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『ホットサマーナイツ』

 1991年のアメリカのマサチューセッツ州コッド岬にあるケープコッド、「夏の鳥」のように裕福層が夏休みに訪れるこのケープコッドを舞台に、ティーンエイジャーの「one summer can change everything(一夏の経験が全てを変えてしまった)」な危険な青春を描く物語です。インターネットやスマートフォンがない90年代の若者文化と音楽にのって91年当時はまだ生まれていないティモシー・シャラメが主人公を演じます。

 この物語は、名前も明かされない少年が語る伝説になったダニエルの話です。

なぜひと昔前の青春犯罪映画を2000年代の現代に製作したのか気になりますね。

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 冴えない奥手の主人公のダニエル(ティモシー・シャラメ)が、街で有名な不良で大麻ディーラーのハンター・ストロベリー(アレックス・ロー)ハンターの妹で街一番のかわいい女の子マッケイラ(マイカ・モンロー)との出会いをきっかけに経験する危険な夏の物語なんですが、勉強したり部活を頑張って良い大学に行って街一番のかわいい女の子を射止めるような話ではありません。
 金持ちの家庭でも街の出身者でもなく、最愛の父を亡くしてケープコッドの叔母の家に預けられた、喘息持ちで塞ぎ込んで部屋に閉じこもっているダニエルが、夏休みの熱帯夜の熱に浮かされた様に、自ら切願して地元民の不良ハンターと大麻を売って金を儲け破滅する物語です。
 3ヶ月という短い期間の間、快感を追い求めるように、スリリングな体験を重ねていく衝動的で感情に突き動かされる10代の若者を描いています。
 主人公のダニエルは、決定的な時に正直になれない臆病で不誠実とも取れる性格の割に、大胆にやらかします。
 そして伝説へ。

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ハンター・ストロベリー(アレックス・ロー)
 付き合う友達は選んだ方がいいと私は思うけど、ハンターみたいな不良でイケメンでマッチョで良い車に乗ったミステリアスな男に憧れちゃうところが最初はダニエルにあったんじゃないかと思います。
 実際の彼は、病気でママを亡くしていて、学校を退学したり恵まれた環境で育ったわけではなく、妹にまとわりつく男には厳しいです。
 売人以外に出来ることがないと言いつつ、妹と亡くなったママの願いで売人から足を洗おうと思った矢先のことでした。
 街の人が公に関わりたがらないハンターと、他所者で人と関わり辛かったダニエルは最初は不思議と馬が合ったようですが、妹に関しては…。

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マッケイラ(マイカ・モンロー)
 あの兄にしてこの妹ありな感じで、兄貴ほど不良でもないけど、モテるのでたくさんの男を知っているせいかダニエルに比べるとかなり早熟な一面があります。彼女に関わった過去の男は皆死んでるらしくて、ダニエルが心配になりますね。亡くなったママの望みもあって兄貴には売人をやめて欲しがっています。ということは、ダニエルの恋もピンチなわけですが・・・。

ティーンエイジャーが麻薬の売買に手を出すと、怖い大人に目をつけられる

コカイン売買の元締めシェップ(ウィリアム・フィクナー)
 大金を手にするため大麻からコカインの売買に手を出そうとして、ハンターが止めるのを聞かずダニエルはコカインを買付にシェップの元へ向かったのですが…。
 ハンターとダニエルの大麻の元締めのデックスに相談せずにダニエル単独で行ったものですから、シェップに脅されて大金を取られてしまうわけですね。シェップ曰く「俺なら高跳びをする」レベルの大事です。
 かわいい色のTシャツを着てるけど目を離せない怖さもあり、パンツ一丁の女がピアノ弾いてるしヤバい。

夏の終わりとともにハリケーンが街に来て、街とダニエル達それぞれが嵐を迎え、他所者のダニエルや街の有名な不良ハンターや街一番かわいいマッケイラ達はいなくなり伝説(噂)として残った  

 伝説というと聞こえが良いけど、コカインの元締めも高跳びするレベルなので、その後ダニエルとマッケイラが結ばれたかというと私は否定的な見方をしています。その後どうなったかわからないからヤンキーの武勇伝みたいな噂話にもなったわけですし、心配になります。
 彼にとって悪い意味で忘れられない夏になったのは間違いないでしょう。
 1991年の夏以降のことは私たちにはもう知る術がありません。

 ダニエルの伝説を語った少年は曰く13才らしいので、この映画が公開された2019年だとたぶん40代だろうし、少し昔の物語にすることでその街の伝説の不良というか、その噂みたいな雰囲気を醸し出してるのかなぁと思いました。

見どころは他にもあって、

 冒頭からベストキッドみたいな鉢巻のシャラメとか

 ケチャップに溺れそうなフレンチフライとか

 アメリカならではのダイナーの雰囲気やシェイクが美味しそうです。

 ストリートファイターⅡで遊んだりドライブインシアターでターミネーター2を見たりするシーンもあって、90年代カルチャーが好きな人にもおすすめの作品です。
 A24の作品は、見ていてこれは辛いなと心が感じる部分を上手に突いて恐怖や絶望や苦しみや悲しみなどを味わわせてくれます。


出典:IMBD

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