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初めて聞いた父の声。

私が実の父宛に書いた手紙は、今日父の入院先に届いたそうだ。
父の手紙には私のスマホの電話番号が書いてあったので、病院から電話が朝かかってきたのだが、てっきり父が電話をかけてきたと思ってしまって、私は心の準備も出来ず、そのまま電話に出なかった。
何をどう話をしていいか、全く整理がついてないんだもの。
父とは40数年ぶりだから、ほぼ初めての人と電話するに近い。
私はそのまま、精神科の診察に行ってしまい、午後家に帰ってくると、また病院から電話からかかってきた。
もう流石に無視することは出来ない。
私は覚悟して、電話に出た。
電話は多分看護婦さんだったと思う。
「病院に電話してくれたら、電話を繋げる事は出来るので、病院に電話してあげて下さい。」と言われたので、折り返し病院に電話をかけて、父に代わって貰った。
父の第一声は「もしもし。」だった。
これが父の声なんだ。父はこんな声をしてたんだ。
戸惑いながらも、最近になってお父さんの戸籍を辿って、やっと入院していると分かった事を話しした。
そしてお父さんと弟に会いたいと言った。
お父さんは胃の病気で、もうすぐ手術することになっているらしい。
でも暫くはずっと入院しなきゃいけないらしい。
お父さんはずっと返事ばかりしかしなかった。
きっと何を話していいのか、父も分からないんだろう。
父はずっと1人で生きてきたらしい。
どんな暮らしをしていたのかは、詳しくは聞けなかったけど。
弟との交流は無いらしく、今はどこに居るのか知らないらしい。
お父さんから弟を辿るのは無理になってしまった。
これはまた別の方法で辿る事にする。
それから、私はどうしても聞きたいことを1つ聞いた。
「私に会いたいって思った事は無かった?」
父は黙っていた。
何も答えられない感じだった。
「私はお父さんにずっと会いたかったよ。」
父は「うん。」と返事だけした。
「私の事は忘れてしまってた?」
「そんなこと無いよ。」
と父は言った。
酷な事を聞いたかもしれない。
母にも後で「そんな責めるような事言うたらあかんやん。」って言われたけど、でもどうしても知りたかった。
責めるつもりも、悪いとも思ってない。
父の事がもっと知りたいだけ。
あまり長い時間は電話したら悪いと思って、最後に「これから手紙や電話かけてもいい?」と聞くと、「うん、いいよ。」と言ってくれた。
これから手紙と電話の交流をして、お父さんと少しずつ距離を縮められたらいいなと思っている。
ただ父の声を聞いた時、感動みたいなものがあるのかな?って思ったけど、思ってた感情が湧かず、ちょっと戸惑っている。

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ふくまる@ホテルで障害者雇用で働いてます
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