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今週の写真集〜牛腸茂雄、関口正夫〜

今週は牛腸茂雄さん作品にじっくり触れることができました。
関口正夫さんとの共著「日々」、代表作の「SELF AND OTHERS」、牛腸さん没後に飯沢耕太郎さんがまとめた「こども」。

1946年生まれの牛腸さんは幼少の頃から胸椎カリエスという病気に罹り、身体的にハンディキャップを背負っていました。
「SELF AND OTHERS」というタイトルにもあるように、幼い時から自分と他者との違いを意識せざるを得ない状況で育った彼の撮る写真は、自由に動き回る被写体(主に子どもたち)への憧れが表れていると言われています。また、子どもたちの強張った表情からは距離感も感じられます。

けれどもそれは、不思議なことに冷たい距離感ではないのです。
「自分と違う身体つきをした人を見れば、子どもならこういう表情をするだろうな」「私も子どもの頃、見知らぬ人に対してはこういう素振りをしていたな」と、知らない間に自分の過去へ連れて行かれ、妙にしっくりくる、ということをページをめくるたびに繰り返してしまいます。きっと誰でも1枚は、彼の作品の中から昔の”自分”を探し出すことができるはずです。

普段写真を撮っていると、「もっと被写体に笑ってもらわなきゃ」「良い表情を撮らなきゃ」と考えてしまいがちです。もちろんそうしなければならない時の方が多いのですが、牛腸さんの写真のような、ありのままの距離感を収めるのも大切なことなのだと思います。実際、牛腸さんの作品の中の女の子は後に「表情が気に入っていなかった」と言っています。それでも、この写真を見る私たちは、この1枚のおかげで過去の自分へ束の間戻ることができるのです。
牛腸さんは自分がカメラを向ければ子どもたちがどう反応するか分かっていたはず…その中で生み出された作品は、彼が自分のことに向き合い続け、受け入れていたからこそできたものだと思います。そんな作家の生き方まで写る、素晴らしい作品です。

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