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記憶力と生存戦略について


環境への適応に適した遺伝子の変異、現時点において生存している生物は、押し並べてこの適応戦略に成功してきた者たちである。
研究者は指摘する。
今後どのような環境の変化があるにせよ、この遺伝子変異を持たない者は、生存できないかもしれない、と。

驚異の記憶力を持つマミジロコガラ。
彼らは無数に隠したエサの場所をことごとく記憶しているという。
それは彼らの生存戦略として大いに役立っていると考えられるが、記事を書いている研究者のひとりは、この驚異的な記憶力がマミジロコガラにとって諸刃の刃として機能してしまう危険性に言及している。

つまりこういうことだ。
自身が隠したエサ場を絶対的に信じているために、たとえば突然の猛吹雪によって環境がすっかり変化してしまった場合、このマミジロコガラはそれでも同じ隠し場所に執着し続けてしまうことになる。
間違いなくそこにエサはあるからだ。
だが、それはけっして賢明な行動とは言えない。
貴重な体力を途方もなく無駄に消耗してしまう可能性があるためだ。
まるで人間における依存性のごとく、傍目も気にせず一直線に突っ込んでいく狂犬さながらである。

ここで、筆者が言いたいことを簡潔にまとめると。以下のごとくである。
長期的な記憶力を持つこと、それ自体は問題ない。
問題なのは、その記憶「だけ」を頼りに行動することだ。
具体的には、遠い過去に遊びに行った親戚の家を探しもとめる旅に出る行為とは、別の側面からみれば、彼には思い出を蘇らせるための手段が他になく、たとえば親族に連絡先を尋ねたり、ネットで現状を検索したり、といった現実的な手続きをすべて捨ててしまうことに他ならない。
遠い過去への旅の結果、行き着いた先が更地であった場合、それはそれで経験値(知)として誇れるかもしれないが、客観的な情報の質量としてはいずれも誇れるものではない。
したがって、いくら長期的な記憶力が優れていたとしても、現実的な生存戦略、あるいは目の前の課題に対するパフォーマンスの向上、我々がこれらを望む以上、他のツールを用いて多角的に対処することが、結果的にロストの少ない結果に到達できるものと考える。

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