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自由を纏う

こんにちは。ぽんです。久しぶりの投稿になってしまいました。

先週夏休みを取って、色々と考えたので、ここからはもう少しコンスタントに書ければと思っています...

今回はメイクにまつわるお話です。よかったら読んでください。

(今まで画像で縦書きで載せていましたが、読みづらいかなと思ったので変えました。)

自分自身、割と昔は“女の子の領域”ぽいものが苦手(というよりちょっと怖さえありました)だったのですが、コロナ期間中にメイクやらネイルやらを以前よりもちょっとだけ前のめりでやってみて、楽しい〜かわい〜テンション上がる〜となったということもがありまして...

少しずつ自分にかけていた制限みたいなものをとりはらって、いろんなことを選択して行けたらいいなと思います。




「自由を纏う」

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登場人物

臼田 志保里(23) 会社員。
古坂 知紗(23)   会社員。志保里の同期。
坂田 恵介(27)  会社員。志保里の上司

女子高校生A   志保里の同級生。
女子高校生B   志保里の同級生。

店員  デパート化粧品売り場の店員

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○学校 校庭
校庭で制服のままサッカーをする高校生たち。どこからかトロンボーンの音が聞こえる。

○高校 校舎 屋上
臼田志保里(17)がトロンボーンを練習している。

長い黒髪を前髪ごと全て後ろでまとめて一つ括りにしている。一重まぶたの切れ長の瞳で、まっすぐ前を見て、同じ箇所を何度も繰り返して練習する。

屋上の入口のドアが開いて、派手な髪色とメイクの女子高校生Aと女子高校生Bが入ってくる。

女子高校生Aと女子高校生Bは志保里には目もくれず、屋上の隅にどんと座り込んで話し出す。手には惣菜パンを持っている。

志保里も二人を無視し練習を続けるが、譜めくりのタイミングで演奏を止め、ちらっと女子高校生の方を見る。


女子高校生A「え、てかメイク変えた?」
女子高校生B「そうそう、可愛いっしょ」


しばらく口を開けてぼうっと二人の顔に見とれる志保里。

女子高校生Aが視線に気づくと、志保里は慌てて目をそらして楽譜をめくる。

ふとトロンボーンに視線を落とすと、全くメイクを施していない自分の顔が写っている。ぼんやりと自分の顔を見つめる志保里。


○デパート (夜)
化粧品売り場の商品棚にある小さな鏡にうつる自分を見つめる志保里(23)。疲れた表情。長い黒髪を後ろにキュッとまとめて、ほとんどすっぴんのような薄めのメイクをしており、オフィスカジュアルスタイルで、シンプルなカバンを持っている。

化粧品売り場を一通り見回った後、鮮やかなオレンジ色のアイシャドウが目に入ってたち止まる志保里。数秒じっと見つめて、手に取り、真顔で店員さんに声をかける。

デパート店員「いつもありがとうございます」

キラキラと輝くアイシャドウ。

○志保里の自宅マンション 自室 (夜)
1Rの白を基調とした片付いた部屋。ラフな部屋着を着ている志保里。髪はおろしている。

机には鏡と大きめのメイクボックス、傍に購入したアイシャドウが置かれている。メイクボックスの中には、大量の化粧品が綺麗に収納されている。購入したアイシャドウを見つめて表情が和らぐする志保里。

アイシャドウを開封すると、まぶたにゆっくりとした手つきでのせていく。鏡にうつる自分の顔を鏡で見て微笑む志保里。
志保里「アガる…」

○オフィス
30人程の男女がデスクでPCに向かって作業している。ドアが開いて志保里が入ってくる。自分のデスクに向かって歩く。

髪は後ろでしっかりまとめていて、依然として薄めのメイクではあるが、さりげなくオレンジのアイシャドウをしている。

隣の席の古坂知紗(23) が作業している。知紗ははっきりした顔立ちで、しっかりめにメイクをしている。茶色くパーマがかった肩ぐらいの長さの髪を手でぐしゃっと潰し、困った表情でPCに向かって作業している。

知紗は志保里に気づくと険しい表情で話しかける。

知紗「志保里おはよう、待ってた〜これ教えて欲しい〜」
志保里はPC画面を覗き込み、知紗のマウスをとって動かす。
志保里「これはこっちのフォルダに参照するデータがあってさ...」
知紗は安心した表情で、
知紗「あー それかぁ...ありがとう」
と、合唱ポーズをして志保里の顔を見る。
知紗「まじ頼りになる志保里かみさま」
志保里「私が神です」
小さく笑い合う。

知紗の後ろから坂田 恵介(27)が歩いてくる。短髪をジェルでまとめて、紺色のセットアップのスーツをきている。少々濃い目でくるりとカーブを描いているまつげを触りながら知紗に話しかける坂田。

