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イサベラ島 ウルビーナ・ベイ|ガラパゴス旅日記

イサベラ島南部のプンタ・モレーノを後にしたマーベル号は、一夜をかけて北上し、次の寄港地、イサベラ島の中部ウルビーナ・ベイに到着した。ウルビーナ・ベイは、アルセド火山が作り出した山麓に位置し、野生のゾウガメとリクイグアナの繁殖地として知られている。

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毎朝6時、真東から昇る朝日を見る。太陽はそのまま垂直に上昇する。正午、ギラギラ眩しい太陽は頭のまっすぐ上、中天に達する。そして夕方6時、太陽は大海原を越えて真西に沈む。視界を遮るものは何もない。夕日を受けて海は黄金色に、空は茜色に染まる。やがて空の茜色は端の方から群青色に溶けこんでいく。太陽が沈むとそれを追いかけるようにして今度は東から大きな丸い月が上がってくる。闇が海を支配しても月の光はますます冴えわたっていく。輝きはそのまま海に投射され、一本の明るい月の道をつくる。月の道の上には数え切れないほどの銀の波が、まるでトビウオの群れのように跳ね上がっては消える。

真東から真西。月も太陽も完全な半円軌道を描く。昼12時間。夜12時間。私は毎日この光景を目の当たりにした。そしてこの風景の真っ只中にいた。緯度ほぼゼロ度のガラパゴスで、春分の日に近い3月を過ごすことができた恩寵である。しかも赤道直下にもかかわらず全く暑くない。むしろ涼しいくらいだ。夜風に吹かれるにはウィンドブレーカーがいる。ガラパゴス諸島を取り巻く寒流のおかげだ。その風を肴に、ビールを飲む。もし、こんなところで若い男女が過ごせば、たちまち恋におちてしまうだろう。

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月3回以上は更新する予定です。 公式Twitterにて感想、コメントを書いていただけると嬉しいです。 *後に書籍化されるもの、カットされるものも含まれます。 【写真撮影】阿部雄介 *地図はジオカタログ社製世界地図データRaumkarte(ラウムカルテ)を使用して編集・調製しました。 Portions Copyright (C) 2020 GeoCatalog Inc.

ガラパゴス諸島を探検したダーウィンの航路を忠実にたどる旅をしたい、という私の生涯の夢がついに実現しました。実際に行ってみると、ガラパゴスは…

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