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走れ、はしれ

ベッドから抜け出すと、ルームシューズを通してもびりびりと冷えが伝わり、心臓がきゅーんと音を立てて縮まるのが分かる気がする。

リクエストされていたおうどんはしっかり煮込んでくたくたに柔らかくなってる。準備万端。

3時間前までに消化の良いものを食べて大会に臨むんだって意気込んで。

寝ぼけまなこをこすりながらリビングに出てきたムスメをテーブルに着かせ、あったかいおうどんを食べながら天気予報を眺める。


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この冬一番の寒さと言われる日、中学生活最後の駅伝大会が開催される。クラス代表に選ばれたムスメは8人中4番目に走るらしい。学校から持って帰ったプリントには開始時間や場所の説明が載っていたけれど、案の定お母さんは来なくていいよと先に止められる。

そうね、寒さで倒れて先生たちが大騒ぎになっても大変だし、迷惑をかけるのもね

本当なら見てもらいたいであろう姿も、親の体調を気遣って無理をさせないあなたは、私よりもずっと強い心が育っている。

結局3年間お母さんは授業参観のリレーと1年生の体育大会でしかあなたの雄姿を見ることはできなかったね。

「足の運びがきれいだった」

「ラストスパートがすごくて置いていかれるって言ってましたよ」

「記録がこんなに伸びたっていう事実をどうしても認めたい」

「本当に走るのスキなんですね、ジョギングしてるとは知らなかった」

お友達のお母さんや夫、顧問の先生、担任の先生、目を輝かせ伝えてくれる言葉を映像として思い浮かべた。

敢えてアピールをしない、褒められたことも家ではあまり口にしない、親には見えない場所で日々成長を続けていくあなたを誇りに思っている。

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「なんでこういう日にこんなに寒いんだろう、私なんかしたっけ?」ちょいちょい試練を与えられるけど、普段からよく頑張ってる。

毎朝、大会に向けてジョギングをして、体力を落とさないように調整をして、受験に向けて追い込みが始まってもこのペースを崩さずにやってきたのは強い意志の表れじゃないかなってお母さんは思うんだ。

多分そろそろ走る順番が回ってくるね。

お母さんはあったかい家の中からぬくぬくしているけど、こころはあなたに向けて応援してる。


ケガしないように、3年間の想いと共に走り抜けて。





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