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クィア男性である僕が、ドラマ『永遠の昨日』の沼に落ちた話。

終わった…。ついに終わってしまった…。この秋狂ったように見続けていたドラマ『永遠の昨日』が…。

最終回を視聴し終えた直後にこの記事を書き始めています。はじめまして、ふみちんと申します。
初めての記事なので簡単な自己紹介を。普段僕はドラマオタクでして、1クールで大体10本ぐらいのドラマを見て、Twitterに感想を書いています。といってもあまり自分には共有欲が無くて、その感想も気が向けばですし、語彙力と文章力の無さにあまりツイートをすることもなく、フォロワーさんも全然いないアカウントです。
僕は面白いなと感じる作品があると、ただ「感動した〜」とか「面白い!」というような簡単な言葉ではなく、何がどう良いのかを色々と言葉に尽くしたい人で。頭の中で感想をこねくり回しているうちに何が言いたかったのかわからなくなって、でも割と自分の中では満足して結局書かない…という。なのでこの記事も読みにくい点多々あると思いますが、予めご了承ください。
あ、後少し重要なこととして、タイトルにもある通り、僕はクィア男性です。

クィアは性的マイノリティの総称としても用いられます(LGBTや性的マイノリティの代わりにクィアと言っても、問題ありません)

アウト・ジャパン

クィアとはいわゆるLGBTQ+を総称する言葉です。僕の場合、性的指向は大方男性に向いているんだろうなと感じつつもまだ定かではなく、それゆえに"ゲイ"という断定的で強い言葉を使うのに抵抗があるために、こちらの表現を使っています。ただまぁ大体ゲイと変わりはないので、ややこしい表現はまどろっこしいなと感じる人はゲイと読み替えていただいても問題はありません。要するに僕のわがままなので。

さて、前置きが長くなってしまったのでこの辺りで本題に。
僕が文章力の無さも何もかもすっ飛ばしてこんなnoteなんてものを書こうと思ったわけ、それはついに最終回を迎えた、MBS系ドラマシャワー『永遠の昨日』について語りたいことがぶわーっと噴き出しているからです。

最初はフォローしている方がRTしたドラマ公式のツイートがきっかけでした。

『おっさんずラブ』の爆発的なヒットから始まった空前のBLブーム。毎クール最低でも1本はBLドラマが制作される昨今、僕もご多分に漏れずBLドラマを観ることが好きで、丁度2年前には『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』にどハマりし、初めて連続ドラマの円盤を買うところまで行きました。

ですが、そんな僕も全てのBLドラマを観ている訳ではありません。というのも、当事者から観るとBLドラマはいささかファンタジーっ気が強すぎて、穿った目で観てしまうことが多いからです。例えばよくありがちな話として、イケメンが何故か自分に熱烈にアプローチをしてきて、あれよあれよという間に付き合ってしまう…、みたいなの。もちろん細かな心の揺らぎはきちんと描写されるんだろうけど、やはり当事者としては「そんな人前ではゲイバレするのでは!?」「カミングアウトも無しにいきなり告白!?」「これアウティングされる可能性とか考えてないのかな!?」と色々雑念が入ってしまうんです。(『チェリまほ』の場合は告白までを時間をかけて描いてくれたのでどハマりできた)

なので、予告やあらすじを観てなんとなくこれは良さそうだなと思ったものを観るというスタンスで、『永遠の昨日』もTLに流れてたしと割と軽い気持ちで見始めたのでした。
1話2話と、儚さを感じる風合いと繊細な描写は気に入っていましたが、特にハマるということもなく。週に一回観ればそれでいいや、といった感じでした。

しかし、問題の3話。

そこであっという間に沼へと突き落とされ(風の噂では3話沼落ち勢が多いらしい)、狂ったようにTVerの見逃し配信を回す日々が始まりました。
金曜日にTVerで最新回を観、その後も見逃し配信の1週間の間毎日のように見続け、木曜日の深夜に見納めをし、また次の日には最新回を…。4話の放送後には原作本も買い、ドラマの進度に合わせてちびちびと読み進めました。

しかも、僕にはこうなると思わずやってしまう癖があるんです。それは、

6話のラストシーン。著作権的なのが怖いので予告に出てる範囲内。

全文書き起こし。
2年前、『チェリまほ』の最終回を観た後、なんとかこの感動を形に残しておきたい!と考えた時に、深夜に書き起こし大会をしたことがあったのですが、その時と全く同じく3話から脚本形式で全部書き起こしています。(自分で言ってて気持ち悪い。でも後悔はしていない)
そんなこんなをしている内に段々と台詞を覚え始め、もはや今特技は何ですか?と聞かれたら「脳内で1人永遠の昨日ができることです」と答えられるぐらいのクソオタクに成長しました。

↑事故現場のロケ地を探そうとしたの図


では、何故こんなにも『永遠の昨日』にハマったのか。それは、雑念が無い上にとてもリアルを描いていると感じたからです。
僕が沼落ちしたきっかけである3話に、満のこんな台詞がありました。

