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ブレーカー

ブレーカーがよく落ちる。
わりと貧しいアパートに住んでいるから、少し電気を使い過ぎたくらいでブレーカーが落ちてしまうことがままある。
大抵は、暖房器具が原因であることが多い。
4000円のセラミックファンヒーターを買ってからブレーカーが落ちることが多くなった。

つまりは家賃不相応、身分不相応な電力消費をしてしまっているということなのでまあ、普通に僕が悪い。

暖房器具とシャワー、暖房器具と電子レンジ、暖房器具と…
暖房器具となにかを同時に使うとほぼ確実にブレーカーが落ちる。


うちのアパートの古さ加減は今に始まった事ではない。
(汚いとかではないと思う。借りたときはリフォームしたてだったし、虫もほとんど出たことがない)

僕が最近油断して、電気代の節約を怠っているからと言ってしまえばそれまでなんだけど

冬は室内の気温が0度を下回ることもあるわけで、少しくらい暖房をつけてもいいじゃんと思う気持ちもある。

部屋の壁が薄いなあ。

年末ごろまでは暖房を我慢して布団を重ねて重ねて過ごしていたが
友達がウチに来ちゃうと、そうしてるわけにもいかないから暖房をつける。
びっくりした。部屋の中って歩けるんだなって思った。

当然、ブレーカーは落ちるんだけど、真っ暗な部屋を最短距離で進んでブレーカーを上げる僕を見て
友達は少しだけ寂しそうな顔をしていた。僕の部屋を若手芸人みたいでいいじゃんと言っていた彼らが。

僕はもう、一軒家を買っていてもいい年齢になっていた。


そんなこんなで「暖房をつける」にすっかりハマってしまった僕だったんだけど。やっぱりブレーカーはよく落ちる。

ブレーカーを気にせずに生きてる人はピンと来ないかもしれない。
電力というのは「暖める」と相性が悪い。

テレビやらパソコンやらでブレーカーが落ちることはあまりない。
あんなにビッカビカに光ってるのに。

レンジはめっちゃ落ちる。僕がこのまえ購入したファンヒーター!!!はめちゃめちゃ落ちる。シャワーも落ちる。ドライヤーも落ちる。

なにかを暖めるには、たくさんの電気が必要なんだと思う。

たしかに、貧乏と「寒そう」はセットって感じがする。夏より冬の方が貧乏っぽさは際立つし、貧乏サブカルは居そうだけど、貧乏でぬくぬくしてる奴はニワカっぽい。

テレビもパソコンも、どんだけやってもブレーカーが落ちないのは偉いよな。やっぱりエンタメは貧乏の味方だ。

貧乏が寒そうっていうのはイメージじゃなくて、物理的に、貧乏だと寒くなるしかないのよ。すぐブレーカーが落ちる。

うちはユニットバスだから、朝はめっちゃ寒い。
ヒーターをつけながらシャワーで濡れた身体を拭こうとすると、ブレーカーが落ちる。

そうすると、濡れた身体のままブレーカーをあげてガスをつけて。もう地獄みたいに寒い。
暖かくなろうとしてヒーターをつけたのに。そのせいで死ぬほど寒い思いをしなきゃいけない。

なんだか、人生に似てる。
自分の許容範囲(部屋のアンペア数)を超えた努力(電力消費)をすると、結局自爆して不幸になっちゃう。

こんなボロボロの人間である時点で、暖かくなったり幸せになったりする資格がそもそもないわけ。

そういうことが、この年齢になってだんだん分かってきた。仕事ができるようにもならないし、セックスもない。

暖かくは、なれない。

明日も僕は、暖房のスイッチをオフにしてシャワーを浴びる。

暖かくなる努力を放棄する。

スイッチを入れないことが、僕に残された唯一の「寒くならない方法」だから

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