおかゆを食べた食堂のまぶしさを、なぜだかよく憶えている。「震災から8年」といわれてもいまいちピンとこないのだけど、あそこでおかゆを食べたのがその年だったんだよ、と言われると

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