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日々雑感2018

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テキストなどを放り込んでいく場.基本的には読書録・映画録になると思います.2018年は精読を心掛ける!
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2018年5月の記事一覧

ゲームはなぜ面白いのか?──『ハーフリアル 虚実のあいだのビデオゲーム』

「ちょっとだけ!」と思って、ゲームをやり始めて気づいたら何時間も経っていたという経験がみなさんありませんでしょうか。 かく言う私も数年ぶりに本格的にゲームをやるためにPS4を昨年に購入しました。早速『ドラゴンクエスト11』をやり始めたら、2日でプレイ時間が20時間になっていた…なんてざまです。 なぜ、ゲームはこのように時間を忘れて人を熱中させる力を持っているのだろうか? そんな事をみなさんは考えた事がありますか。 そんな素朴な疑問を起点としてさまざまな学術的な研究とし

ゲーム学の始まり?─『ゲームする人類—新しいゲーム学の射程』

日本ゲームよ、逆襲せよ! 日本ゲームの本質とは何か。どんな歴史をもっているのか。どんな語られ方をしてきたのか。どんな才能が集まり、どんな作品が生み出されてきたのか。そして、どんな未来を迎えようとしているのか? インベーダーゲームのころからゲームに注目し、『ポケットの中の野生』を書いた中沢新一と、『現代ゲーム全史——文明の遊戯史観から』でいちやく脚光を浴びた気鋭の批評家中川大地が、「ゼビウス」でゲームの歴史を塗り替え、今なおゲームデザインの最前線を走り続ける遠藤雅伸を招いて、日

自分たちの生きる都市・時代について思いを巡らす|『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』

4/28より上映が始まった都市活動家・作家のジェイン・ジェイコブズのドキュメンタリー映画を視聴。建築学徒にとっては必読書と言われるジェイコブズ著の『アメリカ大都市の死と生』だが、実際のところ、本書が著された1960年代のアメリカがどのような背景でジェイコブズがどのような活動を行ったか、そしてジェイコブズがどのような人物だったかは分からなかった。映像を通してその姿を見ることでより著書への理解が深まる内容であった。 お時間ある方はぜひ見に行ってみてください。 1961年に出版

「違和感」を肯定的に─『建築と日常 特集:平凡建築』

編集者・長島明夫氏による個人出版本『建築と日常』の最新号を読んだ。特集タイトルは「平凡建築」。 ここで語られる「平凡」とは要約するとこういうことだ ①「平凡」であるということは「並」であるということ。つまり、建築の基本的性能(雨風をしのぐ、など)を満たしていること。 ②人間が文化的に生活する安定した環境は大多数の「平凡」な建築の調和によって生み出されている。 ③ほとんどの人は「平凡」な建築の中で生活している。「住めば都」という言葉があるように平凡な方が愛着が発生しやすいの

立原道造─堀辰雄─風立ちぬ|『寝そべる建築』『立原道造の夢見た建築』

「田園」の建築家時代の転換期、モダニズムの零度に現われ、消えた、詩人であり建築家である立原道造。25歳で亡くなった彼が建築を学んだのは大学入学してからのたったの5年の間である。 しかし、こうして書籍に書かれ、ほぼ1世紀違う私の目や耳にまでふらふらと幽霊のように現われ、響きを残している。驚くべきことである。 詩人としての彼は有名ではあるが、建築家としての彼は「別荘建築家」として認知されている。「別荘」というと牧歌的、ユートピアのようなイメージを感じる。 『立原道造の夢見た

「ポスト・ヒューマン」について─『シンギュラリティは近い [エッセンス版]  人類が生命を超越するとき』

「人体は ──2030年代から2040年代には── さらに根本的なところから再設計されてバージョン3.0になっているとわたしは想像する。個々の下位組織を作り直すというよりも、われわれ(思考と活動にまたがる生物的および非生物的部分)はバージョン2.0での経験をもとにして人体そのものを刷新する機会を得るだろう。バージョン1.0から2.0への移行のときと同様に、3.0への移行もゆっくりと進み、その過程では多くのアイデアが競合することになる。バージョン3.0の特性としてわたしが想像す

