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ぎこちない2人

私が通った公立中学校は

A小学校と隣町の B小学校の

生徒が一緒になるタイプの中学校だった。

私はA小学校で6年生の1年弱だけを

過ごしたので知っている生徒は少ない。

おまけにA小学校の生徒は中学生になると

半分ぐらいは私立へ行くため、

さらに知っている生徒は少なくなった。


中学1年生になりクラス分けされた

教室へ行くと、知っている人は誰もいなかった。

完全なるアウェイ状態で

私の心細い中学校生活はスタートした。


新学期始まって早々、

係の担当を決めることになった。

それぞれ2人組の係担当だった。

こういう時、大抵の女子は

直ぐに友達を作れるが、

私はそれができなかった。

周りの女子達が

「一緒にやろう!」

などと言いながら

どんどん係が決まっていく中、

私は取り残された。


「まだ係決まってない人居ますか?」

と先生が言った。

私は小さく手を挙げた。

するとクラスみんなの視線が

一気に私に集まってしまった。

あ~逃げ出したい。

すると、

「僕やります!」

佐藤君だった。

こうして私と佐藤君は社会の係になった。

少女マンガやドラマだったら好きになるやつだ。

失礼な事に、「ありがとう」

などという気持ちにはなれず、

思春期真っ最中の私は、

男子と一緒に係をやることが、

ただ恥ずかしかった。

この時の私の心境は

悲しさと、悔しさと、恥ずかしさが

入り混じった複雑な心境だった。


どんな係かと言うと、

社会の授業がある前日に

社会の先生に授業に必要なもの、

持ってくるものなどを聞きに行く。

というものだった。

しっかり者の佐藤君は毎回

「明日社会の授業だよ。」

と教えに来てくれる。

そして私と佐藤君は、一緒に

先生に聞きに行くのだ。

教室と職員室の道すがら

私たちは会話もなく一緒に廊下を歩く、

なんともぎこちない感覚を覚えている。


佐藤君は物静かなタイプだった。

みんなの前に名乗り出るのに

勇気が行っただろうに、

どういう心境で一緒にやってくれたのだろう。

彼が今、どこで何をしているのか

まったく分からないが、

佐藤君にこう伝えたい。

「あの時は、
めっちゃ恥ずかしかったんだけどさぁ、
一緒に係やってくれてありがとう!」

今の私だったら、佐藤君と

もう少し楽しく会話ができそうだ。


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