見出し画像

僕たちはネットでタライを回す

電話の評判が悪い。ある調査では、オフィスで仕事の集中を邪魔されると感じる要素のトップが「オフィスにかかってくる電話」だった。

これだけ世の中がネットになって(この言い方も古い)も、やはりいまだに仕事上では電話が鳴り続けているのだ。

たしかによく考えると、宛先もなく「とにかく呼出音が鳴る」「出てみないと、何の用件かわからない」という電話のUXはほぼゲームだ。

中には地雷用件だって含まれてるだろうし、そんなのドキドキすぎるんじゃないか。

だからなんだろうか。会社の若手も電話を嫌がるし、電話かける側も対応に不満を持つ。

それならと、会社にかかってくる電話はとにかくすべて自動的に「電話対応サービス会社」に転送されるところもある。社員は電話対応しなくていいのだ。

スタートアップにはそもそも固定電話がないところも珍しくない。

さらに電話をかけるのが面倒な人のために、用件を入力すれば代わりにかけてもらえる「電話問い合わせ代行サービス」までリリースされた。

電話問い合わせ代行という名前だけど、べつに問い合わせじゃなく「アポイント取りたい」「何か相談したい」「話したい」、まあなんでもいいのだ。

それもAIが入ったスマートスピーカーに「新しい〇〇どこで手に入るか調べて」と言っとけば勝手にスマスピが「電話問い合わせ代行会社」にデータを送ってくれて、電話問い合わせ会社が代わりに必要なところに電話をかけてくれる。

問い合わせのあった会社も「電話対応サービス会社」に問い合わせ内容を転送して、今度はそこが対応を振り分けてーーとやってるうちに、なんだかよくわからなくなる。

なんだかよくわからないものはどうしようもない。うやむやになる。

その昔、次々と用件が回されて一向に解決されない「タライ回し」と呼ばれる文化があったけど、現代のタライ回しもそれはそれでいとをかしみがあるのだ。