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夜中のトイレ(怖・短編小説)

『母ちゃん、、おしっこ、、、』

幼かった私はいつも夜中に母ちゃんを起こしていた。

母ちゃんに手を引かれ、廊下の先にある便所に連れて行ってもらっていた。

まだその当時はぼっとん便所で、覗き込むと汚物の甕から何かが出てきそうだった。

必ず母ちゃんが先に扉を開けて中を確認してくれた。

『しっしっ』

そしていつも《何か》を追い払ってくれた。

だから安心して毎日おしっこが出来た。

ある日扉を開けた母ちゃんが、、

『あれ?、、、、』

怪訝な顔の母ちゃんはいつものように《何か》を追い払う事も無く便所に入れてくれた。

次の日も、次の日も、、

そして数日後、村で葬式が執り行われた。

男やもめの亀吉の葬式だった。


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