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ゴミ箱の中身を確認してから、ゴミを捨てよう

「ゴミ箱の中身を確認してから、ゴミを捨てよう」。何を当たり前のことを、と思うかもしれない。そう、当たり前のことなのだ。

実家で家族と暮らす、ある火曜の祝日のこと。天気も良かったので部屋の掃除をした。そこそこにゴミが溜まったので、ゴミを捨てに家族共用のゴミ捨て場に向かった。

この日は近所のゴミ捨て場に自らゴミ袋を持っていき、ゴミ捨てをした後だった。だからゴミ箱の中にはゴミ袋はないはずだ。蓋を取らずとも自明である。そう思い、新たにゴミ袋を出してきて、そこにゴミを入れた。

そしてゴミ袋を捨てにゴミ捨て場に向かい、ゴミ箱の蓋を開けると、そこには既にゴミの入ったゴミ袋が入っていた。「あっ」と思った。

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蓋を開ければすぐに分かったことなのに、「ゴミ袋は入っていない」と決めつけていたせいで、手元に残ったゴミ袋が向かうべき所在は失われた。

結局、自ら用意したゴミ袋のゴミを既に用意されていたゴミ袋に落とし、空になったゴミ袋は次回用にとっておくこととなった。最初から単純に蓋を開けてゴミだけ捨てれば良かったところを、二度手間である。ちなみに、既に用意されていたゴミ袋は几帳面な父によって用意されていたものだった。

さて、この現象を皆さんならどう捉えるだろうか。ゴミ袋を出したらすぐに私が新しいゴミ袋を用意しておけば良かったのかもしれない。それは確かにそう。けれど、今回ピックアップしたいのは、「ゴミ箱の中身を確認してから、ゴミを捨てるべきだった」ということだ。

再三再四、何故こんなに当たり前のことを言っているのかと言えば、この現象は本質的に「人間関係」にも同じようなことが起こっているし、もっと言えばコミュニケーション論として大切な要素を含んでいるのではないかということに気が付いてしまったからだ。

人間の話をしよう。人間は、「愚痴」を吐く。それはまるで、心の中に発生したゴミを捨てるかのように「愚痴」を吐く。「愚痴」に限らず、相手のことを思って言っているのではなく、自分に中に発生したゴミを捨てるための対話は全てあてはまる。こうした「自分のためのコミュニケーション」について、今回のタイトル現象から学ぶべきポイントがある。

ここで、心のゴミを受け止める側の気持ちを考えてみたい。愚痴を吐く方も人間なら、愚痴を聞く方も人間だ。ゴミ箱ではない。相手の心のゴミを受け入れるだけの余裕がある時もあれば、いっぱいいっぱいでむしろ自分が心のゴミを吐き出したいと思っているような時もある。人間とはそういうものだ。

今回のように、蓋を開けずにゴミを捨てようとしたらどうなるだろう。リアルなゴミ捨てでは、「あっ」とゴミが入っていることに気がついたから良かったものの、人間のキャパはどうだろう。相手がゴミを受け入れられないような状態に気が付かずに、相手にゴミを押し付けてしまってはいないだろうか。

ゴミ箱と違って、人間には物理的な蓋はついていないし、簡単に心のキャパシティを確認することは難しい。それでも、人間が持ちうる「想像力」というスキルを使って相手の気持ちを推し量ることはできる。

心のゴミをどうしても他人に吐き出したくなった時に、一度「想像力」を使える人間でありたい。自分中心の気持ちで、何の罪もない他人に不快な思いをさせないだろうか。もっといい吐き出し方はないだろうか。もっといい吐き出し場所はないだろうか。もっといい吐き出し時はないだろうか。

そういう「想像力」を使えれば、心のゴミの捨て方は今よりもっと上手くなると思う。上手くなる、ということはどういうことかと言うと、心のゴミを抱え込まず、かと言って他人に迷惑をかけることもなく、清々しい心を持てるようになるということだ。

「ゴミ箱の中身を確認してから、ゴミを捨てよう」ということは、コミュニケーション論として言葉を置き換えるなら「よりよい心のゴミの捨て方を考えてから、心のゴミを捨てよう」になるのかもしれない。

心のゴミを捨てるためのゴミ箱がいっぱいだということが分かったとしたら、捨て先を変えるという方法もある。SNSに愚痴を吐くよりも専門のカウンセリングに相談した方がいい、というように。

人間が生きていく以上、どうしても多種多様なストレスや不平不満といった心のゴミがモヤモヤと付きまとう。ゴミを出来るだけ捨てないようにするようにと頑張る人もいるけれど、よりよい「心のゴミ箱」を自分なりに持つということの方が大事なように私は思う。

「心のゴミ箱」には色々な形がある。食べること、寝ること、遊ぶこと…こうやって文章を書くことも、そういう役割を担っていることがある。自分にとっての「心のゴミ箱」とは何だろう。それを考えられていて明確に説明できる人は、実際のゴミ箱を使っている人よりも少ないのではないだろうか。

「ゴミ箱の中身を確認してから、ゴミを捨てよう」。当たり前のことかもしれないけど、コミュニケーション論としての「ゴミ箱の中身を確認してから、ゴミを捨てよう」になると、なかなかどうして当たり前にできなかったりする。

実際のゴミ捨ても、心のゴミ捨ても、ちゃんとゴミ箱を用意しておきたいと思う火曜の昼下がり。燃えるゴミは火・金、プラスチックゴミは水、土日は心のゴミ…というように「心のゴミの日」も追加しておいた方がいいのかもしれない。

投げ銭おまけコーナー
個人的にオススメな、心のゴミを掃除できる方法を3点ほど紹介します。

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