一蘭のラーメンで仕事する時代
一蘭で仕事してるみたいだな、と思うことがある。あの個別に仕切りのある「味集中カウンター」で黙々と食べる個食スタイルのラーメン店だ。
えっと、よくわからんという人は図書館とか塾なんかの隣の人が気にならない衝立がある自習室を想像してください。それのもっと狭いやつ。
べつに一蘭システムを揶揄してるわけじゃない。
あのスタイルに出会ったときは斬新だったし、いまではインバウンドの外国人にも人気になってる。すごくシステムが細かいのにオペレーションが完成されてて、ああ日本だなと思う。
なんだろう。一応、ずっと日本で生まれて日本で生きてるから、なんとなくそういうシステムにすんなり適応してしまえたりするけど、まったくストレンジャーな感覚でここに入ったらどう感じるのだろう。
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けど、よく考えたらこのシステムっていまは一蘭だけじゃなくて、日常の仕事世界でも普及してるんじゃないのか。
隣の人が気にならない、というか気にせずに「自分の仕事」だけに集中する。基本的に他の人と話さず、仕事上で何か用があってもビジネスチャットとかに投げてそこで済ませる。
それって、自分単位ではすごく効率がいい。タスクを黙々さくさくこなせる。仕事集中システムだ。
誰かに何かを頼むときも、端的に「この部分とこの部分」をお願いしますと伝えて余計なことは言わない。オーダーシステムにないものは頼まない。なので、当然、相手からも「この部分とこの部分」のアンサーが届く。
まあ、すごく雑に言えばそんなふうにいまは仕事が進んでいくことが多い。
仕事は早く効率よく進む。それはいいと思う。なんだけど、ときどき何かがこぼれたり、何かが足りなかったりもする。致命的なものではない。けど、本当はそれがあったほうがいい仕事の仕上がりになりそうな気がするもの。
でも、そんなのはお互い気づきようがない。それぞれ、ちゃんとやるべきことはやってるのだから。仕事集中システムで。
隣が見えない世界でずっと仕事していると、仕様にないものは考えなくなる。考えても、隣が見えないと、実際のところどうなのかわからないからだ。
本当はこういうのもあったほうがいいのかもしれない。こっちじゃなくてこっちにしたほうが、お互い「いいね」ってなるのかもしれない。
そういうのも、お互いに隣が自然に見えてたり、なんとなく感じられると「ちょっと相談なんだけどさ」で話がわりとしやすかったりする。物理的なものじゃなくても、ラウンドテーブルみたいな感覚で。
決まったシステム、限られたオプションの中で決まったものを動かしていくのが求められるなら、たしかに一蘭はいい。
でも、そうじゃないところにも「仕事集中システム」しかないのは、なんかもったいないし、いろんな意味ですごいけど奇妙だなと思うんだ。