『フランシス・ハ』
本作は、映画監督・女優・脚本家と多彩な活躍をし、マンブルコア映画に携わって来たグレタ・ガーウィグが主演・脚本です。
『フランシス・ハ』も若い白人の中産階級の日常や人間関係をテーマにした自主製作の(商業作品ではなく、自己資金や学生などサークルが自主製作した作品)マンブルコア映画の様に、低予算で作成され2012年の米国で小規模に公開されていました。
内容はというと、2000年代初頭の現代のニューヨーク州を舞台にした物語です。主人公は、ダンスカンパニー所属の団員(プロ)を目指す実習生で、ヴァージニア・ウルフの小説を嗜み非モテと和訳されているUndatebleな、27歳の若くない老け顔の体格の良い白人のフランシスが主人公です。
フランシスがニューヨークの公園で大学時代からの友達(親友のソフィー)と年齢にそぐわないような子供っぽい喧嘩ごっこをして無邪気に遊ぶところから始まって、彼氏と結婚を視野に入れた交際をしている親友のソフィーや仲間たちは安定した生活をしているのに対して、フランシスは恋人と別れクリスマスショーで踊る仕事は外されルームシェアするお金もなくなり、崖っぷちの宙ぶらりんの中で思いつきでパリに旅行します。
途中で、これはアメリカンドリームみたいな夢を掴む成功の物語ではないと気づかされます。
逆にそこが受け入れられて大規模に公開が拡大されたのかなと思います。
人生を左右するような挫折ともいうべきダンサーの道がじわじわ閉ざされていっている首が詰まりそうな苦しい崖っぷちの人生の岐路を描いた映画ですが、モノクロームの全編を通して明るい音楽が流れていてあまり深刻さを感じませんでした。
「痛い」独身女性の「痛さ」を詳細に鮮明に描かず、明るい音楽とモノクロームというフィルターを通して見せることによってフランシスが時々コメディエンヌに見えるからかな、と思います。
フランシスを、夢を諦められない老け顔の子供と大人の境界を彷徨う「痛い」独身女性のまま終わらせず、自分を見つめ直させ自分に向いてる道に進ませたところは、フランシスの様な岐路に立つ人達に向けての応援の様にも感じます。
新しい仕事と新しい表札で新しい生活を迎えたときにやっと、タイトルの『ハ』の謎が解けました。
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇だ。」
そんなチャップリンの名言がありますが、喜劇と悲劇は紙一重っていうことなのかなと思いました。モノクロームのコメディというと、私は最初にチャップリンを思い浮かべます。
『フランシス・ハ』(Frances Ha)原題ママ
2012米国公開 2014年日本公開
監督ノア・バームバック
脚本ノア・バームバック/グレタ・ガーウィグ
フランシス/グレタ・ガーウィグ
ソフィー/ミッキー・サムナー
出典:IMDB
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