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くみちゃんのおばさんの味噌おにぎり

恐らく今の私を知る人は

想像できないかもしれないが、

私は幼少期から中学生ぐらいまでは

物凄く食が細かった。


母は食べさせるのに苦労していた。

幼い頃の私は食事の時間や、

食べる事が特別楽しい

という感覚は無かったように思う。

食べる量も少なければ、

食べるのも凄く遅かった。


終戦直後に生まれた私の両親、

特に父は、「もったいない残すなよ!」

という主義。

全部食べなければ食事の時間を

終える事ができないのだ。


全部食べ終える前に

食べる事に疲れてしまい、

余計に時間がかかる。

母は溜まりかねて、

「もういいわ」と、

ようやく食事の時間を終えられる。


このような食事の時間は、

まさに、生きづらい。

そう思ってしまうような

経験だったと思う。


幼い頃、2歳上の姉の幼なじみ、

くみちゃんの家に姉妹で

よく遊びに行っていた。

遊びに行くと、

くみちゃんのおばさんは、

上に味噌が塗られた

味噌おにぎりをよくおやつに出してくれた。

出されると姉は「わーい!」

と喜んで食べる。

くみちゃんのおばさんはいつも

「ふみかちゃんも食べる?」

と聞いてくれたが、

私は首を横に振って

「いらない。」と、

かたくなに食べないのだ。

味噌おにぎりは

私の家では出てきたことのない

得体の知れない食べ物だった。

見た目も食べたいと思えなかった。

まさにHSC的反応だ。


今はもう分かる。

味噌おにぎりなんて

絶対に美味しいに決まってる。

姉がときどき

「くみちゃんのおばさんの
味噌おにぎりは美味しかったな~」

と言っている、このおにぎりを

私は一度も食べた事がないのだ。

大人になって、

会う事が少なくなってしまったが、

味噌は甘めだったのだろうか?

隠し味に何か入れていたのかな?

そう思いをはせながら

いつの日か、

くみちゃんのおばさんの

味噌おにぎりを食べる日を

密かに夢みている。



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