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フリーランスの立地条件

「この店さ、すごくおいしくて店主の人柄も良くてさ。俺も応援してたんだよ。でもうまくいかなくてさ。やっぱり駅から15分で、周りもぱっとしない住宅地でさ。いい人ってだけじゃ難しいよね」

以前、業務用品のリサイクルショップを経営していた人からそんな話を聞いたことがある。

リサイクルショップではリニューアルしたり廃業した店舗の厨房機器や什器なんかを買い取って、さまざまなルートで販売するのだ。そこの話もなかなかおもしろいのだけど、いろんな意味で深すぎて書けない。

機器の引き取りをしながら、飲食店でも物販でも「いい店」が経営的にはうまくいくとは限らないケースをいくらも見てきたのだという。

なるほど。たしかにありそうだなと思うし、取材でも過去の失敗談として経営者からそういうエピソードが出ることは珍しくない。

ただ、そこには法則性があるようでないのだ。

立地的にはすごく条件が厳しくて、業界のプロが10人中10人「やめとけ」という店を成功させる人だっているし、立地も良くてどう考えても「おいしい」条件でちゃんとやってたはずなのに、思ったようにうまくいかないケースもある。

そこも掘ってみたいけどnote界隈にはそれこそお店づくり、店舗運営のプロがたくさんいるので僕が出る幕じゃない。

なのだけど、この話を聞いたとき「フリーランスにも立地条件ってあるよな」と思ったのだ。

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え、フリーランスってどこにも属してないじゃん。なんで立地条件? と思うかもしれない。たしかに、物理的にはどこにも属さない。だけど、その人が市場(あえての表現だけど)でどこにマッピングされるかという点では、望まなくても立地的な見方はされることがある。

安く早く的な立地。ちょっと時間がかかるけどそこにしかないものがある立地。いいものを持ってるけどあまり人通りは多くない立地。すごく賑わっていて、最近注目されてお客さんの奪い合いになってる立地。

あげてくとキリがないけどいろいろある。要はどんな場所でお客さんに見つけてもらうか、足を止めてもらうか、あるいは何かで知ったお客さんがわざわざやって来てくれるか。

安く早くとりあえず最短最速でやる体力勝負でも自信あるという人なら、そういう目立つ立地を確保しないといけないし、多少時間もコストも必要だけどそれ以上の価値を出せる人ならそういうお客さんに目を留めてもらえる立地のほうがいい。それぞれに合った立地条件がある。

安く早くで頼みたいのに「なんか高いじゃん」となるのも、本当はつくれるのに「こういうところには時間やコストかかってもちゃんとしたもの頼めないんだろうな」となるのもどちらも不幸だ。

物理的な店を出店するのなら、当然立地条件は相当検討するのだろうけど、フリーランスの場合、なんていうか「自分の立地条件」ってあまり考えない。

もちろんフリーランスでもすごく考える人もいると思います。ポジショニング戦略を練って、そこに合ったカスタマージャ―二―もつくり込んでPDCAぶん回してというのもやれる人、やりたい人はやる意味あると思う。

でも実際には、最初からそんなに計算してやれる人も少なくて、計算したとしてもそのとおりになんてなかなかならない。僕も結果的に書籍ライターになったタイプだし。

自分の立地条件をあらためて見渡しても、noteでもライター界隈でもまあ中途半端だ。

どうするのが正解って話でもなく、物理的な意味でもなくフリーランスにも立地条件というのがあって、それが目に見えないものだけに自分の立地を探すのも生かすのも難しいのかもしれないという話。答えはないよなぁ。