なんだ、そうか。俺は男を好きになる男だったのか。そして、浩一をそういう対象として見ていると分かったら、すごく落ち込んだ。屈託の無い浩一への罪悪感、というか。

ドラマ『永遠の昨日』3話

原作にもあるこの台詞。今までBLドラマで描かれてきた葛藤というのはいわゆる「男性に惹かれている自分」や「相手の気持ちを男だからとむげにしているのでは」というものが主だったように感じます。ですがこのドラマは今まであまり描かれてこなかった「ストレートの人に恋をする罪悪感」というのを描いているんです。
恐らくこの感情はストレートの人に恋をしたことがある同性愛者の方なら割と抱いたことのある感情なのかなと思います。相手が抱いている"友情"と違う、しかも男女間ならともかく同性間では前提として無いと思われている"恋"という感情を向けてしまっている。相手はそんなつもりで一緒にいるんじゃないし、迷惑、最悪の場合は気持ち悪いと思われていないだろうか? かく言う僕もそうだったので、この台詞を聞いた時にはびっくりしました。こんな感情を知っていたのか、と。もっと言うと、原作者の榎田先生はもしかしたら当事者なんじゃないか?と思うほどに。

またその後の、雨の中、満が放った「今日はパスって言われるのが、俺は怖くて」という台詞もかなり印象的でした。少し自分語りになってしまいますが、それこそ高校生の頃、僕が密かに好きだった人が釣りが趣味で。自分にとっては初めてのことだったので楽しくもあったのですが、少し無理をして釣具屋での買い物に何時間も付き合ったり、朝早くからの釣りに付き合ったりしていたことを思い出しました。
恋人としての1番になれないなら、せめて友達としての1番になりたい。満の心に自分と似たようなものを感じて、さらに沼は深まっていきました。(今原作読み返してたら満の心情的にはちょっと違ったかもです…)

しかも、そこまで想いを拗らせた2人がお互いの想いをぶつけ合うあのテントでのシーンがあったから、結局両想いであったわけですが、前述したような「やっぱりフィクションってチョロいな〜」といった感じの雑念も無く、2人の関係性に説得力が生まれていたように感じます。


こんな風に沼に落ちた僕。前述したような日々が始まったわけですが、恐らくちょっと自分とリンクしたぐらいではここまでハマることは無かったでしょう。そうなったのは、何を隠そう監督のディレクションと役者さんたちのお芝居の賜物です。このドラマはほとんどが初見の俳優さんで、変な先入観が無かったのも良かったかもしれません。

井上想良さんは喪失の苦しみと怒り、そしてふとした時に訪れる貴重な幸せを大袈裟ではなく細かなニュアンスで表現されていて。初回、満のモノローグで物語が進んでいくのを見た時に「あぁ、製作陣はこの俳優さんを心から信頼して満という役を託しているんだな」と素直に思いました。

浩一らしい無邪気さを見せたかと思えば、後半にかけて少しずつ近づいてくるリミットへの怯えや寂しさ、そして儚さを見事に体現されていた小宮璃央さん。特に後半の寂しさを湛えた笑顔が本当に素晴らしく、5話の浩一の家でのシーンや7話の病院でのシーン、極め付けは最終話のラストシーン!にそれが顕著に表れていた気がします。(どうでもいいのですが、僕実は同い年なんですよね…。信じられない)

この2人の関係性の好きな所は、片方が落ちている時には自然ともう片方が引っ張り上げてくれる所。4話では気持ち悪いのではないかと不安がる浩一を満が励まし、6話では喪失の恐怖を感じた満を浩一が抱きしめる。そして最終話では朝には消えてしまう浩一に満がかける「決して忘れない」の言葉。恩着せがましくなく純粋に、お互いがお互いを補い合える関係性がたまらなく好きで、お2人の演技の空気感に何度も心を奪われました。
また、お互いを理解しあっているんだなというのが分かって特にお気に入りなのが7話、妹を抱いた浩一が「おいでよ、みっちゃん」と声をかけるも満は首を小さく横に振り、そんな満に浩一が微笑みだけ返すシーン。数秒の間に言葉の要らない2人の繋がりが全て詰まっていた気がして大好きなシーンです。

