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「大人にだって叶えたい夢がある」

ある日のおやつタイムの時のことだ。娘は好物のグレープフルーツを口に運びながら「ふみちゃん、将来はお医者さんになりたいんだって」「それから、せいちゃんはコックさんになりたいみたい。お家がレストランしているから跡を継ぎたいとか言ってたよ」とつぶやいた。これは私に言っているのか?まぁ、同じテーブルを囲んで一緒におやつをタイムをしているのだから私に話しているのだろう。私は娘の口に次々と運び込まれるピンク色に輝くグレープフルーツを眺めながら(すっぱくないのかなぁ。よくそんなに食べれるなぁ)とそんなことを考えていた。ちなみに、この時の私のおやつはコーヒーとチョコレート。おやつはいつでも人を元気にしてくれる。しかし、嗜好品は人それぞれである。

勘違いかも知れないが娘が私の反応を伺っているようにも見えたので「へぇー。お医者さんにコックさん。いいじゃない。どちらも素敵な夢だね」と答えた。これは本心でそう思ったからだ。そして、しばらく沈黙が続いた後、先に言葉を口にしたのは私の方だった。だって、そうでしょう。この流れなら、あれを聞かなきゃ。あの流れに持ち込むべき時でしょう。「それで、chanは将来、何になりたいとかあるの?」ちなみにここで言うchanとは娘の愛称である。すると娘は、さもそう答えることが最初から決まっていたかのように「それは、内緒!」と言い放った。「内緒」「忘れた」この二つは遠い昔少女だった私がそうであったように、子どもが何かを言い逃れるときの定番の答えである。「内緒!」と言われてしまってはもう話は続かない。「そうかぁ。いつか教えてよ」と私は言葉を続けた。この内緒を追求したところで、娘にはそもそもまだ将来の夢がないのかもしれないし、あったとしても今すぐに聞き出さなければならない理由などないからだ。すると、今度は娘が口を開いた。「お母さんは、将来の夢って何だったの?」と。私は、オレンジジュースを飲みながらそう尋ねる娘を見ながら(柑橘系に柑橘系系とは・・・どれだけ酸味好きな娘なのだ)とまるで妊婦さんかのような娘のその味覚を疑いつつもこう答えた。「そうだね。小さい頃は作家になりたかった時期もあったよ。あとは、トリマーにも憧れていたかな」      私の答えに娘の興味を刺激するような要素はなかったのであろう。   「ふーん」とだけ返事があった。

コーヒーのおかわりをして、私は話を続けた。「でも、お母さんにはまだ夢があるからね」と。すると、娘は少し困惑した様子で「大人になっても夢があるの?」と独り言をつぶやくように聞き返してきた。決して聞き逃してはならないつぶやきだ。「あるよ!ある!大人になっても、叶えたい夢はたーーくさんあるよ」私がこう答えると。娘は当然、「じゃあ、お母さんの叶えたい夢って何?大人の夢ってちょっと気になるな」と言った。      どうやら、娘は幼き日の母の夢より、現在の母の夢の方に興味を持ったようだ。そこで、私はすかさず「それは、内緒!」と言いたかったが、本当にこのタイミングで言い放ちたかったが、その言葉はグッと胸にしまいこんだ。だって、「内緒!」と言うセリフは娘達には許されるが、私がノリと勢いで安易に使ってはいけない言葉のように思えたからだ。そして、私はもう一度、気を取戻し「本を出版してみたいな。人生に1冊でも著書があるのは憧れだな」「いや、1冊と言わず何冊か」そう言った。これは本心である。  「あとは、ラジオにも出てみたいな」お喋りが大好きな私は昔からラジオ出演に興味があるのだ。(ちなみに声には全く自信がない)        更に加えて「ことのは教室をもっと子ども達に寄り添える教室にしていきたいな。外国人の子ども達やそのお母さん達を対象にしたレッスンもしてみたいし、いつかは海外に住む日本人の子ども達にも日本語や言葉を教えてみたいな」と続けた。こうなると、もう、私の妄想はどこまでも暴走し、制御不能となった。「ことのはが世界進出かぁー。そうなったらchanも、教室の仕事を手伝ってね」「という事で英語の勉強は必須だね」「やっぱり、教室を開くならこれからは東南アジアの国がいいかな。シンガポールやベトナムなんかもいいよね」「寒いの苦手だし、南国ライフよ~私を待っていて~」とどこまでも話し続ける私に対する娘の視線は言うまでもなく、冷ややかなものだった。妄想はここからが面白くなってくるのだとまだまだ、話しを広げようとする私を横に、娘は「ごちそう様でした」と言い、いつもそうするのと同じように自分のコップと皿をまとめてシンクに運んでいた。母の夢語りタイム、これにて終了である。ゴーン。「ゲンジツセカイニモドリマス」                  それでも最後には「お母さん、頑張ってね」と言ってくれたのがせめてもの救いであり、娘の優しさである。確かにそう聞こえた気がするけど、その言葉が空耳でないことを切に願う。

「tomoちゃんは、大きくなったら何になりたいの?」そんな風に周りから聞かれたり夢を語っていたあの頃から、随分の時を経て、私は大人になった。(身体は本当の意味でも大きくなったが、心の方はどうだろう。いつでも大きく広い心の持ち主でありたいと願う)                「tomoちゃんは、大きくなったら何になりたいの?」と夢を聞いてくれる人は周りに居なくなったけれど、大人になった今尚、私にはまだまだ叶えたい夢がたくさんある。中にはもちろん、願望や欲望的なものも含まれてはいるが、夢は決して子ども時代のものだけではないし、それらを語ることもまた子どもや若者に限られた特権ではない。私は私の叶えたいその一つ一つの夢と向き合い、少しずつでも良いから近づく自分でありたい。たとえその一歩の歩幅が小さくとも、歩みは緩やかでも構わない。叶えたい夢への一歩だと信じて、今もこうして私は文字を綴っている。

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