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またやられた。

※本noteは、スマートフォンでの閲覧を推奨いたします。

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「新しいテキストサイトのあり方を考える」

というのが、今回のお題であった。

僕はやられたと思った。確かに、今の時代に合った企画だ。

良い企画は、聞いたり見たりしたその瞬間に直感的に良いと感じるものである。僕はまたあの敗北感にうちひしがれていた。

こういう斬新な企画を見るたびに、いつも悔しい気持ちになる。

一体今まで、何度アイツにこの気持ちを味わわされただろう。そしてこれから何度、この気持を味わうんだろう。

でも、そんな経験をするたびにいつも思う。

「次こそは」って。

そして例に漏れることなく、この日の僕も同じ事を思っていた。

僕は、再び動き出すのであった。

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そして一週間後、再びその時がやってきた。

会議が始まるギリギリの時間まで企画を考えていた僕とは打って変わって、会議室でアイツは同僚と楽しそうに談笑していた。

「絶対に負けねけぇ...」

そう自分に言い聞かす。

そして会議が始まり、僕は自分の企画をプレゼンし始めた。

今回のお題は

「あっと驚く、記憶に残る文章を考える」

であった。

会議室に、僕の声が響く。

「苦しんだり、時間をかけたものって、特別な感情がわきますよね。」

そういって、スライドを画面に映す。

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僕は話を続ける。

「そういう、特別な時間や体験を与える企画を考えました。ありふれた文章に見せかけて、縦読みで本当に伝えたい事を入れ込むんです。先程のスライドのように!」

僕はアイツに見せつけるかのように、意気揚々と話した。

どうだ、今回は俺の勝ちだ!悔しいだろう!そう言わんばかりに話し続けた。

プレゼンを終え、僕は席についた。

そして順は巡り、アイツのプレゼンの番が来た。

彼は立ち上がり、ゆっくりとした口調で話し始めた。

「今回は、彼の企画が一番素晴らしかったと思います」

僕を指差しながらそう言った。そして横目で僕を見つつ、無表情なままでスライドを投影した。

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僕は心の中で喜んでいた。

アイツが、僕を認めた。アイツに、勝った!

しかしその喜びも束の間、彼はこう言った。

「でも、僕の企画は彼をもひっくり返す。先程のスライドを一行づつ、逆に読んでみてください。」

君の企画が、一番だ。
わずかな希望は、もう捨てよう。
それを認めてしまったら、もう終わりだ。
誰にでも、簡単にはできない。
あっと驚き、記憶に残るものを作ること。
みんなも、そう言うだろう。
やっぱり君には勝てないや。
今はもう、そう思わない。
僕の企画が、一番だ。

僕は思った。またやられたと。

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今年みた、いいなと思った広告や企画を元に、エッセイ風の記事を書いてみました。

「またやられた」「悔しい」「次こそは」

本気で生きてる僕たちは、何度もこの気持を味わったことがあると思う。

僕はこの時生まれる感情が、上手く言えないけど大好きだ。

悔しいんだけど、ワクワクしてる。絶望と希望が渦巻くこの瞬間。

もしこの感情に名前をつけるのであれば、

「悔揚(こうよう)」

とでも言うのが良いのだろうか?笑

悔しくも、高揚している複雑な気持ちだ。

この気持ちを忘れずに、次はアイツに勝てるように。

さあ、今日も一日頑張ろう。

※このお話はほとんどフィクションです。

参考:
一行文庫
【西武・そごう】わたしは、私。



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