その18 ◆ステップ9 天王星への旅 9. Thanks,Forgive(感謝と赦し) 【ココロの救急箱】

 その時、宇宙船が動き出し、マザーヴォイスが響きました。
《どうやら、この9. Thanks,Forgive(感謝と赦し)をいちばん理解して実践してくれたのは、ケンタくんですね。つらさと、すべてを受け入れた後のきもちのおだやかさを経験してくれました。愛していたからこその、葛藤と赦しでしたね。けれど、世の中には、気づきや体験をくれたからといってすんなりとは感謝できないこと、いえ、とうてい感謝も赦しもしたくないことがたくさんあります》


◆高度な「愛と感謝」のワーク


《世の中には、ほんとうにひどいこと、
 感謝なんて、とてもできないようなことがあります。
 おそろしい災害、理不尽な事故、重い病気、ひどい暴力など。

 こんな嫌なことがあったおかげで今の自分がある、とか
 生きているだけでよかった、なんてとても思えず
 感謝どころか、思い出すだけで、魂が焼けるような。

 苦しくて苦しくて、混乱してどうしたらいいかわからない時は、
 少しずつ、ただ、この世界そのものを受け入れましょう。
 アタマでもココロでもなく、魂でそれを受け入れるのです。

 動物の世界を見ても虫の世界を見ても、
 この世界は、残酷で、不平等です。
 そして、とても美しく豊かで、奇跡と生命に満ち満ちてもいます。

 ひどいこと自体はゆるせなくても、この世界を赦してください。
 この世界の一員であることを受け入れ、
 深く深呼吸して、痛みや怒り、どうしようもない思いを
 少しずつ少しずつ溶かしていきましょう。
 ドライアイスの表面を、少しずつ気化させていくように。

 ものすごく素敵で愛すべき存在がある一方で
 恐ろしいできごともある、この世界のなりたちを
 できるかぎり、ほんの少しずつ、受け入れていきましょう。

 この世界の成り立ちを、その容赦ない残酷さをゆるし、
 自分がとほうもなく豊かな、この世界の一員であることに感謝するのです。

 そして、少しずつ
 赦して怒りや悲しみを手放し、宙に還していきましょう。
 それは魂の救済であり、魂の仕事でもあります』

ひときわ優しく、しみいるようなマザーヴォイスに、みんなは、しばし沈黙しました。
 それぞれの頭には、いろいろな恐ろしいできごとが浮かびます。


「そんなかんたんに、乗り越えろとか忘れろとか、しかたなかったと思えとか、無理なことっていっぱいあるわよね。イジメ、殺人、事故…………。本人も、まわりの人もつらすぎる」
 マコの言葉に、パパとママもうなづきます。今までの人生で出会ったり見聞きしたおそろしいこと、悲しいことを思い出しているのです。
『うん。テラダ一家は、みんな、優シイね。宇宙船の中いっぱいに、かなしみのオーラがただよっている。悲しむべきことはしっかり悲しみきることが必要だヨ。でも、大きすぎる悲しみで、魂の抜け殻になりそうな大ピンチのときには…………《ココロの救急箱》モードの登場だヨ!』
「うん、ピンチの時には《ココロの救急箱》ね」
『そう。ちゃんとした手当ての前の応急処置、シンプルな内容だヨ』
 ピカリィはクラインの壺のように丸くなったカラダで、ゆらりと宇宙船を漂い始めました。

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♪♪♪《ココロの救急箱》 9.感謝と赦し/Thanks,Forgive

 福は内、鬼は外 / 聖域をつくれ!

 ―――もしも何かつらいことが一気に起きて
 倒れそうなほどの衝撃がきて、とても感謝と赦しなんてできない
 でも、なんとかしないと、いろんな思いで破裂しそう
 自滅して一気にすべて破滅しそう
 そんなトキは、あれこれ後悔や絶望、自暴自棄な衝動を
 とりあえずココロの中の頑丈な箱にしまいこみ
 魔を滅するマメ、そのイメージをあたりにまきまくって
 結界をはって自我の決壊をふせごう

 福は内、鬼は外。福は内、鬼は外
 どこかに少しでも安全な聖なる隠れ家を見つけて
 自分の内面にも聖なる場所をつくろう
 Zeroの時のように、ただ自我を封印してセーフ・モードになるだけでなく
 自分自身を清めて、一番キレイな気持ちとつながり、すがり、
 自分かわいがり、暗く破滅的なココロを締め出す時

 そこで回復信じ、じっくりリハビリ、ココロのシステム、きっちりリカバリ
 恨みや絶望は魂を焼くから、怖い気持ちは魂をズタズタにするから
 福は内、鬼は外。福は内、鬼は外
 安心できる場所探して、ココロに愛情のお水あげて
 顔をあげて、少しずつ癒えて、生きて、痛みやわらげていこう
 傷ついた自分まもりながら
 日々の変化みまもり、ココロ安らげていこう
 今が最悪、これからは上向きと、ありきたりのお題目も
 まんざら捨てたもんじゃない、すがっても悪くない

 悲しみを手放したくなくて、変化がこわかったり
 つらい人がいるのに自分だけ立ち直り幸せになるのが許せなかったり
 ココロが雨もりしたまま生きていく人もいる
 もしもそれがその人にとっての聖域で
 そこで生きるのがせいいっぱいなら、無理に抜け出す必要はない
 ココロのキズとなんとか共存、それはとても強靭なチャレンジ
 それだけで強烈な試練と戦っているステージ
 じゅうぶんがんばりぬいているイメージ

 でも、いつか試練を終えて、少しずつキズが癒えて
 前向きなことが言えて、準備ができてきたら
 一歩ずつ、隠れた安全な聖域から現実に向かっていこう
 理不尽さをねじふせ、あたらしい自分芽吹かせ
 流れのりこえて、思い出塗り替えて
 隠れた聖域には、またいつでも好きな時に戻れるから
 恨みや後悔が詰まった箱を焼き捨てて
 勇気出して、一度出てみて
 いろんな人との交わりの中で生まれる愛と安らぎとを信じて
 魂にもう一度、しあわせに輝くチャンス与えて――――』

 ピカリィがきらきらと輝きながらみんなの前に降りてきます。
 いろんな思いが、みんなの胸にうずまいて、すぐには口がきけません。
『ミナサン、ありがとう。ピカリィがいったこと、わかってくれてるって感じるヨ。深い理解や同情は、魂の質をすっごく高めてくれル。でもね…………』
 ピカリィは、もじもじしながら先をつづけました。
『自分のことじゃないことや、どうしようもないことの悲しみにひたりすぎると、ココロに悲しみグセがついちゃうヨ。すると、魂はしけって重くなる。少しずつ、そのじとっとした重さが心地よくなってしまうかもネ。じわじわとチカラやエネルギーを悲しみに吸い取られ、魂は急速に老化するヨ。だから…………、さあ、キモチをきりかえて、さいごのステップに進もう!!』
 みんなは大きく息をつき、緊張をほぐすように微笑みを浮かべました。


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