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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第14話

 元日の風邪以来、亜紀さんはあまり具合が良くない。寝たり起きたりしているうちに正月休みが終わってしまったので、ふらふらしながら出勤していった。
 食も細くなった。せっかく最近はいくらか食べられるようになっていたのにまた逆戻りだ。私のとっておきの病人食、卵とかつおぶし入り味噌おじやを前にしてため息をついているので、じれったくなってスプーンを取り、おじやをすくって差し出した。
「はい、あーん」
 亜紀さんはぎょっとしたように顎を引き、すこし寄り目になって私の差し出したスプーンを見つめたのち、観念してぱくりと口に入れ、もぐもぐと噛んで飲みこんだ。
「ほら、食べられるじゃないですか」
「食べづらいだけです。自分で食べます」
 そう言ってスプーンを取り返し、自分で食べ始めた。

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3,147字

現役図書館司書が書いた、図書館司書の登場する小説です。 (全20回連載予定)

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