言葉で少しだけ視界を良くする
ときどき、ふっと思い出したかのように考えることがある。なんで「書く」仕事をしてるんだろうとか。根源的な問いだ。
本の原稿にしろ何かの記事やクライアントワークで書く文章にしろ、共通してるのは「書くこと」が目的ではないことだ。ここをうっかりすると自分でも勘違いしてしまう。
文章を書いておしまいではない。本当の仕事はその先にある。
じゃあ本当の仕事って何なのか? いろいろあるけれど文章を書いたその先で「世の中の混沌」を少しでもいいものにできればいいなと思う。
もちろん混沌がすべて良くないわけじゃない。楽しい混沌もある。けれど楽しくない混沌があまり多すぎると楽しい混沌も楽しめなくなる。
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ほとんどの場合、そこに悪意はあまりない。多くの人は目的地にスマートにたどり着きたいし、羽田方面の電車に乗ったのに気が付いたら浦和に着いてしまうような時空の歪みは望んでない。
なのに現実はそれに近いことが彼方此方で起こるのだ。
そんな混沌を整理して、それぞれの行きたい場所に向かうために言葉で視界をクリアにする。
そう、自分はこっちに行きたかったんだ。そんな誰かの顔が見られることも「書く」仕事の目的だったりするのだ。