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『女と男の観覧車』

 The Mills BrothersのConey Island Washboard Womanという曲で始まるこの映画を初めて鑑賞するウディ・アレン監督作品に選んだのは、1950年代の遊園地でレトロな雰囲気が魅力的に感じたからなんですけど・・・、ウディ・アレン監督(1935年12月1日生)はこの「コニーアイランド」(ブルックリン区)があるニューヨーク州(ブロンクス区)出身なんですね。

1950年代の雰囲気を実際に体感したことあるお年と出身のウディ・アレン監督だからこそ、2000年代の現在にこの懐古的で独創的な映画が撮れたんだろうなと思います。とても古い時代を題材にしているけど、50年代と違う恐らくカラーグレーディングやノイズのないつるりとしたクリアな近代的な映像技術で、古いけど新しい、そんな感じがする映画です。50年以上の時代を経て映像技術が進んでも、50年以上前から進化してない人間の痴情のもつれを映像化しています。

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ミステリーやノワールというほど謎や犯罪性を主張しておらず、ダークコメディというほど諧謔や皮肉があるわけでもなく、登場人物の愛の苦しみや争いや裏切りといった側面を側から見せつけられる映画。

 1950年代の真夏の美しく現実離れした遊園地を舞台に、視聴者はまるで透明人間の如く、ケイト・ウィンスレット演じるジニーが若い美形の大学生とのひと夏の不倫に精神病質的に狂っていく様子を詳細に見せつけられるという、蒸し暑い夏にじっとりと脂汗をかきながら見ると不快感倍増で寝苦しくなりそうな有り様です。

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 実のところ、ウディ・アレン監督作品を私はこれまで見たことがなく・・・、アッパークラスのインテリなシティボーイがサクセスフルなキャリアとロマンスを披露しそうなイメージ(完全に思い込み)があったので敬遠していたのですが、本作は趣味がいいとはお世辞にも言えない、高尚かというとそうでもない、愉快かというとそうでもなくて、敷居の低さが逆に身近に感じられて生々しいと思いました。
 派手なアクションシーンなどありませんが、痴情のもつれで2時間以上魅せてくれるのでケイト・ウィンスレットを筆頭にお芝居が本当に上手なキャスティングなんじゃないかと思います。
多作なウディ・アレン監督の愛好家の皆々様におかれましては、寛容な気持ちで読んでいただけると幸いです、初心者なので。
 初めてのウディ・アレン監督作品鑑賞として選んだのが本作『女と男の観覧車』(2018)原題『Wonder Wheel』(2017米)で良かったです。

主要な登場人物は夢見がちな大人、子供は放火の常習犯

 この映画の面白さは、理想があって現状をブラッシュアップしたい夢見る大人達、いわゆる登場人物に寄るところも大きいと思います。
 ジニーの息子リッチーは、ジニーの再婚相手ハンプティと親子関係が上手くいっておらず、母親のジニーは再婚生活に満足しておらず不倫に夢中で女優を夢見ており、リッチーは物語的にも影が薄い存在ですが、放火することでこの映画の視聴者にも注目されることができるような可哀想な男の子です。いわゆる、家庭が崩壊しているんですね。

エンディングも特に救いはないんですけど、この映画のどこがいいの?と言われたら私個人的には、 

恋愛の醍醐味をうまく表現しているから

 と答えます。恋愛って多幸感を感じたり興奮したり気持ちが良いことばかりじゃなくて、、思い通りにならなかったり、嫉妬したり、障害があったり、不満が募ったり、裏切られたり、すれ違ったり色んなことがあると思うんですけど、当事者は大変でしょうが、それも含めて恋愛の醍醐味というものです。
 登場人物に同情して一喜一憂しながらこうして映画として側から、アカデミー賞主演女優賞の受賞歴がある圧倒的な演技力のケイト・ウィンスレットが、不倫に狂う女優崩れを演じているのを見るのは味わい深いです。

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ジニー・ラネル(ケイト・ウィンスレット)
 放火癖のある息子を連れて遊園地の回転木馬の管理人ハンプティと再婚した、腰回りや二の腕の肉付きと、下がり気味の胸に貫禄がある年増の美人。
 遊園地の飲食店でウェイトレスをしているが自分はそれ以上の存在だと考えており、今の生活を脱して女優として返り咲き成功することを夢見ている。

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ミッキー・ルービン(ジャスティン・ティンバーレイク)
 狂言回しで登場人物、夏の間だけコニーアイランドのビーチのライフガードの仕事をしにきた劇作家を志望する大学生。
 世界を旅した後にニューヨーク大学へ進学し演劇の勉強しており、人妻との恋は初めてじゃないらしい。
 浜辺に現れたジニーがセクシーだったので歩道橋の陰で関係を持ち、不幸な結婚をして愛に飢えたジニーとの関係を深めるが、キャロライナと出会いキャロライナに心惹かれていく。

キャロライナ(ジュノー・テンプル)
 回転木馬の管理人ハンプティと亡くなった前妻の娘。
 男を選べるほどの美人だが、ハンプティの勧める真面目な男は退屈で冴えないので、ギャングのイタリア人フランクと結婚した。
 フランクと口論が絶えなくなり別れたところをFBIに「協力しないと禁錮5年」にすると言われ、内情を喋りすぎて命を狙われハンプティとジニーの住む遊園地に身を寄せる。
 ジニーの働く遊園地の飲食店でウェイトレスをしながら夜学に通い英語の教師を目指す。
 ミッキーに出会い、ミッキーと惹かれあいジニーに恋愛の相談をしたことからジニーの嫉妬が爆発する。ジニーとミッキーの不倫関係は知らなかった。

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ハンプティ・ラネル(ジム・べルーシ)
 ジニーの再婚相手。キャロライナの父。
 酒癖が悪くジニーに禁酒されている。ジニーに対して乱暴なところもあるが、それなりにジニーを愛しており、野球や釣りなど自分の趣味に誘おうとするが断られ続けている。
 キャロライナを許し再出発を助けようとする。

おすすめの映画です。



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