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日本をこのレベルまで高めてくれてありがとう! 映画『エゴイスト』 ネタバレあり 〜映画感想〜

エゴイスト(2023年製作の映画)上映日:2023年02月10日 
監督 松永大司
脚本 松永大司 狗飼恭子 
原作 高山真 
出演者 鈴木亮平 宮沢氷魚 阿川佐和子 中村優子ドリアン・ロロブリジーダ


日本のゲイ映画には何度も期待を裏切られてきた

ので
「どうせアンタもダメなんでしょ」の気持ちで見始めました。

ていうか観る気もなくて配信かなぁくらいに思ってたレベルだったんですが

原作者の故・高山真さんの知り合いだったサムソン高橋さん文章が素晴らしいと噂だったので
それを読むために映画を観ました。

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鈴木亮平&宮沢氷魚、本来なら完璧な見た目のふたりだが/サムソン高橋が見た映画『エゴイスト』(女子SPA!)

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↑映画見終わって読んだら
もうホントこの文章が全てなのでこれ読んでください以上。

あと鈴木亮平のインタビューもホント素晴らしくて。。
日本をよろしくお願いします!


https://www.youtube.com/watch?v=7MDgvVgdSsY

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しかし僕も駄文を何かつらつら書いてしまいます。お恥ずかしい。。

「感動した〜○○クンの演技最高〜」とか「キュンキュンした〜」とか「ほっこりした〜」とか
それが悪いわけではないけど、当事者以外が消費して終了みたいな作品が多すぎたし、
なんとなく「LGBTQ取り上げてやってんだから感謝しろ」的な空気も感じるし
翻っては「LGBTQってめんどくさい」とか言い始めそうだし

(実際僕も数年前までは「こんなスターがLGBTQ役を!ありがとうございます!」と思っちゃってたけど…)

なんだかなぁ…と思っていて実は日本のゲイ映画で好きなものってほとんどないんです。

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だが、ここに来てドーン!『エゴイスト』!ドーン!

飲み込み辛さ、受け取り辛さが素晴らしい。
ものすごい微細でアンバランスで正誤の判断がつかないような何なのかわからない何かを提示されて、はい「エゴイスト EGOIST」でしたおわり!

あぁ、すいませんでした。。
こんなにも何かわからないものをドーン!と自信満々に提示して来られる映画だと思ってなくて。。

前述した通り、何人か死んで感動!演じ甲斐のある役でした映画なのではという穿った姿勢で見初めてしまったのです。。

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ネタバレせずに書くのは難しいので
以下に!!

でも結局サムソン高橋さんが書いたことをだらだらと冗長になぞっただけなんです。。


セックスシーン多い?

この映画のセックスシーンは2段階あると思ってまして
1段階目は主役2人のセックス。
大人のラブストーリーならあれくらいあっても違和感はないでしょうよ。

とは言えなかなかリアルな体位でしたね。。
大スクリーンでゲイセックスを、鈴木亮平のふくらはぎが宮沢氷魚の肩に乗る体位を観るってのはなかなかハラハラしました。
いかにゲイのリアルなセックスシーンをスクリーンで見慣れていないか。
今まで逃げられてきたか、ですね。

2段階目のセックスは〝ウリ〟のセックス。
1段階目よりもねっとりと多様な性技。
客の人数が多いことを描かなきゃいけないんだから、セックスの数も増えるのは当然。

なのでこの映画、セックスシーンが多いけど
1段階目はそもそも多くないよね、
2段階目は多いことに意味がある描写だよね、
全体として多いのは事実だけど必要というか効果的な演出だよね。
と思います。

あと、結局2時間頑張ってゲイな物語を描いても
「LGBTQ超えた映画」とか「普遍的な愛」とか言われちゃうのにもうんざりなので
前半で「いえゲイ映画です!」とハンコを押すためにも有効な選択だったと思います。

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エゴイスト


まず僕は「エゴイスト」ってタイトル付けちゃうこと自体にナルシシズムを感じて苦手でした。
その意味でもこの映画あまり観る気が起きなかった。

でこの映画のほんとにすごいとこは、僕は間違ってなかったんですね、主人公のナルシシズムもこの映画のテーマの一つでした。

鈴木亮平は
1人で部屋にいるだけで誰もいないのにまるでカメラがずっと自分を映しているかのようないわゆる〝オネエ〟っぽい動きを最初から最後まで続けます。
(終盤、阿川佐和子と打ち解けてからはさらに加速!)

そして毎月10万渡す、高級寿司持たせる、高い服あげる、一個千円の果物持ってく。
他にも自分の優位性を誇示するように毎日ジワジワと高いものを押し付けてきたことでしょう。

挙げ句の果てにお母さんにまで10万?渡す。

いつ氷魚が「いい加減にして!バカにしてるって気づかないの!」ってキレてくるかと思ったらキレなかった。。

阿川佐和子とさすがに「どれほど惨めだかわからない!?」ってブチギレるかと思ったら最後までブチギレなかった。。

終盤、鈴木亮平が氷魚の部屋を片付けるシーン。
はいはいわかりましたなるほど氷魚の引き出しに今まで受け取ってきた10万円の未開封の封筒の束があるわけね!氷魚は受け取ってなかったんだ違った!全然受け取ってた。。

あの2人はホントにただただまっすぐに受け取っていたんだ。。
申し訳ない気持ちもあったでしょう、氷魚はホントにいつか返すつもりだったのでしょう。
でも僕が予想していたような捻れた感情はなかったらしい。。

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ただ「アンタのその行為、どうなの??」という視点はゲイ友たち(ドリアンさんの声量素晴らしい)にはありましたね。

でもそんなに強くは発せられない。
「それってエゴじゃない?」とか
「そうやってんのが気分いいんでしょ」みたいに名言はされない。

僕としては映画が終わるまでに「この行為はエゴである!」と断罪されて鈴木亮平が涙ながらに反省する…よね…え、だってそうしないと…くらいに思ってました。

しかし、ならない。。ならないまま終了。
そんなつまらない価値観を押し付けてくる映画ではなかった。

ラストシーンは
阿川佐和子「まだ帰らないで」
鈴木亮平「わかりました」
タイトル「エゴイスト」

なわけだからむしろ最後にわがままを言ったのは阿川佐和子の方。

エゴイストとか愛とかわがままとか押し付けとか自己満足とか、
それらの表面やら中身やら裏面やら上辺やら内側にあるものを、そのまま、切り分けも整理もせず名前も付けずに、そのままバンと目の前な置かれた感じ。

まさかそんなことしてくる映画なんて思ってなかったからびっくりした。。
みくびってました。。
フランス映画ならある程度覚悟するけど
日本の、しかもゲイ映画で、、僕が間違っていました。。

世界に出してもなんら恥ずかしくない、
何年も語り継がれるエポックメイキングとなる映画ですよ!


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