見出し画像

広く守ることの意味

20/21 プレミアリーグ 第34節
マンチェスター U vs リバプール

~リバプールに見た、ブロック守備~

 今回は、先日に行われたプレミアリーグ第34節のマンチェスターユナイテッドvsリバプールにて、リバプールのできるだけ広く守るというブロック守備の局面を分析していきます。
 そして最後には、広く守ることの意味をメリットとデメリットを踏まえながら考察していきます。


スタメン(home : マンチェスター U)

画像1

(away : リバプール)

画像2

結果 : マンチェスター U 2 - 4 リバプール
( 前半 1 - 2、後半 1 - 2 )


リバプールの守備
(ブロック守備)

① 陣形
 リバプールは自陣でのブロック守備時、下図のように「4-5-1」のブロックを形成していた。
 ここで、ブロックの横の幅はペナルティエリアの幅あるいはそれよりも広く、縦の幅は約15m~20mだった。
 また、守備の基準点はボールと味方で、ラインの位置関係を崩すことのない、いわゆるゾーンディフェンスを行っていた。

画像4

画像3


② 中央
 まず、中央のエリアでは(守備ブロックの前方にボールがある時)、ボールを外回りにさせるためにMFのチアゴ、ワイナルドゥム、ファビーニョがライン間に立つ相手へのパスコースを消すように立ち、さらにCFのフィルミーノがボールホルダーに対して軽くプレッシャーをかけストレスを与えていた。

画像6

画像5

 また、DFとMFのライン間に縦パスが入った時は、下図のようにボールの受け手に対して主にCBのR・ウィリアムズあるいはN・フィリップスがDFラインから飛び出して対応し、同時にMFラインを構成する選手と共に挟み込んでいた。

画像7

画像8


③ サイド
 サイドのエリアでは、大外でボールを受けた相手(SBが多い)に対してMFラインの外側に立つウイングのサラー(右)、ジョッタ(左)が主にアプローチしていた。ここでアプローチの仕方としては、ボールを奪うというよりもストレスをかける程度にアプローチをしていた。またこのとき、SBのアーノルド(右)、ロバートソン(左)は相手SH(ラッシュフォード、ポグバ)をマークしていた。
 さらに、全体としてはお互いの距離感を保ちながらボールサイドにスライドする。

(右サイド)

画像9

画像10

(左サイド)

画像11

画像12


④ ブロック守備→プレッシング
 一旦守備ブロックを構えたのち、ボールホルダーへ連続してプレッシャーをかけに出てプレッシングに移行するというシーンも何度か見られた。
 具体的には、下図のようにWGのサラー、マネ(後半途中出場)がボールホルダーに対して外切りでプレッシャーをかけ、これを連続して行う。さらに、同時にMFの選手やCFのフィルミーノが中央のエリアで相手を捕まえながら全体を徐々に押し上げることで相手にボールを下げさせ、プレッシングの局面へと移行する。

画像13

画像14

画像15

画像16


 この試合でのリバプールのブロック守備時の特徴は、ブロックの横と縦の幅が一般的なチームのそれとくらべて広いことだった。一般的にサッカーは「広く攻め、狭く守る」ことが良いとされているなかで、「広く守る」ことにどんな意味があるのか。
 「広く守る」メリットは以下の2点が考えられる。
 1つ目は、攻撃側の広い陣形に対して守備側も広いブロックを形成することで、それぞれが相手との距離が近くなり、ボールホルダーに対して即座に寄せることができる点である。
 2つ目は、ボールを奪ったポジティブトランジション時に予め広い配置となっているため、カウンターを効果的に撃てるという点である。特にリバプールの場合、サラーやマネ、ジョッタなどカウンターに適した選手をサイドおくため、サイドからのカウンターをより効果的に行うことができる。
 一方、広い守備ブロックを形成することのデメリットとしては、相手との距離が近くなるのに対してブロック内のスペースが生まれやすいという点が挙げられる。この試合でも、DFとMFのライン間で前を向かれてしまうシーンも多々みられた。そのため、広い守備ブロックを形成する際は、ライン間への縦パスに対するCBの対応能力やMFのプレスバックなどの能力は非常に重要となる。
 また、リバプールはリードした前半終了間際や試合終盤などには、DFラインを下げ、よりコンパクトなブロックを形成することもあった。このように、試合の状況や時間帯に応じて戦術の構造を変えるのは重要なことで、選手全員がその状況を同じように読み取って判断し、同じように実行することが求められると思う。リバプールはその点において見事だったと感じた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?