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【夢ゾウ風小説】自分とおっさんと  -創作プロを目指すやる気が出ない人達へ-

概要

※ヘッダーの画像は、本編で紹介するおすすめラノベです、ラブコメ好きは是非!

4,448 文字(読了目安: 9分)
登場人物とあらすじ

半透明のおっさん 

知る人ぞ知る、ガネーシャという象の神様の知り合いらしい。
そして、ガネーシャに近い存在になりたいため、なりきりで関西弁を喋り
また、真似という行為で自分の家に居候し、自分を指導してくれている。
※ガネーシャ→夢をかなえるゾウ
半透明の時は、主人公にだけ見え、ご飯を食べたり物に触れたりする時は半透明じゃなくなる

主人公
25歳のパートをしながら作家を夢見ている男。
しかし、最近、創作意欲が沸かずに困っていた…。

本編 (夢に対する想いと努力の差)

深夜2時、とある部屋の一角
ソファーに半身以上を任せだらけている男と
半透明で、すこしでっぷりした体系の40代手前のおっさんが居た。
そのおっさんは、ソファーでだらけている男(自分)に軽蔑の視線を送ったまま
話しかけてきた。
「なぁなぁ」
「ん?何?」
返事をすると同時に、ちらりとその半透明のおっさん(神様)を見る。


「自分、そんなんで、夢(作家)叶う思っとる?」
「んっ……」
痛い所を突かれたなと自分は表情を曇らす。
「調子が出ない」「やる気が出ない」などと反論しようと思ったが
昨日も、一昨日もそんな言い訳をしたと思う。
自分は、生唾を飲んでから、おっさんの傍まで行き、土下座をした。
「やる気の出し方教えて貰えないでしょうか」
「……ップ」
ん?今笑った?
気のせいだと思いたい、バカにされたのだと。思いたくなかった。
「そ、そのまま、頭下げとけや…」
「あ…はい」
仕方なく、土下座をしたまま自分は、待った。

…………。

………。

…5分経過

じわりじわり足がしびれ始めようとしていた。

「おぅ、待たせたな、ほな、これ読めや」

そういって頭をあげると

目の前にふわりふわりと1冊の本が浮かんでいた。

本には見覚えがあった、というかこの本は、自分のだ。
手に取ると同時に、おっさんを見て問いかける。
「…やる気のスイッチ(著 山崎 巧)ですか」
「そうや、神様パワーで数分で読破したけどもええ事書いてあったで?」
「…速読…ですよね?」
「そうとも言うな」
※速読 読書スピードを通常の数倍から数十倍早く読む 修行すれば誰でも身に着けられる技。
自分は、足を崩し、立ち上がり、ソファーで読もうとした。
「なぁ…その前に、ちょっと久々にアレみたいんやけど?」
「あ…パソコンならご自由にどうぞ」
今おっさんの言った、アレとは、オリジナルのイラスト、小説、漫画等でコミュニケーションするSNS、pixi(ピクシー)通称ピクだ、おっさんが何をみたいかというのは、多分
お気に入りユーザーの新着のイラストであろう。
「せやなくて、自分と一緒に見たいんやわぁー ええよな? ええよな?」
「…分かりました」
実は自分もおっさんが楽しみにしている絵が好きだ。
そして、絵を見ることで自分も頑張らなきゃとやる気のキッカケになることもあった。
「あ、勿論、全部の新着絵、わいのSDカードに保存しといてな?」
「……楽したかっただけですか? まぁ…良いですけど」
この時の自分には、少し引け目があった、おっさんの機嫌をとることで
その引け目を修復しようとしていたのかもしれない。
しかし、このおっさんの考えはそんな悠長なものではなかった。
自分を凹ませると同時に、やる気を見出させるちょっと鬼畜なやり方を目論んでいたのだ。

