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兼務寺のお布施と管理に関する注意点

■和歌山県の兼務寺で起きた税務上の問題について

2023年1月、和歌山県にある小さなお寺に税務調査が入りました。
突然の調査に困惑したお寺でしたが、調査にそのまま応じたところ、後日なんと7年間で7000万円強のお布施を私的流用していると指摘され、ペナルティとなる重加算税を含めてその半分ほどを追加徴収されることになったのです。

寺院は所得隠しなどではなく、私的流用も一切していなかったそうですが、税務署の指摘を素直に受け入れて納税を行いました。
「知識が無かったために…」とがっくりと肩を落とす住職…。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

その理由の一つとして挙げられたのが、「兼務寺のお布施とその管理の問題」でした。

税務調査によると、このお寺は7つのお寺を兼務しており、兼務寺のお布施を本寺の口座ではなく住職の個人口座に入れていたそうです。
そのためそのお金は法人から住職への「給与」としてみなされ、この給与の「仮装・隠ぺい行為」をしたと判断され、さらに重加算税まで発生することになってしまったのでした。

■兼務寺の会計を分けるために何気なく行ったことが、大変な結果を招くことに…

過疎化が進む中で複数のお寺を兼務する「兼務住職」が急増しています。

兼務するお寺はほとんどの場合規模が小さく、檀家や門徒数も少ないため、本堂の修理などの費用もまかなえないことも少なくありません。
この和歌山県の住職はそのようなときのために個人口座にお布施を貯蓄をし、修理費用などに充ててきたそうです。

しかし問題だったのが、名義が法人ではなく住職名義の「個人口座」であったこと。
その口座には私生活の費用も入っており、住職の頭の中ではきちんと分けていたとはいえ、お布施を個人口座に入れた時点で「私的流用」に当たってしまった…というわけです。

■兼務住職が増える中、お布施の管理にも注意が必要。

今回は、会計上の処理に不慣れな住職が、税務知識の不足によって招いた単純なミスと言えます。
結論から言えば、本寺の会計のひとつとして兼務寺の管理専用の口座を作っておけばこうした問題は起こらなかったわけです。
しかし、これは1個人の問題とは言いきれない現代の問題も孕んでいます。

無住のお寺が増える中で、兼務住職は複数のお寺とその檀家(門徒)について責任を負い、お寺のこれからのことまで真剣に考え取り組んでいる方がほとんどです。
そのため、お布施も今後の費用として大切に貯蓄されていたことでしょう。

しかし一方で、複数の寺院の住職を兼務する、というこれまでになかった状況に対し会計管理体制が十分に整わず、なんとなくの流れで行ってしまったため、税務調査とずれが生じる結果になったのではと考えられます。

今後はさらに、複数のお寺を兼務する住職が増えてくると考えられます。
こうしたなかで必要なのは「正しい会計・税務の知識を身に着けること」に他ならないのではないでしょうか。

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