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自称「普通の人々」が 他称「普通じゃない人々」を攻撃する 映画『異端の鳥』ラストネタバレあり

異端の鳥(2019年製作の映画)
The Painted Bird 上映日:2020年10月09日 製作国:ウクライナ スロバキア チェコ上映時間:169分


観てからだいぶ経ってます。
やっと冷静にこの映画を咀嚼しはじめられてる状態。

異端の鳥


『異端の鳥』四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2623

↑ウド・キアをそっくりに描けました♪


自称「普通の人々」が他称「普通じゃない人々」を攻撃する様子


ずっと描かれるのは、

自称「普通の人々」が
他称「普通じゃない人々」を攻撃する様子。

しかも今作では子供ですからね。。。

見てらんない人は見てらんないでしょうし、見なくていいんじゃないですか。。


「人間は自分を普通の人々だと思い込んで普通じゃない人々を攻撃しちゃいがちなので自分はそうしないように肝に銘じておこう!」って思っているなら、もうこの映画見なくても大丈夫ですよ。


そうじゃない人は絶対必ず100パー観てください。


『サタンタンゴ』よりは見やすい


ただ、意外と映画的な面白さも多くある映画なので、『サタンタンゴ』よりは見やすいと思いますよ。

2時間 49分ありますけど、9章に分かれてるのでサクサク進むし、時間の省略が気持ちよく入ります。
映画らしい映画とも言えます。


ネズミとロープのシーンとかサスペンス映画的だし
ちゃぶ台ひっくり返しシーンとか
ヤギの頭部を窓から投げ入れるシーンとかは笑っちゃったし。


ラストも希望の光を確実に感じるものですし。


そこまで恐ろしい映画ではなかったなというのが、僕の感想でもあります。

観る前は「観たら死ぬんじゃないか」と思ってましたけど、意外と死ななかった。

ただ、観た後ほんとに結構長い間、心が動揺してましたので、、そんなに薦める気も起きないです。。
今大変な時期ですからね。
まず自分が生きるのが先決ですからね。


戦争中、田舎へ疎開

かなりに「死」に近い状況にいたこの少年は、
ある人物らによって安全な場所に運ばれました。

運ばれた後からこの映画は始まるんです。

だけどそこもそんなに安全でも幸せでもなかったし
しかも訳あってそこを離れなきゃいけなくなって、ひとりで土地を転々と移動し始める。

「死ぬよりはマシだろう」ってことで単身移動させられた少年は
「死ぬよりはギリギリマシ?それともこれってほとんど死?地獄?」みたいな状況に置かれます。

少年を保護(?)する大人ごとに章が分かれてまして、全部で9章あるんですが、その都度新たな地獄、いろんな地獄がやってくる。


人生経験のない子供だからこそ受け入れてしまう


過酷すぎるんだけど、子供にとってはそれが世界だから表面的には馴染んでしまう。
淡々と受け入れてしまう。

だけど当然精神はダメージを受けていくので、表情もなくなり言葉も失っていく。

感情表現もできなくるんだけど、第6章でのある仕打ちを受けた後、泣くんです。
これが一番辛かったですね。。。
やっぱあれはほんとに許されない行為なんだな、と見せつけられましたよ。
めっちゃくちゃに人間の尊厳を傷つける行為なんだなぁと。。


その全てに大人が介在していた

そうこうしていくうちに2年くらい経ちまして
撮影自体も2年経ちまして
少年も風貌も変わってきちゃう。

顔がどぎつくなっちゃったし
同年代の子供たちと遊ぶなんてことしたこともなかったので、
大人たちに混ざってる方が楽になっちゃう。

その大人ってのも、多分仕事もなく生気もなくただ燃える火を見てるだけのようなおっさん集団。
そのおっさん集団に入って一緒に火を見てるのが一番落ち着く。

「夢・希望」とは真逆の世界。野望もない世界。

子供ですからね。
本人が何の選択をしたわけでもないのに、そこまで連れて行かれてしまった。

その全てに大人が介在していた。


***


『異端の鳥』四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2623

***



ラストネタバレは以下に。


戦災孤児として孤児院に入れられた少年。
戦争が終わったのかな。
まだこの少年の名前はわからない。本人も忘れているのかもしれない。

そこに父登場。

「帰ろう。母さんが待っている」

父も憔悴しきっている。やっと息子を発見できて嬉しい表情もあるが
父は息子を見てちょっと引いてる。2年前とは別人。
顔つきも違うし、目力やばいし、何よりも自分に対してめっちゃキレてる。。

「ボクを捨てやがって!ボクは地獄を生きてきた!」と。

両親は
ユダヤ系である自分たちが強制収容所に連れていかれる前に
息子だけは!と老婆の家に疎開させた。

あの老婆は祖母ってわけでもなかったのかな。
親戚かな。

両親もなんとかホロコーストを生き残り、おそらく孤児院を調べてまわってやっと息子発見。

(この辺りは映画『FUNAN フナン』も離れ離れになった親子を親目線で描いていて、この両親も死ぬ思いで息子を探していたんだろうな…と。)

父はおそらく安アパート的なところを借りて生活してた。
多分ここを拠点に息子を探してた?

何にもないその部屋で息子が昔好きだったスープを作ってやるけど、
具材も調味料も全然ない。

父はなんとか息子と温かい空気を醸し出そうとするも、息子は怒りおさまらず拒絶。

父はショックを受けるけどまぁ時間かかるわなぁという表情。

実は息子も、これだけ自由に安心して感情をぶつけられる相手にやっと巡り会えた。
その喜びなんて彼は感じてないだろうけど、やっと終わったんだという安心感はきっとあったでしょう。

翌日。
列車で母のいる家へ向かう。

疲れて眠る父の腕に番号の刺青。強制収容所で入れられた刺青。
それを見て「あぁ父も死の際を生きていたんだなぁ」と知る。

※番号の刺青を見ただけでわかりますかね。。ホロコーストがあったことが広く知られるのは戦後だいぶ経ってからでは?まぁこの映画は架空の国の架空の話だからいいのか。

そして少年は窓に「ヨスカ」と自分の名前を書く。


おわり



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