【展覧会感想】原啓義さん写真展「まちのねにすむ」は見えなかった世界を見せてくれます。

2021年7月4日 18:46

新宿・ニコンサロンにて、原啓義さんの写真展「まちのねにすむ」を観てきました。

過去に銀座・大阪のニコンサロンでも個展を開催されている写真家さん。今回の会場は、新宿駅西口から陸橋を渡ってすぐの新宿エルタワーの28階。
ビルの前や入り口付近には展示の案内表示がない（or見落とした）ようでしたが、会場内は賑わっていました。

日本で唯一の街ネズミ写真家さんの個展、会場にはネズミ好きさんが集合。
ネズミの研究をしています、飼っています、Twitterで見ました等の会話も聞こえてきました。

私は普段、リスの写真を撮る方とは交流があり、写真の世界ではリスも珍しいと言われる話を聞きます。
動物写真で多いのは野生動物か、猫などのペットとしてメジャーな動物が多く、リス園のリスやペットのリスになると、マイナージャンル扱いだそうで…。

さらに街のネズミ写真というジャンルは、オンリーワンなようです。
今まで撮っている人がいなかったから需要がない訳ではなく、動物それぞれにはコアなファンがいるので、良い作品をつくって発信すれば、熱心な方が集まるのですね。新たなジャンルの開拓は芸術の醍醐味かと思います。

ネズミの写真自体、撮影が難しそうで、前回の個展の際に、撮影の苦労について質問しました。ネズミを待つ根気が、とにかく必要なようですし、経験からコツを掴み、ようやく撮影できるそうです。

今回は更に、通行人のすぐ側にいたり、ネズミの格闘シーン等、貴重な瞬間がいっぱい。お伺いした時間帯に、ネズミ好きさんが多くいらしたこともあり、原さんが写真の解説もしてくださいました。

ネズミは、繁華街の街中、みんなのすぐ側にいて。人間がネズミを見ているかどうかを敏感に感じとり、注意がそれている隙に動き回っているそうです。
たしかに、ハイヒールの女性のすぐ近くにネズミ⁈という写真も、女性側からは見えない絶妙な角度にネズミが隠れていたり…と納得。

このネズミは妊娠しているようだとの写真、太っているネズミは顔も体も大きいけれど、顔が小さくてお腹まわりが大きければ、子供がいる可能性が高いそうです。

真正面から撮れている写真は、ネズミが隠れている場所付近でカメラを構えて待ち、ネズミがこちらに気がついて、警戒しつつも、大丈夫かな…と思っているような写真だとか。
（メモを取った訳ではないので、だいたいこんなお話、という位です。ご興味のある方は個展の際などに、ご本人に直接質問してみてくださいませ。）

ネズミは人に見つからないように街中を闊歩しているけれど、見つけることに長けた写真家さんが、時間をかけて隠れた姿をおさめて、沢山の人が観ることができるとは興味深いです。

可愛らしさも環境の過酷さもあますところなく表現された、他では見られない写真の数々でした。カラスや殺鼠剤等、街には危険なものがいっぱい。そんな中での暮らしぶりの想像をかき立てられます。

ネズミが好きな方はもちろん、ネズミに関心がなかった方にも見てもらえたら、イメージが変わりそうです。
いろんな場所にひょこっと現れるユーモラスさはトムとジェリーなど、アニメにでてくる動物キャラクターのようです。

風景写真としても、風光明媚な場所でなく、ありふれた繁華街の片隅、ゴミで汚いと言われそうな景色に美を見出しているのも面白いと思います。

日曜休廊で月曜まで、齧歯目好きさんはお見逃しなく！

2021年6月22日(火) 〜 2021年7月5日(月)　日曜休館 10:30～18:30（最終日は15:00まで）

＊許可をいただいて撮影しました。写真を遠目から会場風景を撮って良いですか、と尋ねたら、みんな近くから撮って載せてるしいいですよ、との太っ腹なお答えでした。＊通常は写真展では、写真のアップでの撮影は禁止していることも多いので、必ず作家さんかスタッフさんに確認してから撮影しましょう。

今回の展覧会には行けない方には、原さんの本をお勧めシマリス！

街のネズミ (月刊たくさんのふしぎ2020年7月号)

「たくさんのふしぎ」は小学生向けの本、研究者や専門家が世界にあふれる不思議を、子どもたちが自ら感じ考え理解するように導くシリーズだそうです。
手に取りやすい価格なのに、質の高い写真集として大人も楽しめる内容です。
齧歯目好きとしては、予約して買いました。

その他、最新情報は、原啓義さんのTwitterからどうぞ。
https://twitter.com/harahiroyoshi_

ネズミ　meets ネズミ！

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？

【展覧会感想】 原啓義さん写真展「まちのねにすむ」は見えなかった世界を見せてくれます。