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未知との遭遇/金曜日夏季限定企画「洗濯連絡」2021.9.24/譜面合間日誌(平日)

今週はなかなかに得難い体験をしたのでそれを記そうと思います。

具体的に申しますと、非常に小規模公開されており、カルト的な人気を博しているとある映画を最終上映回で初めて鑑賞するというものである。
なかなかややこしく、分かりづらい表現で申し訳ないです。

我々が訪れる機会の多いシネマコンプレックス(一つの施設内に複数のスクリーンが存在するタイプの映画館)ではなかなか想像しにくいとは思うが、公開規模の少ない今回私が鑑賞した映画では、稀に拠点のような映画館が存在したりする。
今回鑑賞した映画には、そのような拠点となる映画館が存在した。

それが今回の舞台となる「シネマート新宿」である。
比較的映画好きであると自負している私ではあるが、シネマート新宿は今回が初めての来訪であった。

鑑賞する作品はこちらである。
『サイコ・ゴアマン』


あらすじは以下の通りである。

「名前は…サイコ・ゴアマン!略してPG」
望めばすべて叶うーー“あの頃”の夢が庭先で破茶滅茶に大暴走!
少女は残虐宇宙人を操り地球を救えるか!?
カナダが誇る天才過激映像集団《アストロン6》の一人であり、『パシフィック・リム』『バイオハザードV リトリビューション』に特殊効果としても参加、『マンボーグ』『ザ・ヴォイド 変異世界』の単独監督作を持つスティーヴン・コスタンスキ監督最新作。『E.T.』『グーニーズ』などを彷彿とさせ、『死霊のはらわた』『マスターズ/超空の覇者』テイストも合わせ持ち、真面目に、誠実に、魂込めて作られた、80年代的懐かしさ満載のSFゴアスプラッターヒーローアドベンチャーがここに誕生した。
そのインパクト大なビジュアルと映像が日本でも話題となっており、劇場公開が待望されていた本作。個性豊かな宇宙怪人が多数登場、特撮ファンもうなること必至。子どもがすべてを意のままに操り非日常を冒険するという、誰もが一度は夢見たテーマを、懐かしさあふれるB級テイストで包み、鑑賞後は忘れかけていた“大切なもの”がふたたび芽生えるS級の愛すべき魅力に溢れた傑作。全ての災厄を吹き飛ばす勢いで大注目!
2021年、日本の夏はサイコ・ゴアマンの夏となる!
いくぞPG!すごいぞPG!
http://pg-jp.comより引用)

なんのことやらさっぱりである…。

気を取り直して、予告編を観てみよう。

なんのとこやらさっぱりである…。

さて、本編を観ることにしよう。
上映開始時間10分前に映画館に到着する。
するとなにやらスクリーンの外に人が集まっている。
約8割の観客がサイコ・ゴアマンのTシャツを着用し、約6割の観客が売店で販売されている「ミミのうつり気 おてんばソーダ」を持っている。

私はこの時点で作品を未見なので、何がどう「うつり気」で「おてんば」で「ソーダ」なのか見当もつかなかった。

どうやら異世界に迷い込んでしまったようだ。

周りの装備の違いに戸惑っていると劇場のスタッフらしい人物がアナウンスを始めた。
「では、そろそろ始めますね」

一体何が始まるというのだ。
上映開始まではまだ時間があるはずである。

すると会場の外にある謎のオブジェから液体が放出される儀式が開始された。

なんのとこやらさっぱりである…。
周囲の観客からは笑みが溢れ皆非常に満足そうな顔をしている。

この時点で(本当はもっと以前から察してはいたが)おそらくこの会場で『サイコ・ゴアマン』を未見なのは99%の確率で私だけなのだろうということに気がついた。

アナウンスによるとこの儀式は上映開始時間と終映後にも行われるらしい。3ステである。

そして1ステ目の儀式が終わり、入場の時間となった。すると入場の際に何かを手渡された。
封筒である。

これはなんとなく辛うじて理解できる文化である。
メジャーな映画でもよく行われる「入場者特典」というやつだ。コレクション要素があったり作品のアナザーストーリーを楽しめたりするものだ。
早速開けてみよう。

「Please Kill Me」と書かれた紙とおそらく登場人物たちの家族写真であろう物が入っていた…。

本当になんなんだ一体。

客席に座り一息つく。
両サイドは既にサイコ・ゴアマンTシャツを着用した観客が鎮座しており、右手には「ミミのうつり気 おてんばソーダ」を所持している。

いよいよ上映時間となった。
しかし、なかなか始まらない。客席もまばらである。
それを疑問に思った瞬間、会場入り口からスタッフの声が聞こえた。
忘れていた。
2回目の儀式だ。

私の両隣の観客は慌てて会場入り口へ儀式を目撃しようと駆けていった。

私は目前にあるスクリーンを魂の抜けたような気持ちで、入り口から漏れてくる赤い液体が放たれる音と観客の楽しげな声をBGMに眺めていた。

そこから終映まであまり記憶がない。
映画自体は楽しめた気がする。
むしろ今年ベスト級に楽しめた映画体験であった。
恐らく、劇場側もリピーターのみが鑑賞することを前提として、広報しているだろう。
実際にほとんどがそうであったように思う。

とりあえず、いま私から言えることは初見で最終回に訪れるにはそれ相応の覚悟が必要であるということである。
それと同時に、未知の価値観と邂逅し確実に一つ世界が広がった体験ではあった。

終映後の儀式を待つリピーターの方々で混み合う中、そそくさと退散しようとした私にスタッフからこのようなものが手渡された。


先程の儀式で使用された「酸性風呂水」だそうだ。
なんだかとてもクラクラする。

朦朧とした意識の中、儀式の音と観客の熱狂的な声を聞きながら階段を降りる。




脳みそがいた。

気がつくと酸性風呂水を右手に握りしめ自宅に到着していた。

特にオチはないのだが、なかなかに得難い体験だったので忘備録的に記しておこうと思い、筆を取った次第です。

最後に『サイコ・ゴアマン』のエンドロール時に流れた楽曲でお別れしましょう。


それではまた来週。
お元気で。
良い週末を。

【今週の何か】
最高なので是非見てほしい。

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