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ライプツィヒ徹底分析 ポジティブトランジション編(アトレティコの有効な対策を考える)

19/20 UEFA チャンピオンズリーグ
ベスト8
アトレティコ マドリード vs 
ライプツィヒ
Preview

~ライプツィヒのポジティブトランジションに対する有効な対策~

 今回は、ライプツィヒ徹底分析・ポジティブトランジション編です。
 ライプツィヒのポジティブトランジション(守備から攻撃)を分析し、それに対するアトレティコの有効なネガティブトランジション(攻撃から守備)の戦術を考察していきます。
 分析方法として、自陣に引いたブロック守備時にボールを奪った後の「ロングトランジション」と、プレッシング時にボールを奪った後の「ショートトランジション」に分けて分析します。
 今回もこれまでと同様に、19/20UEFAチャンピオンズリーグベスト16・1legのトッテナムvsライプツィヒから分析しました。

 また、これまで紹介してきた「ライプツィヒ徹底分析・攻撃編①」、「ライプツィヒ徹底分析・攻撃編②」、「ライプツィヒ徹底分析・守備編①」、「ライプツィヒ徹底分析・守備編②」も合わせてご覧頂くと、より8月14日を楽しめると思います。


スタメン(home : トッテナム)

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(away : ライプツィヒ)

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ライプツィヒの分析
(ポジティブトランジション)

ロングトランジション】 
 まずは、ライプツィヒが自陣でのブロック守備時にボールを奪った後のポジティブトランジション(ロングトランジション)について分析する。

① プレー展開
 ロングトランジション時のプレー展開としては、ボールを奪うとすぐに前方のスペースに向かって縦にボールを運ぼうとする。いわゆるカウンターを行う。


② パスを送る基準点
 ボール奪取後、パスを送る基準点となる選手はウイング。
 このとき、基準点となるウイングはサイドに流れてボールを受ける。そして、ウイングは足元でボール受け、少ないタッチ数(ワンツーなど)で相手の背後を取ることが多い。

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③ カウンターエリア
 カウンターは基本的にサイドで行い、原則としてボール奪取したサイドでカウンターを完結させる。
 しかしながら、下図のように相手の密集によりワンサイドでカウンターができない場合は、逆サイドに展開し、逆サイドのウイングが大外に流れて、そのサイドでカウンターを行う。

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ショートトランジション】 
 次に、ライプツィヒが敵陣でのプレッシング時にボールを奪った後のポジティブトランジション(ショートトランジション)について分析する。

① プレー展開
 ショートトランジション時のプレー展開としては、ボールを奪ったら最短距離、最短時間、最小パス本数で敵ゴールに迫る。つまり、ショートカウンターを行う。


② パスを送る基準点
 ボール奪取後、パスを送る基準点は前線のFW3枚。

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③ カウンターエリア
 原則として、中央のエリア(ハーフスペースを含む)でカウンターを完結させる。

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アトレティコの有効な対策
(ネガティブトランジション)

 ここでも、敵陣でのポジショナルな攻撃時にボールを奪われた局面と、自陣でのビルドアップ時にボールを奪われた局面の2つに分けて考察する。

敵陣でのネガティブトランジション

① ポジショナルな攻撃時
 まず、ボールを奪われる前の敵陣でのポジショナルな攻撃時は、原則ワンサイド攻撃(片一方のサイドで攻撃を完結させる)を行うべきである。
 このとき、下図のような予防的マーキング予防的カバーリングを行う必要がある。具体的には、逆サイドのSBは後方に降り相手ウイングを予防的マーク、ボールとは逆サイドのボランチは相手CFを予防的マーク、そして、ボールサイドのボランチは、ライプツィヒのカウンターの基準点となりうるサイドのエリアを予防的カバーリングするべきである。

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② ネガティブトランジション時
 ボールを失った後、ライプツィヒはおそらくサイドに流れたウイングにボールを送るため、あらかじめ予防的カバーリングしていたボランチが寄せるのが最善である。

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 このとき、全体としては自陣方向にリトリートし、コンパクトな4-4-2で構える。
 そのため、寄せたボランチに与えるタスクとしては、ボールを奪うことではなく、相手のパスコースを消して相手の攻撃を送らせ、味方が陣形を整える時間を稼ぐといった役割が最適である。
 また、あらかじめ予防的マーキングをしていたボランチとSBは、ある程度までマークを継続することが必要になる。

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自陣でのネガティブトランジション

① ビルドアップ時
 
アトレティコは自陣でのビルドアップ時、下図のような配置で、CBまたはGKから前線の選手をターゲットにロングボールを送るダイレクトなビルドアップを行うべきである。これにより、ボール奪取されたとしても自陣ゴールよりも離れたエリアとなるため、すぐにリトリートしてゴール前にブロックを形成しやすくなる。

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② ネガティブトランジション時
 ビルドアップ時にボールを失った後は、少なくともDFの4枚+ボランチの2枚(DFの4枚+MFの4枚がベスト)が即座にリトリートし、ゴール前に非常にコンパクトなブロックを作ることを最優先とすべきである。
 このとき、相手のカウンターの基準点となる選手に対してはボランチが対応するべきである。

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 これは、あくまで相手の攻撃を遅らせることが目的であり、ライプツィヒはこの局面で中央からショートカウンターを行うことが予想されるため、中央にコンパクトなブロックをいかに早く形成できるかが鍵となる。

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 この局面(ポジティブトランジション対ネガティブトランジション)に関しては、相手の選手の特徴に大きく左右される局面でもあります。そのため、相手の個人戦術も分析する必要があるため、今回私が行った分析では全くの不十分です。
 しかしながら、今回は個人戦術以前の全体としてどう振る舞うべきか、どういうプレー原則を用いるべきかを考察しました。そのため、試合当日では特に個人単位(1vs1)を注意深く見るとより面白くなると思います。

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