脇を固めるキャスト陣も素晴らしかったですよね。オカルト的な部分とリアルの橋渡しとなるような難しい役どころを演じられていた大友花恋さんは、不思議さは出しつつも地に足のついた演技が見事でしたし、委員長役の新原泰佑さんも元のイケメン度を完全に封印したビジュアルでじたばたと走るという、見かけたら思わず委員長!と声をかけたくなってしまいそうな出立ちが印象的でした。(ちなみに余談ですが何故委員長には役名が無いのかについて、僕は「彼は何回生まれ変わっても委員長って呼ばれてる気がするから」だと思っています)
あと、個人的にすごく些細なシーンでのお気に入りがあるのですが、それが4話、鳴海唯さん演じる橋本が浩一に対して「全然死体に見えないぜ」と言ってグッと親指を立てるシーン。そのシーンが、あぁ〜〜こういう女子いた〜〜!!!っていう過去の記憶を体現しすぎていて、一瞬でこの女優さんすごい…となってしまいました。
複雑な事情があっても愛ある暖かい眼差しをくれた両家の家族や、生と死を見つめる上でのキーパーソンであった小河先生と玉置先生など、どのキャストさんも素晴らしくて、挙げればキリがありません。

そして、特筆すべきなのは小林啓一監督の素晴らしさ。不勉強ながら、小林監督の作品をこれまで観たことは無かったのですが、もしかしたらこのドラマの分岐点は小林監督を起用できるか否かだったのではないかと思うほどに良かったです。
井上さんと小宮さんがインタビューでよく話されていたのが、監督のディレクションについて。特に小宮さんはお芝居に対する今までの姿勢が変わったとまでおっしゃっていて。台詞回しや動きにも感情をベースにした細かい提案があったようで、ネクストブレイクと言われるような若手俳優さんのお芝居をここまで引き出せたのは小林監督の他にいなかったのではないかなと。
このドラマが他のBLドラマと一線を画す点の一つとして、そしてかなり重要なシーンとして、満と浩一の大胆なベッドシーンがあると思うのですが、彼らはただ単純な欲望だけで繋がろうとしているのではないので、迫るリミットへの焦燥感や一度きりの尊さを孕んだシーンでなければならない。単にイケメン俳優のサービスショットで終わってはいけないこのシーンを、絵作りと動きと温度感とが全て儚い美しさを持ったとても素晴らしいシーンに仕上げてくださいました。(そしてこの少なからず抵抗がありそうなシーンをあそこまで演じ上げて頂いたお2人にも感謝…!)
爽やかなだけではなく、ジメジメと少し湿度を感じるような画の質感もドラマ畑ではない映画畑の監督さんならではでした。きっとドラマ畑の監督さんが撮られていたら大きく変わっていたのだろうなと思っています。

主題歌の秀逸さについても話をしたい…!このドラマの主題歌といえばOP主題歌であるAyumu Imazuさんの『Sunshower』、そしてED主題歌である久保あおいさんの『遠い夏の日』。どちらもドラマにぴったりのミディアム/バラードの曲調の中に、「過ぎた昨日」や「左隣」などのキーワードが散りばめられ、ドラマの世界観をそのまま楽曲に立ち上がらせたようでした。
そして、僕がびっくりしたのは2つの楽曲が描く時間軸の違い。僕が思うに『Sunshower』は浩一が消えてしまった後、『遠い夏の日』は浩一が消えていくまでのあの数日間を歌ったものではないかと思うのです。いなくなった隣の空白に、それこそ「過ぎた昨日」に、あなたに会いたいと想いを叫ぶ『Sunshower』と、まだ感じる隣の温もりを離したくないのに、夜が終われば君は空へ馳せる存在になってしまうと歌う『遠い夏の日』。
主題歌は文字通り物語の主題になる曲ですが、きっとアーティストさん自身が歌いたい題材やドラマとは関係ない楽曲としての売れ筋があるのでしょう、ドラマ関係なく聴いても共感が持てるような普遍的な曲になってしまうことも多い中、ここまでドラマに寄り添った楽曲が2曲も揃うなんて…。ドラマを観れば曲の解像度が上がり、またその逆も然りという主題歌の醍醐味を堪能させて頂きました

な、長い…!自分で書いてても分かるこの長さ…!
こんなオタクの駄文をここまで読んでいただいた方はいるのでしょうか。いらしたら本当に感謝申し上げたいほどです。
つい先日最終回を迎え、前述した通り原作をドラマの進度に合わせて読んでいた僕は、2人が何気なく交わしているように見えた「1番」という言葉の重さを知らなかったので、(そうでなくても)もう一度1話から見返したい気分でいっぱいなんですが、残念ながらHuluに入っておらず…。Huluへ課金するか円盤まで待つか…という苦渋の選択を強いられている所です。でも多分課金する(蘇るTSUTAYAプレミアムに課金した2年前の記憶)。
数ヶ月前までは想像もしていなかった日々は、何度も言うようですが、素晴らしい原作を作り上げてくださった榎田先生、井上さん小宮さんを始めとしたキャストの皆さん、小林監督、そして尽力してくださった数々のスタッフさん方のおかげです。この場を借りてお礼を申し上げます。
本っ当に素晴らしいドラマをありがとうございました!!!

そろそろ書いているnoteのページが重くなってきた所なので失礼します。最後に一言だけ。

永遠の昨日、1番愛してるよ。☔️⛺️💙















あ、すみませんやっぱチェリまほと比べるの殺生なので、同着一位はダメですか?

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