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超音波検査士(泌尿器)レポート②腎細胞癌part2

2例目は腎臓の悪性腫瘤…腎細胞癌のうち、嫌色素性腎細胞癌の症例です。いきます!

レポート

超音波所見

2嫌色素性腎細胞癌かい.jpg

赤線がメインの所見、青線は副所見です。

今回も腫瘤の特徴は超音波医学会診断基準の『腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別』にそって記載します。Bモードとドプラ法のそれぞれの所見を書いていきましょう。

腎細胞癌のなかで最も高頻度の淡明細胞型との違いは、『血流パターン』

嫌色素性腎細胞癌は乏血性のことが多いとされています(CTでの濃染具合は、淡明細胞型ー嫌色素性ー乳頭状の順)

本症例でも腫瘤の血流はわずかです。というか腫瘤血管でなく、既存血管がちょっと圧排されてるだけなのかなとか思っちゃいます。

余談ですが、この症例を検査した時は、精査して欲しかったから腎細胞癌っぽい画像残したんですよね~汗 カラードプラもゲイン上げて、スケールも小さくしてました。ただ、どうやっても典型的なバスケットパターンはみられませんでした。


他、反対側の腎臓に嚢胞があったので、その記載をしています。

正直、メインの病変以外のこと書くのは面倒くさいし、そこで減点されても嫌ですよね。症例を選ぶときは極力シンプルなものが良いと思います。

超音波診断は『右腎細胞癌疑い、左腎嚢胞』としています。

超音波所見と臨床診断について

スクリーンショット 2022-05-01 145955

所見は理解したうえで、典型例ではないけどこう診断したんだよって考察しています。

で、

他の画像検査でやっぱり腎細胞癌が疑わしくて手術しました、

組織をみたらこんな特徴で嫌色素性腎細胞癌だったんです。

超音波所見みたら淡明細胞型の特徴はないけど、血流シグナルなかったのは嫌色素性の特徴を反映してたんだ!(やっぱ超音波検査有用!!)

という流れで考察しています。

なぜそういう画像所見が得られたのか、記述するのも大事ですね。

超音波所見と臨床診断についての反省

これもTNM分類記載してない…。
TNM分類はこちらの記事もご参照ください。

スケッチ

2嫌色素性腎細胞癌
画像は職場の規則上出していません

絵心ない分、詳しく説明するんです。

腎実質内の血管は要注意ですね。区域動脈なのか、葉間動脈なのかなど。しっかり考えて突っ込まれないようにしたいところです。

腎細胞癌の組織型頻度

腎細胞癌の組織型は頻度順で頻度の高い順に組織型で分類すると,淡明
細胞癌(約 65 ~ 80%)、乳頭状腎癌(約 10 ~15%)、嫌色素性腎癌(約 5%)となります。
(『これから腎泌尿器超音波を始める方のためのレクチャー:腎・泌尿器初級』Jpn J Med Ultrasonics Vol. 46 No. 5(2019))

これをみると、腎細胞癌の20~30%は典型所見ではない。ということになります。

最後に

今回は、腎細胞癌のうち嫌色素性腎細胞癌の症例レポートを提示しました。
腎細胞癌も組織型によって特徴が異なるので、その点について記載すると『こいつわかっとるな』と思ってもらえると思います。

頭で理解していても、要点を整理して書かないと伝わりません。
この記事がレポートを書く際の参考になれば幸いです。

そしてルーチンでも、典型所見(例えば豊富な血流シグナル)がないからといって、安易に悪性を否定しないことですね。
逆もしかり、高エコー腫瘤だからといって腎血管筋脂肪腫と決めつけないことも重要です。

いかがでしたか?超音波検査士試験の対策の内容でしたが、一番の目的は患者さんのために質の高い検査結果を返すことです。
これからも一緒に日々努力していきましょう!


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