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XR空間を考える

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来たるべきパラレルリアルの世界へ向けて,XR空間について考える. 主として建築を参照しつつ新しく生まれつつある空間への思考を深化させるための断片記noteです.気になった方はまず…
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#建築

都市景観についてのノート

パーソナルな世界実写版『ゴーストインザシェル』などで描かれている多言語の看板が入り混じる都市風景に違和感を感じていたが、ウェアラブルデバイスやインプランタブルデバイスで文字をリアルタイム翻訳して表示言語の統一化をはかれるようになると考えれば、その風景に自分が違和感を感じてしまうのもなるほどなと感じた。 リアルタイム翻訳が浸透すれば、今のように日本語の下に英語、中国語を書く必要もないしいちいち表示選択もする必要がないので、むしろ広告のありかたがスッキリするのではないか。そし

建築学生にとってソーシャルVRでのワールド制作が良いかもしれない話

本記事はワ探アドカレ12/16の記事です。 はじめに大学の建築学科などでは「設計課題」という、独自の演習授業があります。 いわゆる「建築家・設計者」や「空間デザイナー」と言った職能を目指す学生にとっては、実際に手を動かしながら学習ができる楽しい楽しい授業です。 筆者も大学では建築学科に所属していたので、学生時代はこうした課題に打ち込んでいました。 今自分は、VRChatワールド探索部で色々なワールドを巡ったり、たまに自分でワールドをつくってみたりしているわけですが、学生の

ワールド探索日記 2022/9/25

Acro-Exhibition By sisidoakuroVtuberとして活動する宍戸あくろ氏のポートレイトやグラフィックなどの制作物を展示したワールド。 「夏にとける。」という展覧会名を体現するようなワールドが興味深かったです。大きくポスターが貼り出されたバス停から始まり、強い日差しが差す坂道を登っていくと、堤防と海。海に面して建つ美術館らしき建物に大きく吊られたポスターの色味を周囲の白さがより引き立てています(内部に入ってポスターを見ると裏側から透けて見えるようにな

「現実を切り取る技術」から新しいコミュニケーションや表現が生まれてくる――フォトグラメトリワールドの"現在"「VoxelKei × 龍 lilea」インタビュー

複数の写真や動画を解析し、3Dモデルを立ち上げる技術「フォトグラメトリ」。 数年前までは高価なソフトが必要になる専門的な技術でしたが、近年では「iPhone 12 Pro」や2020年以降の「iPad Pro」にLiDARという技術が実装されたことでスマホだけでも簡易なフォトグラメトリが行えるようになったことで、一般的な認知度が上がっています。 写真や動画から3Dモデルを生成するため、まるで基底現実を切り取ったかのようなモデルを生成できるこの技術ですが、VRChatをはじめ

「自分の空間」をつくる(VRChat篇)

この記事は、AEC and Related Tech Advent Calendar 2020 の11日目の記事です。AECのV寄りの記事です。 ※本投稿は1初心者VRChatユーザーの私見です はじめに─「野良の空間」の時代2020年現在、VRSNSの「VRChat」にはさまざまな種類の無数のVR空間が日々たくさん現れている。 VRChatに日々アップされるVR空間の数がどれくらいになるかを正確に把握する方法を持ち合わせてないが、VRChat上に存在する「ワールド」(V

バーチャル空間で建築見学!─メタボリズム・クオンタイズド ~旧都城市民会館3D Digital Archive~ワークショップレポート

菊竹建築設計事務所が設計し、1966年に竣工した旧都城市民会館。 老朽化などを理由に、惜しむらくは昨年解体されてしまった本建物ですが、有志によって実測が行われデジタルアーカイブとして残されています(経緯は下記のnoteに詳しく書きました)。 本プロジェクトは第23回文化庁メディア芸術祭(以下、メ芸)のエンターテインメント部門審査で委員会推薦作品に選ばれるなど一定の評価も得た、これからのデジタルアーカイブ活用において先見的なプロジェクトと言えるでしょう。 この度、デジタルア

未来のファッションモール「アバターショーケース」を建築視点で見てみる

みなさん、FUKUKOZYです。 この度、バーチャライターとしてバーチャルマーケット4のワールド紹介の記事を書くことになりました。 来場者が会場に展示された3Dアバターや3Dモデルなどを自由に試着、鑑賞、購入できる、バーチャル空間最大のマーケットフェスティバルです。 バーチャルマーケットは、その開催を通じて「バーチャル空間を発展させ、豊かにする」ことを目指します。 バーチャルマーケット4のテーマは「パラリアルワールド」。物理世界とバーチャル世界を自由に行き来できるようにな

