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アトレティコとバルセロナの攻撃と守備

20/21 ラ・リーガ 第10節
アトレティコ マドリード vs
バルセロナ

~アトレティコvsバルセロナの面白かった局面を分析します~

 今回は、先日行われたラ・リーガ第10節のアトレティコ・マドリードvsバルセロナにて、個人的に面白いと思った両チームの様々な局面について分析していきます。


スタメン(home : アトレティコ)

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(away : バルセロナ)

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結果 : アトレティコ 1 - 0 バルセロナ
( 前半 1 - 0、後半 0 - 0 )


アトレティコの守備
(ブロック守備)

① 陣形
 アトレティコは自陣でのブロック守備時、下図のように左SHのカラスコがDFラインの外側に下り「5-3-2」のブロックを形成する
 ここで、ブロックの深さは約10~15mで、幅はペナルティエリアほど(あるいは狭い)に設定する。
 また、守備の基準点はボールと味方で、味方との距離をコンパクトに保ちながらゾーンディフェンスを行う。

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② 中央
 中央のエリア(ハーフスペースよりも内側)では、「MFライン(またはFWライン)の選手は、ブロック内へのパスコースを消しボールを外回りにさせる」というプレー原則が設定されていた。
 具体的なシーンとして、下図のようにMFラインのサウール、ジョレンテがライン間のハーフスペースに立つ相手へのパスコースを消すようにボールホルダーの前に立ち、ボールをサイドに誘導していた。

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③ サイド
 サイドのエリアでは、大外で受けたボールホルダーに対してDFラインの外側に立つ左SHのカラスコと右SBのトリッピアーがアプローチする。
 このとき、ブロックをコンパクトに保ちながらボールサイドにスライドさせ、ニアゾーンをあらかじめ左SBのエルモソと右CBのサビッチが埋めていた。

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④ ライン間
 DFとMFのライン間にボールが入った時は、下図のようにDFラインの1枚(特にヒメネス、サビッチ、エルモソ)がDFラインから飛び出してボールの受け手に対してアンティチポを行う。
※アンティチポとは、パスの受け手を背後からマークし、その足下に入って来る縦パスを身体を前に入れて(あるいは足を出して)奪うプレー

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バルセロナの攻撃
(ポジショナルな攻撃)

① 陣形とプレー展開
 バルセロナはポジショナルな攻撃時、下図のような配置となる。(数字であらわすなら「2-3-5」)
 具体的には、FWラインの大外に左SBのジョルディ・アルバと右SHのデンベレが立ち、右SBのセルジ・ロベルトはMFラインの内側(ハーフスペース)に立つ。
 プレー展開としては、幅を使ってポゼッションを行うことで相手の守備組織を動かし、生じたスペースを使って効果的に攻撃する。

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② ポジションチェンジ
 ポゼッションを行う中で、FWラインからMFラインに下りてくるメッシに対して入れ替わるようにボランチのピアニッチまたはデ・ヨングがFWラインへ上がり、ポジションチェンジしていた。

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③ サイド
 この試合で見られたサイドのエリアでの攻撃の仕方について左右のサイドで分けて分析する。
 まず右サイドでは、下図のように右SHのデンベレが常に大外でボールを受けることにより、相手と1対1の状況を頻繁に作り出しデンベレの質的優位(スピードとドリブルテクニック)で突破を試みていた。

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 一方、左サイドでは、下図のように大外に立つSBのジョルディ・アルバと斜め後方に降りたメッシのワンツー(浮き球など)で相手DFラインの背後を頻繁に狙っていた。

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④ ライン間
 ライン間では、狭いエリアでのプレーを得意とするメッシが頻繁に下りてきてボールを引き出していた。

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バルセロナの
ネガティブトランジション
(敵陣での攻→守)

① ゲーゲンプレッシング
 バルセロナは敵陣でのネガティブトランジション時、下図のようにボールを失ったら即座にボール周辺のエリアに密集してゲーゲンプレッシングを行い相手のプレーの自由度を奪う。

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 このとき、下図のようにボールエリアから遠いサイドのSB(左ジョルディ・アルバ / 右セルジ・ロベルト)は逆サイド後方のエリアを予防的カバーリングする。また、CBのピケ、ラングレは後方中央のエリアをカバーしながら相手FWを予防的マーキングする。