坂田「古坂〜、資料できた?」
苦虫を噛み潰したような表情を一瞬してから椅子を回転させて坂田の方を向き、答える知紗。
知紗「まだなんです〜〜〜」
坂田は髪の毛を手櫛で整えながら知紗に近づきじっと見つめて、半笑いかつ早口でまくし立てる。
坂田「打ち合わせ間に合う〜?も〜化粧だけはいつもバッチリ濃いなお前は。臼田おはよう」
白目を剥いて作業に戻る知紗。
志保里「おはようございます」
無表情かつ伏し目がちで返事する志保里。坂田は志保里をじっと見て、
坂田「臼田はちょっと薄いんじゃね。名前通り。極端だな、チームコントラスト!」
自分で言いながら笑う坂田。志保里は無視する。知紗は手を止めてムッとした表情で坂田を睨む。
坂田「なんだよ冗談だって。早よ作って!さ!」
知紗「まじ面白くないですけど」
坂田は笑いながら足早に遠くの自席に戻る。

志保里だけにこえるように大きくため息をついて小声で呟く知紗。
知紗「まじ外見いじり多くね、坂田さん。それもメイクのことばっか。なんなの」

無表情で、PC画面に映る自分の顔をぼうっと見つめる志保里。

知紗「やばいそれどころじゃない」
首をふる知紗。ハッとする志保里。
志保里「よし、手伝うから頑張ろう」
知紗「かみさま〜」
PCに向かう二人。女子社員と話す坂田をちらっと見る志保里。 

○オフィス (夕方)
10名ほどの社員がPCで作業している。大量の資料を持って自席に戻ってくる志保里と知紗。席に着くと知紗は伸びをして、志保里は資料に突っ伏す。

知紗「マジ疲れた〜志保里のおかげで助かった。明日のクライアント提案なんとかなりそうだね…」
知紗は資料を片付けながら、志保里の横顔をみて、
知紗「あ、今日のシャドウ色可愛いよね」
志保里はバッと顔を上げて知紗の方を見る。びっくりして手を止める知紗。
知紗「え、何ごめん変なこと言った?」
志保里「いや、だよね。気に入ってんのこれ。ありがとう」
知紗は少し笑って再び資料を片付けだす。志保里は俯いてボソっと呟く。
志保里「薄いも濃いも私の勝手だっつの…」
知紗「え?なんて?」
すっと立ち上がる志保里。驚く知紗。
志保里「よし、決めた。明日は攻め気だ」
首をかしげる知紗。

○デパート 入り口扉前 (夜)
小さな買い物袋を2つ持って出てくる志保里。満足そうな表情。

○志保里の自宅マンション 自室
朝日が差し込む。鏡を見て丁寧な手つきでメイクをする志保里。

○オフィス
オフィスの扉が開く。志里がオフィスに入ってくる。

いつもよりかなり濃いめのメイクで、レッドのアイシャドウがキラキラ輝いている。颯爽と歩く。志保里を二度見する社員たち。

志保里が席に着き、知紗に挨拶する。
知紗「おはよ...おっ!アゲてきてんね」
笑顔で頷く志保里。

坂田が二人の自席の方に歩いてくる。
坂田「臼田〜、あの資料上がった?」
志保里の顔をみて少し驚く坂田。
坂田「え、 何今日デート?…あ、これダメなやつか!」
自分で笑う坂田。無表情の志保里。
呆れた表情で坂田をみる知紗。
知紗「坂田さん」
坂田「ごめん冗談冗談。いやーでも良いと思うよ!いつもよりは!真面目に」
笑いながら志保里を見る坂田。

志保里は坂田の目をまっすぐ見つめて、ゆっくりと話す。

志保里「今日のメイクも私は好きだし、さっぱり薄めのも気に入ってますので…。聞いてもないのに評価しないでくださいね、真面目に」

静まり返るオフィス。

目が点になる坂田をみて、早口でまくしたてる志保里。
志保里「あ、資料と、あとこれ多分坂田さん似合うのでプレゼントです、気が向いたら使ってください。追加の資料今からやりますので、提案資料最終チェック、お願いします」
坂田に資料と小さい袋を押し付けるとPCの方にむきなおって作業を始める志保里。しばらく固まる坂田。

坂田「え...あチェックね、急ぐわ。ありがとう。こ、これも...」
首を傾げて手に持った袋を見ながら急ぎ足で席に戻る坂田。

椅子を少しスライドさせて志保里に近づき、小声で尋ねる知紗。
知紗「...なになに。何あげたの」
志保里「魔法、おすそ分け」

○坂田の自宅マンション  洗面所
志保里が渡した袋と開けられた白い小箱が洗面台の近くに無造作に置いてある。洗面所の鏡の前で、ヘアバンドをした坂田が立っている。手に持ったマスカラをじっと見つめ、恐る恐るまつげに塗る坂田。
坂田「お、お〜」
嬉しそうな表情の坂田。

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