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大好き!傑作!『泣く子はいねぇが』ネタバレあり

泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)
上映日:2020年11月20日 / 製作国:日本

監督
佐藤快磨
脚本
佐藤快磨
主題歌/挿入歌
折坂悠太
出演者
仲野太賀(太賀)吉岡里帆 寛 一 郎 山中崇 田村健太郎 古川琴音 松浦祐也 師岡広明 高橋周平 板橋駿谷

素晴らしい。

気になる箇所がないわけじゃない。

でも良い箇所、好きな箇所がそれを凌駕する。

いやぁぁぁぁぁぁ。。

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古臭い邦画じゃない。


ねっとりしたてカビくさい邦画じゃない。

かと言って嘘くさいキラキラドンチャン邦画でも、
ほっこり薄っぺら邦画でももちろん、ない。

ネオ日本映画ですよ!


**

ギャグもいちいち笑っちゃった。
ゲラゲラ笑いじゃないですけどね、クスクスと。

日本映画のギャグ=大袈裟で臭くて滑ってて寒くて気まずい
ものだったけど
ちゃんと面白いなんて。。

ありがとう。。。マジで。。。


**


罠が仕掛けられてますね、前半に。

でもまこれはネタバレだろうからぐっと我慢。
ネタバレは下の方に。

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まず観光映画なんですね。


男鹿の。秋田の。

上映前に男鹿のCMが流れたので
ゲッ観光映画か…と。。
観光映画って、、かなり期待値下がりますよね。。。

(あ、ちなみにこの男鹿のCMもオシャレなんですよ。ノーナレーションのノーセリフ。オシャレな作りでしたよ。)

その土地の文化に良いイメージ持ってもらうために
無駄に景勝地を回ったり
無駄に賛美したり。。
物語や登場人物はそのためにしか存在しないから、映画としてはイマイチなのが多いイメージ。


**


ネオ観光映画。

景勝地は回りますけど、
そこでめちゃくちゃやっちゃいけないこととかするし、、
そこを背景になかなか最悪な会話をしたりする。。


この映画の大モチーフである〝なまはげ〟自体も
ちょっとイジってる感あるし
結構マイナスイメージもちゃんと映してる。


で結局、僕が今どう思っているかというと
「男鹿に行きたい」
「男鹿にふるさと納税したい」
ですよ。


観光映画としても成立しちゃってる。
こんなにも○○な映画なのに。。。

これを許した男鹿の人たちに拍手っっ!

**

1989年生まれの若手監督


ネオ日本映画。

観光映画なんてのはこの映画の些細な要素です。

どちらかと言うと
1989年生まれの若手監督が作った日本映画ぶっこわし日本映画ですよ。


めちゃくちゃ日本映画ではある。
男鹿だし。
余貴美子出てるし。

しかし、
この映画がそのままスウェーデン映画だったり
キルギス映画だったり
チリ映画だったりしても
何の不思議もない。

どういうことなんだろな。
うまく言えないんだけど。。

距離感がいいのかな。



けして
よくある「新感覚ムービー」とかでは全然ないですよ。

褒め方わかんなくて「新感覚」って言わざるを得ない映画とは全っっっっ然違う。


**


ネタバレせずに書くのむずいんで、ネタバレ込みの褒めは下の方に。

この難しいバランスの映画を成立されたのは俳優の力です。
(つまりは監督の演出力っっっ!!!)

仲野太賀はもっっっっっちろんのこと、
吉岡里帆素晴らしかったですよ。

セリフなくてもじゅうにぶんに感情や事情を伝えられる女優さんなんですね。
『見えない目撃者』の演技も良かったけど、いやぁちょっとこれから恐ろしいですよ、この人は。


ネオ日本映画って言葉、ダサくてごめんね!


ネタバレ

こんなにも残酷な映画にしたのを、よく男鹿の人は許したもんだ。

でも、
この映画が素晴らしい人間讃歌であり、人生讃歌であることをちゃんと理解してくれたんだよね!
もうホントにありがとう、男鹿!

ただただ無残な状況を描きさえすれば良いと思ってる昨日観た映画とは全然違うよっ!!

仲野太賀のラストの「泣く子はいねえか!」の叫び。
そしてそれを許した吉岡里帆。
そしてなにより、〝なまはげ〟という〝願い〟がそれまでに描けていたから実現できたラストよ。

ラストの切れ味もホント最高。

映画として最高じゃん。

**

冒頭でこの映画の着地点が示されちゃったのかと思った。
罠でしたね。

なまはげってのは父と子の絆なのだと。
男はなまはげをやることで父親としての自覚を得る。

てことは、、
結局は仲野太賀と吉岡里帆がヨリを戻して
ちゃんとした家族になりましたぁっていう話かと思った。
観光映画だし。

もしもそうなったら、またくっだらねえ日本映画見ちまったなぁ!とイライラするとこだった。。

が、違った!!
すごい。
ネオ日本映画めっ!
こんにゃろ!

結局吉岡里帆は大学時代ラグビーやってましたみたいな強くて優しそうな男とそのままおそらく再婚。

仲野太賀は幼稚園に侵入してもどれが凪なのかわかんない。
(このシーンの残酷さっっ!)
成長した自分の娘がどれかわかんない。

なまはげとして
完全な〝他人〟として吉岡里帆と新しい旦那の家族が宴会やってるとこに侵入。

(どうやってあの家を割り出したの??)

吉岡里帆素晴らしいですね。いい女優になりましたよ。

ガラッと戸を開けて娘の顔を見せることを許可する。
この男はもう私の幸せを壊すような男ではないと吉岡里帆も判断したのでしょう。

なまはげと化した仲野太賀は
自分の正体を明かすこともなく
人間としての会話など一切できないけど
「泣く子はいねぇか!」と
何度も凪ちゃんの健康と幸せを願う。

あ、もうこれ書きながらまた泣きそう。

叫びながら
ギリギリ判別できないくらいに何度も
「な〜ぎ〜!」と繰り返す。

おわり

エンドロール
(折坂悠太の音楽、歌良かったですねぇ。折坂悠太も監督と同じ31歳。若い才能!ありがとう!)

エンドロールのあと、森の中を松明を持って歩くなまはげの一団。

神さまっ!

**

新感覚ムービー!とかでもなく
ちゃんと日本映画でありながら
こんな日本映画観たことない。。

ネオ日本映画ですよ。

ネオ日本映画って言葉、ダサくてほんとごめんね。。

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