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本年度アカデミー賞受賞作『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』ネタバレあり

本年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞をはじめ、世界のドキュメンタリー映画賞を受賞したり候補になったりしている異色作。


オクトパスの神秘: 海の賢者は語る(2020年製作の映画)
My Octopus Teacher製作国:南アフリカ上映時間:85分



すごすぎて。。


タコ食べにくいよね、今後。。


**


精神を病んじゃった男性の話なので
かなり特異な状況が繰り広げられます。

タコもすごいんだけど
この主人公もすごい(変…)。

 
主人公、クレイグのヤバさがあってこそ
この「タコとヒトのラブストーリー」を成立させたし
観る人を説得させるだけの映像の量もちゃんとある。


だってあんな海に普通毎日入らんよね。
波すごいし、
サメいるし、オットセイも海で出会ったらめっちゃ怖いでしょうよ。


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「タコの寿命は1年」


「タコの寿命は1年」と冒頭で言うので
この物語の終焉が暗示されている。

※マダコの寿命は1〜2年のようですが

〝彼女〟の誕生日を誰も知らないので
その日がいつ来るのか予測できなくて
撮影日数が重ねられて
彼女とクレイグ関係が深まるにつれ
別れも迫っている、という
胸が引きちぎられそうな状況が続きます。


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タコの雌雄の見分け方。


雄は他のタコと縄張り争いで戦う機会が多いので
足についてる吸盤が大きくて乱雑に並んでいるそう。

また、雄の足は8本あるうち一本は「交接腕」と呼ばれる、まぁチンコ的なものであり、先端には吸盤がついていない。


ちなみにメスの方が味が繊細で美味しいとのこと(やめろ)。

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クレイグがタコと出会ってちゃんと雌雄を見分けつけてから〝彼女〟って呼び始めたのか
勝手に女設定にして「ほんとにメスだった!」って後でびっくりしたのかはわからない。


交接腕がないからメスだ、っていう説明があると安心できたのに。

いきなり〝彼女〟って言い始めるから
「やっぱクレイグやべえな」と心配になりましたよ。。

スクリーンショット 2021-05-09 11.05.46


人間といると天敵が近寄ってこない


〝彼女〟からするとおそらく
人間といると天敵が近寄ってこない、
っていう計算もあったかと思います。

実際、クレイグを利用してロブスター漁をしたりするし(すげーな!)。

でも確かにそれ以上の、
恋愛は言い過ぎだとしても
ちゃんと心のようなものを感じる交流は映像に残されています。

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そして〝彼女〟のラスト。。。

とにかくひとつひとつ驚きながら見た方がいいと思うので
この辺にしますわ。

第1回サメ戦の恐怖!

そして第2回サメ戦でのまさかの伏線回収っっっっ!!!


もうすごいのよ、まじで。


そして〝彼女〟のラスト。。。


〝彼女〟だったわけよね。
〝彼女〟の命の燃やし方よ。


どうしよう、、タコぶつとか食えないじゃん。。。


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ラストネタバレは以下に


第一回サメ戦で脚を一本失って彼女は、体がめっちゃ弱るものの100日かけて足を蘇生。

衰弱していく彼女を見るのが耐えられなくなって
今までその一線だけは越えなかったんだけど
クレイグは赤貝的なやつを剥いて彼女はたべさせようとする。
しかし彼女は食べなかった。

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第2回サメ戦。

昆布(ケルプ)に巻きついて身を隠してみるも、視力ではなく嗅覚で獲物を追跡するサメには関係なく、彼女は追い詰められる。

墨を何度も吐いて撹乱させようも、それも視力を頼っていないサメには無効なのが切ない。

陸上に逃げてみたりするも
そんなに長時間陸上にいられず
海に戻るとしつこいサメがまだいる。

そしてついにアレ。

100個以上ある吸盤で貝殻を体に吸着させ、丸い鎧の塊となる彼女。

これはクレイグとの彼女の出会いのときの姿。
脅威の伏線回収タコ!

しかしサメはその状態の彼女に食らいつきグルグルに回し始める。

悪いけど、貝を体に巻きつけたくらいでサメの歯を防げるとは思えず、、、
今まで何度も危機を乗り越えてきたけど
彼女の最後はサメには食われるのか、、と思っていたら!

彼女はサメの背中に吸着。
一番安全な場所。

サメはなすすべなく。

で、タイミングを見計らってサメの体から離れ岩陰に隠れる彼女。
サメは背中取られた時点で飽きらめついてたらしくもう彼女を追わない。

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魚と遊ぶ彼女。
魚と遊ぶのに飽きると彼女はクレイグの胸に飛び込み、クレイグに撫でられる。

クレイグ「彼女に触れたのはこれが最後だ」

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ある日、彼女の巣穴に雄のタコが。
イチャイチャしてる。交配。

後日出産。

卵を守るため彼女はずっと巣穴に隠れたままなにも食べない。

体は白くなっていき、目にも生気がなくなる。

ひたすらに卵に酸素を送り続け、
卵が孵化するのを見届けると、彼女は命を閉じる。

何十万もの孵化した幼生が夜の海を漂う。

巣穴にしがみつくこともできなくなった彼女は海流に押されて衰弱している。

小さな魚やヒトデが彼女の体をつっつく。
クレイグ「彼女を抱きしめたかった」

翌日、もはやほとんど生命体には見えない体になってしまった彼女はサメの餌食に。

サメは余裕な感じで彼女を口に入れたまま消えていく。

サメの口からはみ出た彼女の足が切ない。
あんなにも勇猛果敢で雄弁だった彼女の足。
もはやビニール袋のよう。

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タコの出産は一生に一回とのこと。
それを完遂し、卵の孵化にも成功した彼女。

産後の死はタコにとっては変えられない運命。

魚と遊び、クレイグの胸に飛び込み、
最後に出産と孵化をやり遂げた彼女の命の燃やし方よ。

ショッキングな最後だけど、彼女は完全に命を燃やし切った。

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クレイグは彼女の死をかなしむものの
「ちょっとホッとした。これでもう毎日彼女を追わなくて済む…。大変だった…」

↑このセリフがいいですね。
リアリティ。
これを言っちゃうクレイグの面白さ。

このセリフがあることで客観性もあって良い。

クレイグは、彼の息子(イケメン)と一緒に海に潜るようになる。

クレイグ「私は海から多くを学んだ。それを彼に教えたい。彼はすでに何よりも大切な〝優しさ〟を持っている」

ある日、子供のタコを捕まえる。

クレイグの指をまるで遊んでいるかのように行き来する幼いタコ。

「彼女の子供がどうかはわからない。でも時期もサイズと合う。彼女に再会できたようで嬉しかった」

生前の彼女の映像。
観察する目。
8本の足を器用に動かして泳ぐ彼女。
クレイグの唇に触れる彼女。

おわり

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徹頭徹尾クレイグの語りのみだし
息子さえも喋らないし
ひたすらにクレイグの体験と感想で綴られます。

だからこそ神秘的な体験が映像として説得力があるんだけど、

クレイグを映すカメラやドローンのカメラは存在する。

少なくとも海にもうひとりカメラマンが入っている。

その人物についてまったく言及がないのが、ちょっと不自然だったかな。

どう言う撮影スタイルかを明かしてくれた方がスッキリはするかな。

でもこの不思議な神秘性が消えちゃうのかな。

とくにサメ戦とかはおそらく映像を組み合わせてる?

『野生の王国』的な。

あんなにもばっちりサメVSタコを臨場感たっぷりに映像で語れないよね。

ドキュメンタリーがね、どこまで真実かってのはね。難しいよね。

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