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 バルセロナはポジショナルな攻撃時、右サイドにはスピードとドリブルの突破力のあるデンベレを大外に置き、左サイドには大外にSBのジョルディ・アルバを置いていた。おそらく狙いとしては、右サイドではデンベレの質的優位を活かして勝負し、左サイドではジョルディ・アルバとメッシやペドリのコンビネーションにより突破することだったと思う。
 一方、アトレティコは左SHのカラスコをDFラインに配置し、DFラインをあらかじめ5枚とすることでバルセロナの幅を使った攻撃に上手く対応出来ていた。また、カラスコをDFラインに配置した理由としては、大外に立つデンベレに即座に対応できるようにするためでもあったと思った。
 特に、デンベレ対カラスコの1vs1の攻防は見ていて非常に面白かった。



バルセロナの守備
(ブロック守備)

① 陣形
 バルセロナは自陣でのブロック守備時、下図のようにDFとMFで「4-4」(またはグリーズマンがトップ下の位置に立ち「4-4-1」)のブロックを形成する。
 ここで、ブロックの深さは約5~10mで、幅はペナルティエリアの幅よりも狭く設定する。
 また、守備の基準点はボールと敵で、コンパクトなブロックを形成したのち、ラインの維持よりもボールホルダーへのアプローチを優先とした守備を行う。

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② サイド
 サイドのエリアでは、大外のボールホルダーに対して基本的にSHのペドリ(左)、デンベレ(右)がアプローチする。
 このとき、全体のコンパクトネスを保ちながらボールサイドにスライドし、ボール周辺のエリアでマンツーマンとなる。

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③ ミドルプレスへの移行
 また、相手がバックパスで最終ラインまでボールを戻した時は、これをスイッチに下図のように全体を一気に押し上げる。このとき、ボールホルダーに対して必ず1枚(下図のシーンではグリーズマン)が寄せ、更にボランチのピアニッチとデ・ヨングは中央を固めるため、2枚の相手ボランチ(コケ、サウール)を捕まえ後方からマークしていた。
 その後、全体を押し上げながら、陣形を再びコンパクトな「4-4-2」に構え、ミドルプレスに移行する。

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アトレティコの攻撃
(ポジショナルな攻撃)

① 陣形とプレー展開
 アトレティコはポジショナルな攻撃時、陣形としては下図のような配置となる。
 具体的には、左SBのエルモソがDFラインに残りCBのヒメネス、サビッチと共に3バックのようになる。また、前線のFWラインの大外には左SHのカラスコと右SBのトリッピアーが立ち、相手のライン間にジョアン・フェリックス、コレア、マルコス・ジョレンテが立つ(ジョアン・フェリックスが左サイドの大外に立つこともあった)。
 プレー展開としては、ボランチのコケ、サウールを含めた後方の5枚でボール保持をしながら積極的に前線の5枚へボールを配球し、その後、片一方のサイドに全体が密集して攻撃を行っていた。

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② サイド
 サイドのエリアでは、下図のように全体がボールサイドに密集し、ボール周辺に人数をかけてテンポよくボールを動かすことで相手の守備組織を崩すことを狙っていた。
 ここで、ボールサイドとは逆の左SHのカラスコ / 右SBのトリッピアーは、逆サイドでアイソート(孤立)していた。また、ボールサイドとは逆側のDFラインに立つエルモソ / サビッチはネガティブトランジション時の被カウンターに備え、あらかじめ攻め残っているメッシをマークしていた。

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 また、特に右サイドではマルコス・ジョレンテがハーフスペースの裏へランニングし、大外のトリッピアーからの斜めのスルーパスを受けるというシーンが多く見られた。

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 アトレティコの前線には、ジョアン・フェリックスやコレアなど近くに味方がいることで能力が発揮されるような選手が多くいることから、ポジショナルな攻撃時にボールサイドに密集して攻撃を行う方法を採用しているように思った。また、ボール周辺に人数をかけることで仮にボールを奪われたとしても即座にゲーゲンプレッシングに移行できるというのも理由の1つだと思う。
 一方、バルセロナはブロック守備時、ラインの維持よりもボールホルダーへアプローチすることを優先とした守備を行っていた。そのため、アトレティコが後方にボールを下げた際にはボールホルダーへのアプローチを連続させながら全体を一気に押し上げ、ミドルプレスに移行するシーンが何度も見られた。
 しかしながら、全体を押し上げる際にスペースが生じやすいDFとMFのライン間やDFラインの裏をアトレティコが常に狙っていて、非常に面白い攻防だった。

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