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ONBECの名前に込めた想い

略称ONBEC=オンベックと読みます。

何故そのように呼称するのかをお話しする前に、まずは正式名称の説明を先にさせて頂きます。

この団体の正式名称は「舞台監督と演出部がつくるオープンネットワーク」と言います。名称だけでは「どんな団体を目指しているのか?」ってことが伝わらないと思うので、どこかに掲げようと思っている「趣意文」案の一部をお読み下さいませ。


A案

「舞台監督および演出部としてフリーランスや法人所属などで活動する個人が世代や立場を越えて参加し様々な情報を共有出来るネットワークです。

それぞれの活動において享受している価値観や利益を尊重し合い、個人がそれぞれの立場のまま繋がることで新しい価値観を創造し、個々の活動に還元出来る仕組みを持つ持続性ある「繋がる場」を形成します。

また、各々の仕事を通じて日々更新される情報やアイディアまたは活動における諸問題を共有し、勉強会や交流会など技術や知識向上の取り組みを推進するだけでなく、労働環境の改善や安全衛生など、その時代が抱える問題を研究しそれぞれの活動の展開につなげる場を形成します。

このネットワークはこれまで小さなコミニュティを形成し分断気味だった舞台監督/演出部として活動する個人を横断的に繋ぐ会員制ネットワークです。」


B案

「舞台監督および演出部としてフリーランスや法人所属などで活動する個人が世代や立場を越えて参加し様々な情報を共有出来るネットワークです。舞台監督/演出部が現場で横断的に各セクションと密接に関わるハブ機能を持ち得ているという特徴を活かし、「大道具」「小道具」「照明」「音響」「映像」「衣裳」「ヘアメイク」「制作」など他セクションも参加し、日頃抱える問題を議論したり垣根を超えて情報交換の出来る「場」を産み出し業界全体の向上や改善にも取り組みます。


・・・まだ策定中で正式な文面ではありませんが、このような想いを持って動き出し、色々と話し合った末にこの名称に辿り着きました。名称には敢えて「舞台監督と演出部」の職種名を表記を盛り込みました。これまで持ち得なかった横断的に繋がる仕組みを、それを必要とする我々「舞台監督と演出部」が中心となって進めていく決意というか覚悟を表すためです。また演劇業界で確固たる業種として確立されながら、まだ社会ではあまり認知されていない「演出部」という職種を明文化していくことが我々「舞台監督と演出部」が広く繋がる為だけでなく、引き続き社会で活動していくうえでも必要との想いを込めてのことです。


英文表記では「Open NetWork Butai-kantoku Enshutsubu Create」です。・・・当初は「Butaikanntoku Enshutsubu Open NetWork」としてましたが、ONBEC=オンベックという愛称として呼びやすいカタチにしました。ここの英文でも舞台監督をButai-kantoku演出部をEnshutsubuとあえてローマ字綴りで表記しています。


日本に於ける舞台監督という仕事は、欧米では何種類かの職種に細分化されていると言われています。日本では「プロダクションマネジャー」「テクニカルマネジャー」「ステージマネジャー」として導入され、まだ限られた環境ではありますが、実際に運用もされ始めています。この細分化は国によってその形態は様々です、それぞれの国の芸術文化がもたらしてきたカタチで成り立ち、職種名/呼称も違えば、仕事の範囲も内容も各国様々な独自のスタイルを形成しています。


そういう意味で日本の舞台監督は、これまで日本の文化の歴史が育み、先人達が培ってきた日本独自の「舞台監督=Butai-kantoku」という固有のスタイルであると我々は考えています。そのような考えに基づくと「舞台監督」が「Stage Manager」と直訳されていることに違和感を感じる部分もあります。とはいえ欧米のシステムを否定し「日本には培ってきた日本のスタイルがあるのだ」と固持するつもりもありません。近年の舞台芸術は様々な面で高度化し技術や知識だけでなく安全衛生/労働環境に対する適応など、舞台監督に求められる責任と仕事量は増加傾向にあり、現在日本で試されている上記に挙げた3種の導入も時代の変化に促された「日本独自のスタイル」を進化させる一つの模索だと捉えております。


「欧米」のシステムを取り込み時代に対応させる考えは決して間違ってはいないと思いますが、日本に欧米のシステムをそのまま持ち込むまたは置き換えるという風になってしまっては、これまで培ってきた我々独自の文化との見えない壁を産み出してしまうでしょうし、結局は根付かないモノになってしまうことにもなりかねません。我々は「舞台監督」を欧米を見習って「Stage Manager」に落とし込むのではなく、日本の芸術文化が産み出した現状の「舞台監督」というスタイルを時代に合わせて、取り込み出来る良い部分は欧米に限らず他業種からも取り込み進化させていくことが必要だと思っております。これまで「舞台監督」はそういう時代に求められる変化に対して主立ったアクションはしてこれませんでした。まだ我が国の「舞台監督」は自分達の職能定義すらまともに出来ておらず、良くも悪くも個人のセンスや個性が重視され、そして現役で活動する個々人はそれぞれの小さなコミニュティや限られた範囲で活動し、ある意味断絶している状態にあることが、時代に適応するアクションだけでなく我々自身の実態も掴みづらいものにしている一つの要因と考えます。


我々「舞台監督」は時代に合わせて求められる必要な進化をさせて対応していかねばなりません。そしてそれは欧米を見習って置き換えるのではなく、日本の芸術文化が産み出した「舞台監督=Butai-kantoku」の延長線上に進化させるカタチで進めていってこそ、この国の芸術文化に根付くものになるだろうと思います。その為にも我々現役の舞台監督は安易にStage Managerと変換されてしまうことで何かを失ってしまわないように、「舞台監督=Butai-kantoku」という仕事に誇りを持って、しっかりと自分達を点検し<職能定義>を見出す作業も行っていかねばならないと考えています。その足掛かり一歩目として、まずはこれまで積極的に繋がることをせずにある意味分断された状況で活動してきた舞台監督そして演出部を横断的に繋げる仕組みを起ち上げたいと思っています。


もちろん「繋がる」だけでは何事も進みません。繋がったその先が大事です。でも現状そういう仕組みすら持ち得ていない状況を変えることがまずは必須だと考えます。そしてそれらの活動は内向的な傾向にありますが閉鎖することなく、他セクションや社会との繋がりとしても機能出来るようにと「オープンネットワーク」という表記を団体名に盛り込んであります。我々が取り組むべき課題は先に挙げた<職能定義>だけでなく<社会的役割の定義と認知普及><仕事環境の向上と改善><内外諸問題の調査と研究><後陣の育成>など多岐に渡ります。そしてそれらの課題は舞台監督と演出部だけで解決できる問題は非常に限られています。多くの課題は他セクションと大なり小なり関わりがあり、共有して取り組んでこそ意義あるものになると考えています。我々「舞台監督と演出部」は現場でほぼ全てのセクションと密接に関わるハブ的な役割を果たしています。その特性を活かし、共通して抱える問題を「一緒に話し合う場」を設けて議論を促したり、時には業界内外に向けて表明や提言などのアクションも将来的には出来ればと思っています。まずは繋がってもいない舞台監督と演出部が世代や垣根を越えて繋がり、その先には他セクションとの交流も見据えて「オープンネットワーク」として開かれた体制でありたいと思っています。


正式名称「舞台監督と演出部がつくるオープンネットワーク」英文表記「Open NetWork Butai-kantoku Enshutsubu Create」略称「ONBEC」(オンベック)には、そういう想いが込められて命名されています。


                                  舞台監督 福澤諭志

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