見出し画像

Netflix『極悪女王』全5話

 2024年9月19日より公開された「極悪女王」の主演は、ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽の3名となっていますが、実質はゆりやんレトリィバァがメインとなって動いていく物語です。

 現代風にアレンジはありますが、1970年から80年にかけての当時の「熱狂」が再現されており、懐かしさで心躍ります。Netflixの日本ドラマとしては「地面師たち」が話題になっていましたが、複雑なストーリとトップクラスの役者を起用したことがあだになり、全7話ではあっけない結末で不完全燃焼となってしまいました。それに対して「極悪女王」は全5話という短さながら、ストーリーがコンパクトにまとめられており、見ごたえ十分です。

 企画は、小学校のころからプロレスを見続けた元放送作家、鈴木おさむさんです。手がけたテレビ番組は「笑っていいとも!」や「SMAP×SMAP」をはじめ数多く、テレビドラマや映画、舞台の脚本や監督も務め、多数の著書も執筆されているマルチな才能の持ち主です。

 このドラマが、なぜ今作られたかというと、全日本女子プロレスを創設し、同族経営で強い発言力を持っていた松永兄弟の死去がきっかけになっていたのだと思います。中心となっていた三男の松永高司さんが2009年7月11日、引き継いだ次男の松永健司さんが2020年2月6日に死去されています。全日本女子プロレスという団体が消滅した後、残されたものを映像化して記憶にとどめるということは、とても重要な意味があります。

 主演のゆりやんは、綿密な計画のもと、1年間にわたってほぼ毎日、アスリート並みのトレーニングを敢行し、体重を65キロから93キロまで増やして挑みました。2月からは長与千種をはじめとした、女子プロレス団体「マーベラス」の選手たちから指導を受け、磨きをかけています。

 一方、唐田えりかと剛力彩芽も撮影の半年前から、週3回のトレーニング、週2回のプロレス練習をスタートし、とにかく食べまくって10キロの増量を達成しました。特に唐田は、長与千種の得意技、ニールキックを「絶対自分でやりたい」と、みんなとは別に居残り練習に励んでいました。

 このドラマは、ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽の3名にとって転機となる作品であり、「この作品が自分の覚悟です」と言い切れる代表作の1つとなるはずです。

 そして、最後の髪切りデスマッチは、どちらが勝者となったかは伏せますが、本当に地毛を切って坊主になっています。

 まだまだヒールへの熱狂は止まりません。ダンプ松本の後継者、ブル中野は凶器に頼らないヒールを目指します。後輩アジャ・コングとの抗争が繰り広げられ、ヒールもベビーフェイスもない新しいプロレスを作り上げました。

 続編は「ブル中野」で来ると信じています!

 ちなみに、当時私が好きだったのはデビル雅美です。

追記

 当時の雰囲気を見事に再現していますが、これはドラマだというところに留意しなければなりません。今現在でも関係者のインタビューで語られる内容は様々ですし、定説と呼ばれているものであっても、見方は色々あります。全て実話ではなく、当時の女子プロレスの美学を上手にドラマ化したものだと思ってください。

 特に論争になりそうなのは「ブック」です。ドラマの中で勝敗が先に決まっている試合を「ブック」と言っていましたが、そのような言葉は業界で使われていないというのは皆の知るところです。

 そのあたりのことは、様々な記事でたくさん書かれているので、探して読んでいただけると興味が尽きません。

 「プロレス」の根底には、「プロ」とは、「プロスポーツ」なのか「プロエンターテイメント」なのかという解釈の違いをずっと引きずっているのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?