「六次の隔たり」

インターネットは「知りたいことを知る」ためには最適なツールであると言える。現在、さまざまなデータがアーカイブ化され検索性が向上している。人びとは自分の知りたいことを知るためには検索窓を駆使し検索すれば事足りる。さらにはパーソナライズ化が進展したその先には「検索しない検索」の時代がやってくる。ありとあらゆる情報をアルゴリズムが本人に先立って提供してくれる。 パソコンとは「パーソナルなコンピュータ」だ。かつて、私たちのパソコンをインターネットに繋ぐためにはパスワードを入力するこ

調理済み言語

シュルレアリストとして名を馳せたひとりであるロベール・デスノスが提示した「調理済み言語」。それは身体の部位を指し示す語彙をその部位の個数だけ繰り返すという単純なものだ。 私は/指が指が指が指が指が好きだ それを言葉にしてみる(書いてみる)。それだけで使い慣れたありふれた言葉が何だか気味の悪いものとなる。まるで言葉自体が魔力を放つような表現になる。 言葉が文脈を持たずに、その言葉そのままで何かオーラのようなものを発する、そういう言葉を「物質的」と呼んでみる。 場所は何か

Unity BIM Importerについて考えてみる(とりあえず)

統合開発環境を含んだ汎用ゲームエンジン「Unity」のカンファレンス「Unite Tokyo 2018」に合わせて,BIMデータの取り込みを可能にする「Unity BIM Importer」がリリースされることが決定したことが発表された. 建築のあらゆるデータを3Dモデル上に取り込むことができるワークフローである「BIM(Building Information Modeling)」をUnityに簡単に取り入れることができるようになると,どうなるか少し考えてみたい.実務者で

マツコとマツコ

2015/4/5の日記を発掘。マツコロイド、どうなったんだろう。 ---- 昨日から始まったマツコ・デラックスと、マツコを基にしてつくられたアンドロイド・マツコロイドによるアンドロイドバラエティ番組『マツコとマツコ』は非常に興味深いし、面白いと思う。 マツコロイドを制作した石黒浩教授は自身のアンドロイドも制作していて、アンドロイドに合わせて自分を整形したという噂も聞いたことあるなかなかぶっ飛んだ人だそうだ... 何かで読んだけど、日本国内では今はあんまり人型ロボットがつ

世界の,意味の,想像の幅が広がること─『フラジャイル・コンセプト』

この写真は明らかにおかしい. まず,煉瓦の塊が浮いている(ように見える).これは明らかに重力に反している.下から上へ積まれて構造をつくり上げていくのが煉瓦造だが,その土台となる「下」が何もない. もうひとつ,ポツリと開けられたアーチ窓もおかしい.煉瓦造でアーチ窓をつくるためには煉瓦がアーチ状に積み上げられていなければいけない.にも関わらず,ここでは唐突としてアーチの開口が設けられている. じゃあ,なぜこのようなことが起きているのかというと,答えはこうだ. この建物

ハレルヤ! モーゼス─『評伝 ロバート・モーゼス 世界都市ニューヨークの創造主(マスタービルダー)』

ただいま上映中の『ジェイン・ジェイコブズ|ニューヨーク都市計画革命』にヒールとして登場しているロバート・モーゼスの評伝を読んだので,備忘録. 上記事でもちょっと触れたように上映中の映画では映画というメディア上,物語を分かりやすくするためジェイコブズvsモーゼスとした上で,モーゼスを「悪」としていました. しかし実際,現実はそんな単純な訳ではなく,モーゼスが徐々に凋落し始めていたところ,時代の後押しもあり,ジェイコブズがすごく力を得たという背景があるみたいです(映画は良いです