増える墓じまい、避けたい無縁墓。お墓の改葬について
2022年の改葬件数は過去最高。お墓じまいと合祀に関する考え方の傾向について解説。
■改葬件数は2008年以降、年々増えています。
■改葬とは
改葬とは、お墓や納骨堂からご遺骨を取り出して、別の墓所に埋葬・収蔵することをいいます。
つまり「ご遺骨のお引越し」=改葬です。
家の引越しをするときに転出・転入の届けを出すように、ご遺骨の引越しの際も「改葬」の届け出が必要で、改葬の際には市町村長から許可をもらってから行う必要があります。
上記のグラフでも分かるように平成20年ころから改葬は増加傾向にあり、寺院墓地においても、改葬して別の墓所、あるいは納骨堂や永代供養墓、樹木葬墓地などに埋葬・収蔵する人が増えています。
■改葬する主な理由
●お墓が遠く、お墓参りが大変。
「先祖代々のお墓が実家の近くにあるが、両親が亡くなってしまい、子どもたちはそれぞれ所帯を持っていてお墓参りが難しくなった」
「お墓参りには車で行っていたが、年を取り、車の運転が難しくなった」
などなど。お墓参りに行くのが難しくなり、お墓の引越しを考えられるケースも少なくありません。
その場合はお墓→近くの霊園のお墓、お墓→近くのお寺の納骨堂などへの改葬が多く、「お参りをきちんとしたいからこそ」改葬を選択されるようです。
●お墓の継承者がいないが、無縁墓にはしたくない。
また近年増えているのが、少子化、核家族化などの理由でお墓の後継者がいないため、お墓じまいを選ぶケースです。
この場合、お墓→永代供養墓や、お墓→樹木葬などを選ぶ人が多いようです。
近年、お墓の管理者がいなくて墓所が荒れ放題になってしまっている「無縁墓」の問題が社会的な課題となっています。
「先祖代々のお墓をしまうなんて申し訳ない」とお悩みの方もいますが、お墓を改葬し、無縁墓になることを事前に防ぐことは、ご先祖様を大切に考えるからこその選択なのかもしれません。
■自分のお墓のことで、子どもや孫に負担をかけたくない。
「将来子どもたちに自分たちのお墓のことで迷惑をかけたくない」
「子どもや孫に負担をかけたくないから、お墓は夫婦だけで眠れるものにして、将来は永代供養をしてもらう」
というご意見を近年よく耳にするようになりました。
従来は「お墓は家族が守って当然」という考えでしたが、個の時代と呼ばれる今、自分たちのお墓は自分たちで購入して管理し、それが出来なくなれば永代供養に…と考える人が増えています。
子どもたちを思っての選択ではありますが、お墓の購入前にご家族に相談することが大切です。実は子どもたちは「親の墓は自分たちがしっかりと守っていきたい」と考えているかもしれません。
また逆に「管理費はかかっても、お墓を建ててくれた方が自分たちも入れるし安心」と考えているかもしれません。
どのような選択であっても大切なことは「周囲の方ときちんと話し合う」ことです。
お墓はたとえ自分たちが所有者であっても、縁のある人々みんなにとって大切なものです。しっかりと話しあい、みんなが納得する形を選んでいただければと思います。
改葬して合祀されることについて。調査結果とその検証。
■納骨されているご遺骨を、そのままのお墓でいつまで埋葬したいか。お墓の所有・未所有で意外な結果に。
近年、少子化、核家族化などにより、先祖代々のお墓を守り継ぐ「継承タイプ」のお墓ではなく、将来ご遺骨の管理を墓所の管理者にお任せする「永代供養」を選ぶ傾向が高まっています。
永代供養の場合一般に、すぐに、または一定期間経過後に「合葬(合祀)墓」に移され他の方のご遺骨と一緒に供養されます。
ではその際、皆さんが希望される個別安置の期間はどれくらいなのでしょうか。
そこで、全国石製品協同組合(全石協)による「お墓へ納骨されているご遺骨を“合祀”するまでの期間」についての調査結果をご紹介します。
詳しくはこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000015761.html
※全国の30代以上の男女を対象に、2023年1月に実施されたものです。
■お墓を所有していない人の方が、合祀に抵抗がある傾向が強い
まずは、まだお墓を所有していない方の結果ですが、データによると一番多いのは「永遠に合祀されたくない」で35.9%、31~100年間を含めると半数近くになっており、合祀に抵抗がある、または出来るだけ長く個別安置してほしいと考えている方が多いようです。
現代では永代供養墓に人気が集まっていますが、これは「お墓の後継者がいない」「残された人に迷惑をかけたくない」という明確な理由がある方が多く、比較的若い方やお墓の購入をされていない方は永代供養の現実味が薄いのもしれません。
■お墓を所有している人は4~10年、11~30年間が高い傾向に。
一方で、すでにお墓を所有している人は「永遠に合祀されたくない」がお墓を所有していない人よりも少なく、逆に4~10年間、11~30年間が高めという結果が出ました。
これはお墓を所有している年齢層が比較的高いこと、そしてお墓を所有する中で「お墓の後継者がいない」「お墓のことで家族に迷惑をかけたくない」という気持ちがより現実に近づいていると考えられるでしょう。
一方で1~3年間と短い個別安置期間を選ぶ人はお墓を所有していない人より少なく、お墓を所有している方は「将来永代供養墓に移されるのは仕方ないが、出来るだけ長い期間個別でご供養をしてもらいたい」と考える傾向にあるようです。