【VRCワールド紀行】揺蕩う未来─「水の休息所 -Underwater Lounge-」

いま、さまざまな種類の無数のVR空間が現れている。番匠さんが言うところの「空間楽」によって、「個性的な現実群」がどんどん増えている。そんな「個性的な現実群」を巡りながら考えたことを綴っていきたい。 人は陸の上だけが世界だと思っていますが、海の中も一つの世界なのです。地上の法律の及ばない平和な世界です。ここには、人間を抑えつける政府や権力をふるう者はいません。誰でも、平等で自由でのびのびと生活ができるのです。 海底二万里/ジュール・ヴェルヌ イーロン・マスクのSpace X

「都市とモビリティ 〜自動運転車時代の都市を考える〜」メモ(トヨタ「Woven City」をきっかけにver)

トヨタが静岡県裾野市にコネクティッドシティである「Woven City」の計画していることを発表しました.これをきっかけに自動運転と都市の関係を考える機運が出てくるといいですね.ということで2018年5月29日に書いた自動運転と都市についてのレクチャーメモを少し加筆して再掲載します. 先週金曜日5/25に自動運転とまちづくりについてのレクチャーを拝聴してきたので,簡単に備忘録.自動運転の議論が建築・都市でも盛り上がるといいな. (2019.08.26追記) ご著書が出てま

VRAA01に携わりました

こんばんは。 FUKUKOZYです。 本記事はxRArchiアドベントカレンダーの4日目の記事として投稿します。 前回は龍 lileaさんによる「Reality Capture エラーと対策」でした。 xRArchiについては、もう説明は必要ないですよね。 「え?知らないよ!」 って方はこちらの記事で少し触れていますので、ぜひご覧ください。 さて、上記記事の続編として2019年は「VRAA01」というイベントを行い、運営に関わりました。その私的なまとめを今年の振り

複数の世界を横断する─点群、自動運転、フォトグラメトリ、ゲーム

機械が認識するための世界、限りなく現実に似ているけど「楽しさ」を追求されるようになった世界、現実の雰囲気だけを取り出したような世界...etc 現在、私たちの肉体があるこの「現実世界」を起点として、さまざまなバージョンの世界が生み出されるようになっています。 世界が複数あることをきちんと認識し、それらをうまく享受しながら複数の世界を横断的に楽しむ、そんな時代がくるのではないかと思わされます。 最近、VRChatで体験してきたふたつの「ワールド」から、そんなことをゆるゆると

バーチャルマーケット3の思い出─空間構成について

バーチャル空間上展示即売会「バーチャルマーケット3」が9/30で終わりましたね。 普段、VRChatはひとりでワールド黙々と巡っている僕は今回も自分のインスタンスに閉じこもって黙々と回っていましたが、非常に楽しかったです。黙々と回っていると、より一層ワールドの空間構成などに目がいきます。 そのあたりはいろいろ議論があったようですが、ロジカルに組み立てられていることが明かされたりと、ちゃんと思想が持ってつくられたことが表明されています。 こういうワールドがつくられるのはとて

建築の3次元デジタルアーカイブの未来はどこへ?─『旧都城市民会館』3DDAトークセッションレポート

菊竹建築設計事務所によって設計され,1966年に竣工した都城市民会館. 変わらない部分と社会の変化や技術の発展によって変わっていく設備などの部分を分け,屋根は部品化された部材を用いて,交換可能なものとして設計されたメタボリズムの思想が取り込まれた建築である. 鉄筋コンクリートの基壇の上に鉄骨屋根架構が載る特徴的な形態を持ち,まるで昆虫のような独特な姿が印象的だ. 旧都城市民会館の「残る部分」 竣工してすぐに掲載された建築専門誌『新建築』の解説で,菊竹氏は「残る部分」につ

建築は、浮かぶ、歩く、変容する─アーキグラム「建築を情報に還元する」

本記事はVR空間デザインコンテスト「VRAA01」のために執筆された記事を転載したものです. 「VR Architecture Award(VRAA)」では、 “Architecture” は狭い意味での建築ではなく、空間の「アーキテクチャ=構造・仕組み・設計思想」を表します。 ここ「知る」のページでは建築の世界の過去の試行から「Architecture」について考えてみたいと思います。 *** 建築界のビートルズ 建築とは、おそらく、われわれをとりまく日常の世界にたい