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もう家具は買い取れない話

ダイニングテーブルを買い換えることになった。

疾患のこととかもいろいろ含めて、生き方暮らし方を変えてくなかでのこと。

いままで使ってきたダイニングテーブルは北欧風(よくわからない言い方だけど)と言えば、それっぽいオーク材の無垢のもので「虎斑(とらふ)」と呼ばれる木目が表面に出てるのも気に入っていた。

在りし日の(いや、いまもあるんだけど)お家騒動以前の、会員制でコンシェルジュっぽいスタッフが一緒に買い物に付いて回るスタイルだった頃の大塚家具で購入したやつ。

めちゃくちゃ高いものではなく、めちゃくちゃ安いものでもないくらいのライン。けどまあ、なんとなくいまの生き方暮らしには合わなくなってきた。

べつにダイニングテーブルが悪いわけじゃない。人間のほうの都合。それに愛着もあるから「捨てる」という処分は忍びない。

こういうのって、ほんと人によると思う。べつにモノはモノなんだから処分で構わない人もいるし、なんとなくちゃんと、これからも使われるように「お別れ」したい人もいる。どっちが正しいってものでもない。

で、「家具買取」の看板を掲げてるお店をいくつか回ってみたのだけど、そこで返ってきた言葉は意外というか、薄々そうなんだろうなと思ってたものを裏付けるものだった。

結論からいうと「いま」はもう、ふつうの家具はほぼ買い取られない。

アンティーク家具や絵画・骨董なんかの目利きでもある、買取専門店の経営者から聞いたのは「いま、買取市場に値段のつかない家具が溢れてるんです」というもの。

そもそも、20代とか30代の若い層の暮らし方が変わってきて、そんなに大層な家具は要らない。最小限でコンパクトでいいという人が増えてる。ファスト家具みたいな。実際「IKEA」とか「ニトリ」では若い層がインテリア家具を選んでるのはふつうに目にするし。

そんな風潮の中で、いまもヤバくなってる禍が起こって、家で過ごしたりテレワーク時間が増えたことで、大きめの家具を処分する流れが加速。買取市場というかリユース市場はあきらかに供給>需要の状態に陥ったということらしい。

もちろん、アップサイクルの流れもあるし、一部の歴史あるハイエンドのブランド(カッシーナとか)は相変わらず需要があるけれど、そんなに数が出回らない。

あと、わかりやすく「ああ、あのブランド」とデザインが確立されてるもの以外は、たとえばスペイン製の当時100万円で購入されたカップボードでも、ほとんどただ同然みたいな価格でしか買い取られない。

実際、僕もその実物を見せてもらったけど(軽井沢の別荘で使われてて引き取られたのだとか)、ものは悪くなくて、そういう世界観の別荘にありそう……でも趣味じゃないと思ってしまった。

つまり、どれだけ「モノ」は良くても、何も特徴がないものは買い取られないのだ。僕らが大塚家具で購入したものも、無垢で北欧風でデザイン的に古さはなくてもそれだけでは市場的な特徴にはならない。まあ、そうだろうな。

もちろん、地域性とかお店の方針、哲学とかによっては「全然、買い取りますよ」というところもあるかもしれないのだけど。あくまで僕の個人的な体験ベースの話。

これも件の買取経営者から教えてもらったのだけど裏技的なのとしては、貴金属とか値打ちのあるブランドものと一緒に抱き合わせでなら、テーブルも引き取ることは可能らしい。

引き取るって言っても輸送費とか考えたら赤字なんですけどね。

いろんな意味を含んで買取経営者は最後にそう言った。

結局、もういまはメルカリとかに出すのがいちばんなんだろうな。大型品だし若干の面倒くささはあるけれど。

でもまあ、梱包のプロであるヤマトホームコンビニエンスと提携した「梱包・発送たのメル便」みたいなサービスもあるし。

そんなのいまもうあたり前だよね? って声も聞こえてきそうだけど、リアル買取店舗では「これは、どんなにモノが良いか」なんてあまり関係なくて、サクッとそのとき必要なもの、新品は高いから要らないけど中古なら欲しい需要のあるゲーム系とか新生活用品がメインストリーム。

ファスト系でもなくハイブランドでもない、中間的な「そこそこの良いもの」って、ほんと厳しい時代なんだなって、あらためてダイニングテーブルに教えられた話。オチはないよ。