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「建築資料の後ろ側 アーカイブズに関わる仕事ー日本と海外の事例から」ログ

昨日,下記のレクチャーを聞いてきたので,簡単にログをば.
あまり聞く機会のない分野でしたので,興味深かった.断片的なのでご容赦を.

講演者:藤本貴子さんについて

磯崎新アトリエ勤務のち、文化庁新進芸術家海外研修員として建築アーカイブズの研修・調査を行う。現在、文化庁国立近現代建築資料館建築資料調査官。

アーカイブの仕事とは,展覧会や出版物になる前の資料整理.
磯崎新アトリエの秘書─広報用資料の管理などをやっていた.その後,コルビュジエ,アアルト,ミラーレス財団でのインターンで国外のアーカイブ状況の勉強をしてきた.
色々なとこを回ったが,アーカイブは色々な組織の形があり,管理方法なども色々だが,基本的には閲覧・公開する,というところが共通していた.
日本ではあまり閲覧・公開が進んでいない状況にある.


海外の事例について

アメリカ議会図書館

1800年頃設立.トマス・ジェファーソンビルディング.ジョン・アダムスビルディング.ジェームス・マヂソンビルなどからなる.
元々はトマス・ジェファーソンの蔵書から始まった.
各国の書籍コレクション.映像や音声,音楽,地図,コミック,新聞,電話帳など多数集めている.もっとも公共性の高いライブラリと言える.1億6,400万アイテム(2017年)が登録されている.しかし,これは「群」として登録されているものなので,実際にはもっと多くのものが収蔵されている.
スタッフは資料の登録20人,レファレンス6人,デジタル化・資料整理...それぞれのところに建築専門の人がいる(10名程度?).


インターンでは,ヴィクター・ランディーという建築家の資料を整理した.グロピウスに習った建築家.ニューヨーク万博のスナックバー.フロリダ・サラソタの教会.租税裁判所などの作品がある.

資料整理の仕方について
大きな倉庫にまず入れられる.受け入れたばかりの資料は状態を悪くならないように低温・低湿度で保管.
建築資料は(図面など)資料の数が多いので,まずはざっくりと整理する(群として).その後,資料請求などがあった時に改めて細かく.


フィラデルフィアの会員制の図書・博物館

フィラデルフィアの地域に特化したアーカイブ.地図から建築をたどることができるシステムがある?.


アーキテクチャアーカイブス─フィラデルフィア(正式名称よくわからず)

ルイス・カーンの資料やヴェンチューリの資料などがある.模型,石のサンプルなど自由な発想で資料を集めている.大学のアーカイブなので,建築学科の授業などで資料を使う.


シーザー・ペリ事務所のアーカイブ室

アーキビストを専門で一人雇っている.ある程度整理したらイェール大学へ寄贈.イェール大学はアーカイブがしっかりしている(らしい).


SOM

事務所の中にアーキビストがいる.設計者が資料を使うために資料整理がなされている.


ランバートンオープス(?)

考古学的な資料を中心に保管しているアーカイブ.フィリップ・ジョンソンなどの資料がある.フィルムの保管を冷蔵庫のようなところに入れて保管している.デジタル化してしまって,二度と出さないという状況にしてから保管するという徹底的な姿勢.


コルビュジエ財団

図面が35,000点.ドキュメント類が40万点.
スタッフは9名ほど.財団自身がお金を稼いでいる,という珍しいタイプ.なぜならコルビュジエ財団自体が建物管理しており,著作権料なども取れる.


ピエール・シャローの「ガラスの家」

アメリカ人の建築家が購入して住みながら公開している


アントワープのアーカイブ

建築資料を持たないアーカイブ.ネットワークを保有している.建築資料の整理の仕方などを発信している.


OM・ウンガースのアーカイブ

自邸のあとに娘が始めた財団.あまり資料整理は進んでいない?
↓ウェブサイト教えてもらいました(2018/06/28)


アアルト財団

1969年アアルトによって設立.1976年からアーカイブ化を開始.20万件あるうち15万件がすでに整理完了している.


建築アーカイブズとは?


図面・写真・スケッチ・スライド・書籍・メモ・模型・家具など...多種多様なものが対象となる.また,収集する組織の性格・目的によってアーカイブの形も変わる.
アーキビストとは,それらを専門とする公益性の高い仕事.日本ではあまり活発ではない.


日本の動き

1986年建築博物館調査委員会
1994年建築博物館基本構想─実現しなかった
2000年近現代建築資料総合特別委員会

建築資料の散逸・減失や海外流出が問題となる

2012年に近現代建築資料館が設立

しかし,閲覧・公開までは考えられてなかった


アーカイブとは?

デジタルアーカイブ→目録を管理する,ことが重要.
アーカイブのデータベースとデジタルアーカイブは一緒にできない.
長く持つデータをどのようにつくるか,が重要である→「インフラ」づくりのような仕事


アーカイブ活用の多様化・促進化について

展覧会─活用の一形態←閲覧・公開について
しかし,展覧会は大変→やると資料整理が進まない
一方で,やるといろんなところに波及していく.新たな研究や展示がなされるようになる.


活用の多様化・促進化─つくった「インフラ」をさらに整えるようなもの



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