デスクトップPCの電源ボタンを入れ、モニターの電源を付ける。
約10秒後 OSのロゴが表示され、アカウント選択画面でスペースキーを押しログイン。

デスクトップにある。インターネットショートカット
『イラストコミュニケーション SNS pixi』をクリック
インターネットブラウザが開き、2秒後には、pixiの画面が表示されるのだが。
「おぉー、さてさて半月ぶりの皆の更新は如何なもんかな?」
それと同時におっさんは興奮し、お気に入りユーザーの新着イラストを吟味し始める。
その後、新着イラストのページを開き、全てのイラストのサムネ(縮図)を
キーボードのCTRL を押しながらクリックしていく。
因みに、CTRL+クリックは、新しいタブで開くというコマンドだ。
おっさん(と自分)のお気に入りユーザーは、20人、半月程の放置だったので
約40枚(1ユーザー平均2作品)の新しい絵を眺めながら保存していった。
「おぉー、流石、マスオさん、相変わらずのハイクオリティ(時々ネタ系)なのに半月で6枚も描いとるみたいやで?」
「…す、凄いですね」
雑談しながらピク(pixi)を見回る、自分とおっさん。
年の差は違うし、身分は違えども、こうしていると友達の様に錯覚した。
「殆どの人が趣味で更新していってるのに、皆凄いですね」
その何気ない一言で、自分は墓穴を掘らされた。
耳元で先生が小さく笑ったのが聞こえた。
「せやろー? で、それなのに自分なんなん?」
「…へっ?」
ギクリと嫌な予感がした。
そして、pixiの新着イラストを右クリック→名前を付けて保存という
作業の様にしていた自分の手が止まった。
「あ…残りわしがやるわ、席代わって」
「……はい」
そう言われ、席を立ち、その場に居辛くなった自分は、立ちすくんだまま
立ち去ろうかとも思ったのだが、足を後ろに少し動かした直後、
先ほどまでの自分と余り変わらない速度で画面を食い入るように見つめながら
保存作業をしている先生の口が開いた。
「あんな? そんなんじゃ、10年経っても 100年経っても作家にはなれへんで?」
この時の自分は、
「そんなの近いうちなってみせますよ」などと反論しようと思わなかった。
おっさんと同じようにパソコン画面を見ながら、その絵がどういう風に描かれていくかを想像しながら、おっさんの話を聞いていた。
「……」
少なくとも3時間以上はかかっているであろう新着絵の殆ど
中には、12時間を超えてそうな、幻想的な風景写真の様な絵もあった。
そんな、頑張っている絵描きさんと比べて自分はどうなんだろう?
何をのんきに、食って、ゲームして、数時間のアルバイト行って、食って、ゲームして、寝て…。
それで作家を目指してるだなんて、笑い話にも程がある。
そう思っていた。
「…あれ? 反論せぇーへんの?」
「…はい…全くその通りです」
「素直やなぁ…誰しも否定されたら辛くて、むしゃくしゃするやろうけど、少し冷静に考えて
 『確かにそうや』とか『努力不足やからそう思われたんや』とか客観的でもええから反省出来るって
凄い事なんやで?」
「…ありがとうございます」
「プロなるちゅーことは、凡人よりも頑張らなあかんこと、趣味レベルで創作してる人より頑張らないと無理ってことやろ?」
「そうなりますね…それに比べて自分は、全然3分の1すら努力出来てませんでした」
3分の1というのは悪まで目安。いづれにせよ、今までの3倍頑張らなくては…。
そう思ったのだが、おっさんからの切り返しは鋭かった。
「3ぶんの1やあらへんで、ギリギリ10分1ちゃうかな?」
「……そ、そうですか」
しかし、本当にプロを目指している人と比べたら、確かにそれぐらいの差がでてしまうかもしれない。
1週間に1回3時間やるかやらないかのような執筆量
そんなんでは、全然努力のうちに入らない。悔しく、自分が情けない気がした。
これ以上貶されたら、自信を喪失してしまうかもしれない。
「んー、まぁ、悔しかったりほんまに作家目指しているんやったらがんばりーや」
「はい」
「おっ、『クリック推奨』タグや、どないなるんやろ」
「……」
説教しながら保存作業をするこのおっさん、果たしてこの態度は正しいのだろうか。
しかし、そう思う間もなく、パソコンの画面には、もう莫大な時間を描けて描かれたであろう
風景画が表示された。
「うわあぁ……」
思わず言葉を飲んだ、それはおっさんも同じみたいだった。
「おぉー…」
おっさんも自分もその絵を食い入るように見つめた。
その絵は、まさに、写真の様なきめ細やかさで
しかし、そんな風景どこにも実在しない、絵でしか表現できないファンタジー世界の風景画だった。
此方に背を向けて、岬から夜の幻想的な海を見る、白いワンピースを着た裸足の少女。
海には、無数の光体が浮かび上がり、水面にも見事にぼやけた光体が写っていた。
そして、絵の上部真ん中に、本物そっくりの、下半分の満月が、海面と少女を照らしていた。
凄い以外の言葉が浮かばなかった。

