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8月30日にロンドンで開催された欧州心臓病学会会議(ESC2024)で「高血圧診療ガイドライン2024年版」(2024 ESC Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension)が発表されたという記事が紹介されていました。

欧州心臓病学会が高血圧ガイドラインを改訂:日経メディカル (nikkeibp.co.jp)

このガイドラインとその記事に関して少し紹介したいと思います。


まず高血圧と診断する基準値は140/90mmHgで維持されていますが、血圧値による分類が2018年版の6段階から3段階に集約され、薬物治療時の降圧目標は幅広い対象者で収縮期血圧(SBP)120~129mmHgが推奨されています。

高血圧状態の長期化は臓器障害を引き起こし、最終的には心血管疾患、脳血管疾患、腎疾患などにつながる可能性があります。


血圧以外の要因(脂質異常症、糖尿病など)もこれらの変化に寄与する可能性がありますが、血管への影響を考えると高血圧を放置することはいいことではありません。

高血圧の病態には、食事環境やストレス、ホルモン、複数の臓器(腎臓、心血管系、中枢神経系)間の複雑な相互作用が関与しています。

高血圧に対しては投薬治療が最も多く用いられる治療法ですが、根本的には食事や栄養、運動といった内容が用いられます。



今回のガイドラインの中に、ナトリウムとカリウムの項目がありましたので少し紹介したいと思います。

ナトリウム

ナトリウムの摂取量が元々多い人が食事中の塩分(塩化ナトリウム)摂取量を減らすと、脳心血管疾患の発生率が低下することが言われています。

つまり食事中のナトリウム摂取量が多いことと脳心血管疾患との間には相関があるということです。

そして1 日あたり 2.5 g の減塩は、脳心血管疾患を約 20% の減少と関連しており、その健康効果は、主に血圧降下作用によるものと考えられています。

また女性は平均して男性よりもナトリウムに敏感であり、同等のナトリウム制限食を摂取した場合、女性の方がより大きな結果のメリットが得られる可能性があるとのことです。

できるだけ少なくしたいナトリウムですが、毎日のナトリウム摂取の大部分は加工食品に含まれるナトリウムと考えられており、目に見える食塩ではなく、食品表示や外食時なども注意する必要があります。

カリウム

果物や野菜を多く含む食事などによるカリウム摂取は、血圧を下げる効果があり、脳心血管疾患リスクの低下と関連している可能性があります。カリウム摂取と血圧、脳心血管疾患の関係はナトリウムと同様、女性でより強い可能性があります。

WHOは食事からのカリウム摂取量を3.5 g/日以上とすることを推奨していますが、心不全や腎不全の場合過剰なカリウム補給は避けるべきであり、CKDガイドラインでは、進行したCKDの人では食事からのカリウムを2.4 g/日未満に制限することを推奨しています。


よって食事中のナトリウム摂取量を減らし、カリウム摂取量を増やすことで、血圧を低下させられる可能性があります。

カリウム補給は、カリウム強化塩(75%塩化ナトリウムと25%塩化カリウム)を使用してナトリウムを置き換えるか、または食事からのカリウム摂取量を増やすことによって達成できます。バナナには約450 mgのカリウムが含まれており、ほうれん草やアボカドなどもカリウムを多く含みます。

慢性腎臓病の方や利尿薬、アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)、スピロノラクトンなどのカリウム保持薬を服用している患者では、血清カリウム濃度をモニタリングする必要があるため、カリウムの摂取をする際には医師へ相談してください。


このように書くとナトリウムが悪者でカリウムが良い物のように聞こえますが、必ずしもそうではありません。

高血圧に限らず、食事療法で大切なことは「バランス」です。

バナナがいいからと言ってたくさん食べても健康にはなりませんし、サプリメントを大量に飲んでも効果はでません。

適切な量を適切な時間に摂取して体調をモニタリングする必要があります。

当院は生活習慣病の方が多く通院されており、栄養指導や運動療法などを積極的に行っている方もおられます。

皆さんにお伝えしていることは、長く継続できる方法の定着と定期的な評価です。

今行っている方法が効果的なのか、継続できるのかということをしっかり確認することが、健康にとっては一番大切なことです。

目先の情報や安易な取り組みだけではいい結果は生まれません。

正しい情報を得て、自分の生活に生かせるように今後も発信を続けていきたいと思います。