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「素粒子」 ミシェル・ウェルベック

野崎歓 訳  ちくま文庫  筑摩書房

「素粒子」は40代のもう一つの何か…自分の年と感覚とのギャップとでもいうもの…を扱っている。それも来るべき来世紀をにらんだ作品。
(2008 08/25)

柩の観察


ソレリスやらミック・ジャガーやらも登場し、残酷な犯罪の描写でやるせなくなったり、物語の後半部分では主人公達(異父兄弟)の知り合いが次々と亡くなっていく。過去の英雄的な死の描写はいろいろと文学作品のテーマとなっているが、現代の半ば管理された人の死、葬儀、などなど、結構この作品ではしっつこく描いている。「ここまで描写しつくした作品はない」と言い切れるほどの読書量は自分にはないけれど、作者が意識的にそういうシーンを重ねていることは確か。
そんな中、一番印象的なのが、柩の描写。なんか死んでいく人々と対等なくらい細かく。
さて、そんな「素粒子」もあとはエピローグのみ。遂に到達した死のない?世界とはどのようなものか…を確認して…
(2008 09/04)

来年に期待


昨日で「素粒子」を読み終えた。全く自分にはわからない(ヒルベルト空間って何?)現代物理・生物学の言葉や論理が思い出したように飛び交う小説というのは、カルヴィーノの「柔らかい月」等を思い出す。あと、自分が今まで読んだ中でテーマ的に近いのは「順列都市」。人間が造った生命体。ま、「素粒子」の方はエピローグの片隅にあるだけなのだが(とここには書いてあるけど「順列都市」読んでない気がする)。

一方、科学者じゃない方、文学者崩れの教師、ブリュノは最後になるとほとんど登場しない、ミレニアムのところにちょこっと。まるで霧にかすんでいくかのよう…文学のその後?
そして、科学者の方ジェルジンスキが、性差を超え、生死を超え、個人も競争も自由も超えた、生命体の基礎論理発表したのが2009年だって…
どうしよう?
(2008 09/05)

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