そして、名前を付けて保存 をした後、 更にもう一度右クリックをした。
一瞬、何故?と思った。
二重保存なんて、保存した後の画像からコピーすればいいのだ。
そう思ったが、違った。
おっさんが再びポチッとマウスをクリックする。
その項目は、背景に保存 つまりデスクトップの壁紙になる項目だった。
「あ…」
「これでちょっとは、頑張らなあかんな 思えるやろ?」
デスクトップの画面左3分の1は、ショートカットアイコンがあったが
それでも、絵の大事な所は、差し支えなく確認できた。
「…はい」
「道はちごうてもな、プロを目指すんやったら並大抵の努力じゃすまんのや」
「…はい」
「今は、孤独かもしれへん、でも努力はきっと報われるんやから…わしと自分信じて頑張ろうや?」
「そ、そうですね…」
それから、少し自問自答した。 本当に自分は、やる気が出ないからといって甘えていたんだと
やる気が出なくても、執筆や、勉強はできる。もう少し頑張らないと…。

それから、2分後、
「よし、後3枚程で終わりや…」
「それ終わったら頑張ります、じゃ、ちょっとトイレに」
「いっトイレーッ! なはは」
「……あはは…」
しょうもない親父ギャグに愛想笑いしつつ、トイレで便座に座って用を足し
気合を入れるつもりで、3度頬を軽く叩いた。
くじけそうなときは、あの絵に勇気を貰おう。
「よっしゃ!やるぞ!」
そういって机に向かったのは良いが
デスクトップの壁紙を見て自分は言葉を飲んだ。
「なな、なんですかこれ!」
「ん? 見たらわかるやろ、マスオさんの描いた 凛ちゃん」
「……や、そうじゃなくて…」

※とあるラノベでアニメにもなり、やや胸があり、生物部に所属、主人公に対してツンデレで、少し厳しい、特技は剣道の地味っこキャラ、その作品の5人のメインヒロインの中で一番人気だったキャラ

画像1

ちょっぴりマイナーの小説のためここで勝手に宣伝。※富士見ファンタジアの表紙の絵です、ラブコメ好きは是非どうぞ!(アニメからがいいかも?『まぶらほ』で検索検索!)

「さっきの絵は?」と言おうとしたが
「はぁー、凛ちゃん、マジ天使、そして、マスオさんマジ神様、あ、この絵後でデジカメプリントしてきてや」
おっさんが言いたいのは、芸術より萌えということだろうか?少し呆れた。
しかし……。
「……あ…うん、この凛ちゃんは良いわ…」
「せやろ?せやろ?やっぱ自分はわしの同志やなぁ…」
結局、その絵を時々みながら、凛ちゃんに応援されている妄想をしながら
自分は執筆を頑張った。

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